3シーズンで最小重量1kg未満の登山用ダブルウォールテントを各メーカーごとの代表的なモデルを選んで、実際の山で使ってみました。今回はそれぞれのテントを使ってみて気づいたこと、そこから得た登山用テントの選び方や、各テントのおすすめポイントについて紹介をします。
- これからテント泊登山に挑戦しようと考えている方
- 軽量な登山用テントを購入しようと考えている方
- 登山向けテントの選び方を知りたい方
に向けて有益な情報をお伝えできればと思います。
今回紹介する最小重量1kg未満の登山用ダブルウォールテント
今回紹介する最小重量1kg未満の登山用ダブルウォールテントは以下の7種類です。最小重量とはテント本体、フライシート、テントポールの重量の合計で、スタッフバッグ、ガイライン、ペグ、グランドシートは含まれていません。
※横スクロールで表がスクロールできます。ブランド | モデル名 | タイプ | 最小重量(g) | 価格(税込) | 収容人数 | テント内サイズ(縦×横×深さ) | 前室の奥行き | 前室の数 | 入口 | フライシート | インナーテント | フロア部分 | ポール | 設営方法 | モデル | メイドイン |
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NEMO | ホーネットエリート オズモ 1P | 自立式 | 657g | ¥70,400 | 1人 | 221×102×99cm | 58㎝ | 1 | 長辺 | OSMO™ リップストップ | ナイロンリップストップ&No-See-Umメッシュ | OSMO™ リップストップ | DAC NFL | 吊り下げ式 | 3シーズン | アメリカ |
ビッグアグネス | フライクリーク HV UL1 ソリューションダイ | 自立式 | 765g | ¥63,360 | 1人 | 218×97×102cm | 56cm | 1 | 短辺 | ソリューションダイ リップストップナイロン | ソリューションダイ 通気加工リップストップナイロン | ソリューションダイ リップストップナイロン | DAC NFL | 吊り下げ式 | 3シーズン | アメリカ |
テラノヴァ | ソーラーフォトン2 | 自立式 | 814g | ¥86,900 | 2人 | 225×130×100cm | 65cm | 1 | 短辺 | Watershed R/S Si2 | Watershed R/S Si2 | Watershed R/S Si2 | DAC NFL&NSL | 吊り下げ式 | 3シーズン | イギリス |
シートゥサミット | アルトTR1 | 自立式 | 938g | ¥62,260 | 1人 | 215×107×105㎝ | 58cm | 1 | 長辺 | 15D | 15D | 15D | DAC NFL&NSL | 吊り下げ式 | 3シーズン | オーストラリア |
MSR | ハバハバシールド1 | 自立式 | 950g | ¥88,000 | 1人 | 216×76×94cm | 76cm | 1 | 長辺 | 20D | 10D&20D | 20D | サイクロンポール | 吊り下げ式 | 3シーズン | アメリカ |
ビッグアグネス | コッパースプール HV UL1 | 自立式 | 964g | ¥76,780 | 1人 | 224×97×97cm | 71cm | 1 | 長辺 | 不明 | メッシュ&ナイロン | 20D | DAC NFL&NSL | 吊り下げ式 | 3シーズン | アメリカ |
ゼログラム | Thru Hiker 1p ZEROBONE | 非自立式 | 978g | ¥74,800 | 1人 | 210×90×100cm | 40cm | 1 | 短辺 | 15D | 20Dモノフィラメント | 15D | ZEROBONE | 吊り下げ式 | 3シーズン | 韓国 |
共通しているポイントは
- 吊り下げ式のテント
- 海外のブランド
- 1つを除いて自立式タイプ
- 使用されている生地の厚みは10〜20デニールと薄い
- ポールの軽量性にも特徴がある
ということが挙げられます。これらを踏まえて各テントのおすすめポイントと気になるポイントを紹介していきます。
NEMO『ホーネットエリートオズモ1P』:ダブルウォールテントで圧倒的な軽さ
ブランド | NEMO |
モデル名 | ホーネットエリート オズモ 1P |
タイプ | 自立式 |
最小重量(g) | 657g |
価格(税込) | ¥70,400 |
収容人数 | 1人 |
テント内サイズ(縦×横×深さ) | 221×102×99cm |
前室の奥行き | 58㎝ |
前室の数 | 1 |
入口 | 長辺 |
フライシート | OSMO™ リップストップ |
インナーテント | ナイロンリップストップ&No-See-Umメッシュ |
フロア部分 | OSMO™ リップストップ |
ポール | DAC NFL |
設営方法 | 吊り下げ式 |
モデル | 3シーズン |
メイドイン | アメリカ |
今回紹介するダブルウォールテントの中では最小重量で657gと非常に軽量なモデルです。入り口は長辺に設けられ前室の奥行きは58cmあり、NEMO独自のクリップが天井部分に設けられていることで居住空間が広い申し分のない作りです。
テントポールにはDACのNFLを採用し強い風が吹いても折れづらく曲がりグセが付きづらく安心感の高さも魅力です。
インナーテントの長さは221cm、台形型で最も広いところで横幅が102cm、高さは99cmで1人用テントとして荷物を置くスペースが確保されています。
ポケットの数は天井部分と入り口横に設けられているし、ループの数やスナップボタンが付いたストラップなども使い心地に優れ快適にテント内で過ごすことができます。
ここまではホーネットエリートオズモ1Pの優れたポイントですがインナーテントの大部分にメッシュ素材が使用されているため、夏の登山では快適に過ごすことができますが、春や秋の高所で肌寒くなると冷気がテント内に入りやすく、防寒対策が必要になります。
フライシートも軽量化のために地面との間に空間があるため、これも冷気の侵入の一因になっています。逆に捉えると通気性があるため結露が生じにくいメリットがあります。
なので、北アルプスなどの高所でテント泊登山を3シーズンフルで楽しみたい方はこの後紹介する、メッシュ生地が少ないテントをおすすめします。お休みがなかなか取れなくて高所でのテント泊登山は夏休みだけ楽しむ!なんていう人には、この軽さは大きな武器になるので大変おすすめです。
ビッグアグネス『フライクリークHVUL1ソリューションダイ』:軽さと耐風性に優れたダブルウォールテント
ブランド | ビッグアグネス |
モデル名 | フライクリーク HV UL1 ソリューションダイ |
タイプ | 自立式 |
最小重量(g) | 765g |
価格(税込) | ¥63,360 |
収容人数 | 1人 |
テント内サイズ(縦×横×深さ) | 218×97×102cm |
前室の奥行き | 56cm |
前室の数 | 1 |
入口 | 短辺 |
フライシート | ソリューションダイ リップストップナイロン |
インナーテント | ソリューションダイ 通気加工リップストップナイロン |
フロア部分 | ソリューションダイ リップストップナイロン |
ポール | DAC NFL |
設営方法 | 吊り下げ式 |
モデル | 3シーズン |
メイドイン | アメリカ |
ビッグアグネスの中で最も軽量で最小重量で765gの軽量なダブルウォールテントです。入り口は短辺に設けられ、前室の奥行きは55cmあり、入り口部分と足元は垂直に立ち上がる居住空間の広さが特徴です。
テントポールにはDACのNFLを採用し軽量で安心感の高いダブルウォールテントです。
インナーテントの長さは218cm、台形型で最も広いところで横幅が97cm、高さは102cmで1人用テントとして荷物を置くスペースが確保されていますが、テントの中心が少し中に倒れてくるので、結露が生じた時にシュラフに当たるのが心配なポイントです。フライシートとインナーテントを連結するストラップをつけてくれることを望みます。
ポケットは出入り口の左右に斜めに切り取られたポケットがそれぞれ1つ、天井部分に大きめのポケットが1つあり、全てのポケットが出入り口付近に設けられているので荷物の取り出し安さが魅力です。
このテントは短辺に入り口が設けられており、フライシートのジッパーを開けて中に入ろうとすると入り口が半分しか開かないので出入りが若干しづらいのがデメリットの一つです。インナーテントは上で紹介したホーネットエリートオズモ1Pと同じように大部分がメッシュ素材なのですが、フライシートが地面に近いところまであるので冷気が中に入ってきづらく防風性に優れていると感じました。
テラノヴァ『ソーラーフォトン2』:2人用テントで圧倒的な明るさを誇るダブルウォールテント
ブランド | テラノヴァ |
モデル名 | ソーラーフォトン2 |
タイプ | 自立式 |
最小重量(g) | 814g |
価格(税込) | ¥86,900 |
収容人数 | 2人 |
テント内サイズ(縦×横×深さ) | 225×130×100cm |
前室の奥行き | 65cm |
前室の数 | 1 |
入口 | 短辺 |
フライシート | Watershed R/S Si2 |
インナーテント | Watershed R/S Si2 |
フロア部分 | Watershed R/S Si2 |
ポール | DAC NFL&NSL |
設営方法 | 吊り下げ式 |
モデル | 3シーズン |
メイドイン | イギリス |
2人用テントの中では圧倒的な軽さを誇るダブルウォールテントです。最小重量で814gで、入り口は短辺に設けられ、前室の奥行きは65cmあります。
インナーテントの出入り口部分は構造が斜めになっているので前室がとても広いとは言えません。またフライシートのジッパー全開すると雨が降っている場合はインナーテント内に雨が入りやすく、悪天候時の使用に少し気を使います。
テントポールにはDACのNFLとNSLを採用し軽量で安心感の高いダブルウォールテントです。
インナーテントの長さは225cm、台形型で横幅は最も広いところで130cm、高さは最も高いところで100cmで、大人2人がギリギリ肩を並べて就寝できる大きさです。出入り口部分に座ると天井に頭が当たってしまうので座る時はテントの中心部分に座ることになります。雨が降って前室で煮炊きをする時の快適性は低いです。
ポケットは入り口左右に三角形のメッシュポケットが2箇所あります。それ以外にはポケットもなくループもない潔い作りです。テントの天井にランタンを吊るしたい方にはおすすめできません。
インナーテントはメッシュ素材が出入り口と足元に設けられたベンチレーションのみで、さらにフライシートも地面に設置するデザインなので3シーズンフルで使えるコストパフォーマンスに優れたダブルウォールテントです。
シートゥサミット『アルトTR1』:ユニークなデザインで結露が少ないダブルウォールテント
ブランド | シートゥサミット |
モデル名 | アルトTR1 |
タイプ | 自立式 |
最小重量(g) | 938g |
価格(税込) | ¥62,260 |
収容人数 | 1人 |
テント内サイズ(縦×横×深さ) | 215×107×105㎝ |
前室の奥行き | 58cm |
前室の数 | 1 |
入口 | 長辺 |
フライシート | 15D |
インナーテント | 15D |
フロア部分 | 15D |
ポール | DAC NFL&NSL |
設営方法 | 吊り下げ式 |
モデル | 3シーズン |
メイドイン | オーストラリア |
結露が少なく快適性に優れ、居住空間が広くテント内でも過ごしやすいデザインのダブルウォールテントです。最小重量で938gでユニークなデザインが特徴です。
テントポールにはDACのNFLとNSLを採用し軽量で安心感の高いダブルウォールテントです。
インナーテントの長さは215cmで三角形のような形状のインナーテントです。これによって横幅は最も広いところで107cmもあり、高さは105cmで居住空間の広さが魅力です。
前室空間も広く荷物の置き場所にも困りません。フライシートをたくし上げてインナーテントのみのようなスタイルで涼しく過ごすこともできます。
テントポール用のスタッフバッグはスナップボタンで天井部分に取り付けることができ、中にヘッドライトを収納することで蛍光灯のような役割を果たします。
またフライシート用のスタッフバッグとインナーテント用のスタッフバッグ2種類があり、これもスナップボタンでインナーテントの隅に取り付けることができテント内の収納袋に早変わりします。
インナーテントの大部分はメッシュ素材ですが頭にくる部分にはナイロン素材が立ち上がっているので風の影響を受けにくく、またフライシートは地面近くまであるので防風性に優れています。
1点デメリットをあげるならば設営に時間がかかることです。吊り下げ式でシンプルなテントなのですが、フライシートを上からかけてポールに対応するポケットに引っ掛けたり、絶対に必要なペグダウン箇所が6つあり、インナーテントとフライシート用のスタッフバッグが2つあるなど乗れる必要があります。
MSR『ハバハバシールド1』:全てにおいて平均点以上の優れたダブルウォールテント
ブランド | MSR |
モデル名 | ハバハバシールド1 |
タイプ | 自立式 |
最小重量(g) | 950g |
価格(税込) | ¥88,000 |
収容人数 | 1人 |
テント内サイズ(縦×横×深さ) | 216×76×94cm |
前室の奥行き | 76cm |
前室の数 | 1 |
入口 | 長辺 |
フライシート | 20D |
インナーテント | 10D&20D |
フロア部分 | 20D |
ポール | サイクロンポール |
設営方法 | 吊り下げ式 |
モデル | 3シーズン |
メイドイン | アメリカ |
2022年に一新されたMSRの山岳用テントは、防風性と軽量性を併せ持った優れたダブルウォールテントです。ホールには航空機にも使われている複合素材「サイクロンポール」を使用しており、曲がり癖がつきづらく強靭な素材で、登山用テントとして安心感が高い特徴があります。
インナーテントの長さは216cm、長方形で横幅は76cm、高さは最も高いところで94cmです。MSRの2本のポールによって全面が地面からほぼ垂直に立ち上がるので、インナーテントの平面積に対して非常に居住空間が広く確保されています。
前室空間は申し分ない広さでストレスなく使用することができます。ポケットの数も豊富で頭と足元側に台形型のポケットが2箇所、さらに天井には2つのメッシュポケットが備えられていて多くの荷物を収納しておくことができます。また天井部分にループが4箇所あります。
インナーテントはメッシュ素材が少なく結露を防ぐための必要最低限のベンチレーションと通気性を確保するため程度に設けられた3シーズンフルで活用できるダブルウォールテントです。
デメリットはスタッフバッグが重いぐらいで、非常に優れたダブルウォールテントだと思います。
ビッグアグネス『コッパースプールHVUL1』:出入口部分のフライがタープになるダブルウォールテント
ブランド | ビッグアグネス |
モデル名 | コッパースプール HV UL1 |
タイプ | 自立式 |
最小重量(g) | 964g |
価格(税込) | ¥76,780 |
収容人数 | 1人 |
テント内サイズ(縦×横×深さ) | 224×97×97cm |
前室の奥行き | 71cm |
前室の数 | 1 |
入口 | 長辺 |
フライシート | 不明 |
インナーテント | メッシュ&ナイロン |
フロア部分 | 20D |
ポール | DAC NFL&NSL |
設営方法 | 吊り下げ式 |
モデル | 3シーズン |
メイドイン | アメリカ |
ビッグアグネスのダブルウォールテントといえばフライクリークを思い浮かべる方が多いと思いますが、コッパースプールHVUL1は軽量性と防風性と居住性のバランスに優れたダブルウォールテントで、3シーズンフルに使用したい方におすすめのモデルです。
インナーテントの長さは224cmで台形型で最も広いところで97cm、天井は高いところで97cmです。
ポケットの大きさと数に特徴があり、天井部分に設けられた大きなギアポケットには不必要なスタッフバッグをまとめて収納しておくことでインナーテント内の整理整頓に大変便利です。
またそれ以外にも天井にある3つの大小異なるポケットや出入り口のすぐ横に備えられたポケットまた多くのループが備わっておりテント内で快適に過ごすことができます。
MSRのテントのように2本のポールによって全面が地面からほぼ垂直に立ち上がる居住空間の広さも魅力です。
前室空間は申し分ない広さでストレスなく使用することができます。フライシートの入り口部分は天井部分まで開くジッパーが2箇所備わっているので、トレッキングポールを使用すれば屋根を作ることができます。日差しをよけたり、少々の雨であれば出入り口前で料理をすることも可能です。
インナーテントは下半分がナイロン素材で上半分がメッシュ素材になっているので冷気が入っても体に直接影響を受けづらく3シーズンフルで活用できるダブルウォールテントです。
体の大きい人や登山だけでなくソロキャンプなど幅広いシーンで活用したい方におすすめのテントです。
ゼログラム『ThruHiker1pZEROBONE』:結露が少ないダブルウォールテント
ブランド | ゼログラム |
モデル名 | Thru Hiker 1p ZEROBONE |
タイプ | 非自立式 |
最小重量(g) | 978g |
価格(税込) | ¥74,800 |
収容人数 | 1人 |
テント内サイズ(縦×横×深さ) | 210×90×100cm |
前室の奥行き | 40cm |
前室の数 | 1 |
入口 | 短辺 |
フライシート | 15D |
インナーテント | 20Dモノフィラメント |
フロア部分 | 15D |
ポール | ZEROBONE |
設営方法 | 吊り下げ式 |
モデル | 3シーズン |
メイドイン | 韓国 |
ゼログラムのダブルウォールテントの中でも最も軽量で、ユニークなデザインで人気の高いモデルです。
インナーテントの長さは210cm、台形型で横幅は最も長いところで85cm、高さは最も高いところで100cmあります。
インナーテントは結露がほとんど出ないと言われているモノフィラメントを使用しており、メッシュほど通気しない防風性と通気性を両立した素材が使用されています。
ポケットは出入り口部分に1箇所、ランタンフックが2つ備わっています。
前室空間は出入り口部分にはなく短辺部分に別で設けられています。出入り口部分に荷物がないため出入りする時に楽ではありますが、フライシートとインナーテントの間に空間がないので、雨が降っている時に出入りする際、インナーテント内に雨が入りやすい点が気になります。
このテントの最も特徴的な点がインナーテントとフライシートが連結されていることです。これによってシングルウォールのように設営を早く済ますことができ、インナーテントを除けばフロアレステントのような使い方もできます。