シュラフの快適性は睡眠の質に直結し疲労回復効果を生み出す一方で、場合によっては睡眠不足や凍傷などから命に係わる事態にもなりかねない重要な装備です。
登山で用いるシュラフは、一般的には"ダウン"を詰め込んだものが主流ですが、"化繊"シュラフという選択肢もあります。化繊は、ダウンとは異なり水に強いため、夏場や沢の近くなど時と場合によっては化繊シュラフの方が適している場合もあります。
今回は、重要装備であるシュラフの中でも化繊シュラフに絞って、選び方のポイントや軽量で快適なおすすめの登山用化繊シュラフを紹介します。
化繊シュラフの特徴
化繊シュラフとは
シュラフの中綿素材にはダウンと化学繊維があります。ダウンは軽量で保温性が高いですが、湿気に弱いという欠点があります。化学繊維は湿気に強く、速乾性が高いので、湿度の高い夏のテント泊に適しています。また、価格もダウンに比べてリーズナブルです。
一般的に登山用のシュラフでダウンが用いられるのは、軽量であるからです。しかしながら、化繊シュラフでも軽量なモデルもあります。この記事では、断熱性能の低いモデルなどを中心に、登山で使用できる化繊シュラフを紹介します。
化繊シュラフのメリット
湿気に強い
化繊シュラフの最大のメリットの一つは、湿気に強いことです。一般的なダウンシュラフは水に濡れるとダウンが縮んでしまい断熱性を失ってしまいます。しかし、化繊素材は吸水性が低く、濡れても断熱性能が比較的保たれます。
そのため、雨天や湿度の高い環境、夏場のテント泊における発汗時でも安心して使用することができます。また、乾きも早いので、シュラフを干すことで断熱性の回復が容易にできます。
コストパフォーマンスがよい
化繊シュラフは、ダウンシュラフと比べて価格が抑えられており、これからテント泊を始める人や夏場だけのサブシュラフとして使用する方などにとって購入しやすい点が魅力的です。また、頻繁に買い替えが必要ないため、長期的にもコストを抑えることができます。
デメリット
断熱性能が高いモデルを中心に重い
化繊シュラフのデメリットとして、断熱性能が高いモデルは重くなりがちです。登山において装備の軽量化は最重要項目であり、重いシュラフは移動中の負担となってしまいます。
特に長距離の登山や高所での活動を考えている場合、軽量なダウンシュラフに比べるとパッキングの効率が悪くなる可能性があります。重量を気にする人にとっては、この点が選択の際の大きな障害となることがあります。
化繊を多く使用する秋冬用の高断熱シュラフは、重くダウンシュラフに比べて2倍近くになってしまうこともあるでしょう。一方で、断熱性能の低い夏用であればさほど大きな差は生まれないため、化繊シュラフも選択肢に入るのではないでしょうか。
化繊シュラフの選び方
コンフォート温度
コンフォート温度とは、快適に眠ることができる温度範囲を指します。シュラフを選ぶ際には、この温度範囲が自分のキャンプ地の夜間の気温に合っているか確認することが重要です。
一般的に、夏用シュラフのコンフォート温度は10℃から15℃程度です。コンフォート温度0~5℃くらいのモデルになると3シーズン対応と言えるでしょう。さらに、厳冬期対応となるとコンフォート温度が氷点下になります。
形状
シュラフの形状には、マミー型(ミイラ型)とレクタングラー型(封筒型)があります。マミー型は体にフィットしやすく、保温性が高いため登山では主流です。一方、レクタングラー型は広々とした空間を提供し、寝返りを打ちやすいのが特徴です。
化繊シュラフが主に活躍するであろう夏用シュラフの場合には、ブランケットのように使用できるレクタングラー型も使いやすいでしょう。もちろんマミー型でも同様の使い方ができるものもありますし、どちらが良いのかは形状というよりモデルごとの特徴や個人の好みの問題です。
中綿の素材
一言に化繊シュラフと言えども、中綿に用いられている化繊の様々な種類があります。例えば、人工羽毛はダウンに近い性能を持っていますし、ファイントラック独自のファインポリゴンは非常に水に強い性質を持ちます。
このように化繊の素材ごとに特徴がありますので、使用環境などに応じて適切な素材を選ぶようにしましょう。
シェル素材
シュラフのシェル素材には、ナイロンやポリエステルが一般的に使われています。これらの素材は耐久性があり、軽量で速乾性が高いです。特に、撥水加工が施されたシェル素材は、露や湿気から体を守るために効果的です。
また、生地が薄いと思わぬ原因で破れてしまうことがあります。きじが厚くなればなるほど重くはなってしまいますが、耐久性もあがります。デニール数という生地厚を参考にして、耐久性を考えると良いでしょう。
重量と収納性
デメリットにも挙げたように、化繊シュラフはダウンシュラフに比べると基本的には重くなってしまいます。登山においては軽量であるということがは、最重要項目の一つです。化繊シュラフの中でも、軽量でコンパクトに収納できる持ち運びが容易なモデルを選ぶようにしましょう。
化繊シュラフおすすめ紹介
ブランド | スタティック | OMM | スタティック | cocoon | イスカ | イスカ | ファイントラック | モンベル | ニーモ | マウンテンハードウェア |
モデル名 | アフターバーナースリーピングバッグ | Mountain Raid 100 | エクスプローラー100スリーピングバッグ | マウンテンワンダラー | ウルトラライト | アルファライト300X | ポリゴンネストイエロー | バロウバッグ#5 | フォルテ エンドレスプロミス35 | ラミナエコAF |
適合身長 | 最大173cm | 最大183cm | 最大173cm | 最大185cm | 最大185cm | 最大185cm | 最大185cm | 最大183cm | 最大183cm | 最大185cm |
重量(g) | 375g | 380g | 400g | 560g | 600g | 640g | 695g | 786g | 900g | 1090g |
中綿量(g) | 178g | 化繊量:60g(上面) 40g(背面) | 不明 | 不明 | 160g | 300g | 不明 | 不明 | 不明 | 730g |
価格(税込) | ¥48,400 | ¥39,600 | \19,800 | \15,840 | \11,000 | \16,500 | ¥38,280 | \14,300 | ¥28,600 | \39,600 |
収納サイズ(cm) | Φ13×23cm | Φ15×22cm | 不明 | 20×13 | 12.5×22cm | 14×27 | Φ17×30cm | 16×32cm | 43×21cm | 20×42 |
温度域 | EN13537採用 コンフォート温度=13℃ リミット温度=10℃ | コンフォート温度=14度(摂氏) | コンフォート温度=12℃ | 快適使用温度8℃~ | 最低使用温度10℃ | 最低使用温度6℃ | EN13537採用 コンフォート温度=7度(摂氏) リミット温度=3度(摂氏) | 快適温度7℃、使用可能温度3℃ | 快適使用温度=7℃ 下限温度=2℃ | 使用可能温度-9℃ |
中綿素材 | 850フィルパワー人工羽毛 | PrimaLoft® Gold クロスコア | PrimaLoft Gold 100g/m2 | 100%リサイクルポリエステル | 極細繊維の保温材 | Micro Lite™ | ファインポリゴン | エクセロフト® | 再生ポリエステル | リサイクルサーマルQ |
シェル素材 | 10D | Point Zero® | 20D | 40D | 不明 | 20D | ナイロン | 30D | ポリエステルリップストップ | 20D |
撥水 | 〇 | × | × | × | ○ | ○ | ◎ | ○ | 〇 | × |
スタティック アフターバーナースリーピングバッグ
夏場のテント泊に最適な高性能化繊ダウンシュラフです。中綿には850フィルパワーの化繊ダウンを採用し、ダウンシュラフに近い優れた保温性と軽量性を実現しています。
また、化繊のため速乾性が高く、湿気に強いため、悪天候時でも安心です。ダウンシュラフにも引けを取らない375gの重量とコンパクトな収納性で、夏場のテント泊を中心に重宝するでしょう。
ブランド | スタティック |
モデル名 | アフターバーナースリーピングバッグ |
適合身長 | 最大173cm |
重量(g) | 375g |
中綿量(g) | 178g |
価格(税込) | ¥48,400 |
収納サイズ(cm) | Φ13×23cm |
温度域 | EN13537採用 コンフォート温度=13℃ リミット温度=10℃ |
中綿素材 | 850フィルパワー人工羽毛 |
シェル素材 | 10D |
撥水 | 〇 |
OMM Mountain Raid 100
軽量性と保温性を兼ね備えた高性能な化繊シュラフです。こちらで使用されている中綿は濡れに強く、水に濡れても嵩を減らしにくく保温性を維持することができます。
また、対重量比保温力にも優れており、380gという超軽量シュラフでありながら使用可能下限温度は3℃と低温域までをカバーすることができます。
ダウンシュラフと変わらない重量でありながら、水に強く濡れても保温性が下がらないため、夏を中心とした山行におすすめのシュラフです。
ブランド | OMM |
モデル名 | Mountain Raid 100 |
適合身長 | 最大183cm |
重量(g) | 380g |
中綿量(g) | 化繊量:60g(上面) 40g(背面) |
価格(税込) | ¥39,600 |
収納サイズ(cm) | Φ15×22cm |
温度域 | コンフォート温度=14度(摂氏) |
中綿素材 | PrimaLoft® Gold クロスコア |
シェル素材 | Point Zero® |
撥水 | × |
スタティック エクスプローラー100スリーピングバッグ
湿気や水濡れに強い軽量化繊わたを用いた、軽量であり汎用性の高い化繊シュラフです。ポリエステル中綿を採用しており、優れた保温性と耐湿性を実現。シュラフ本体のストレッチ性もあり、快適な寝心地を提供するでしょう。
先の2つのシュラフと比較すると少しばかり重さがありますが、値段は半分になります。スペック的にもそん色なく、非常にコストパフォーマンスの良いモデルです。
ブランド | スタティック |
モデル名 | エクスプローラー100スリーピングバッグ |
適合身長 | 最大173cm |
重量(g) | 400g |
中綿量(g) | 不明 |
価格(税込) | \19,800 |
収納サイズ(cm) | 不明 |
温度域 | コンフォート温度=12℃ |
中綿素材 | PrimaLoft Gold 100g/m2 |
シェル素材 | 20D |
撥水 | × |
cocoon マウンテンワンダラー
中綿に100%リサイクル素材のエコペットを採用し、環境にも配慮されたシュラフです。快適使用温度は8℃以上となっており、夏場の3,000mテント泊でも十分に対応できる保温性をもっています。
シェルには40Dのナイロンが使われており、耐久性も高い作りになっています。また、寝袋の保温性能に+12℃の効果をもたらすライナーとしての使用も可能です。
ブランド | cocoon |
モデル名 | マウンテンワンダラー |
適合身長 | 最大185cm |
重量(g) | 560g |
中綿量(g) | 不明 |
価格(税込) | \15,840 |
収納サイズ(cm) | 20×13 |
温度域 | 快適使用温度8℃~ |
中綿素材 | 100%リサイクルポリエステル |
シェル素材 | 40D |
撥水 | × |
イスカ ウルトラライト
価格が\11,000と低く抑えられた化繊シュラフです。極細繊維のポリエステル中綿を採用し、最低使用温度10℃の保温性能を有します。コンパクトに収納でき、持ち運びも簡単なため、夏の中低山のテント泊から始める入門モデルとして検討してみてはいかがでしょうか。
ブランド | イスカ |
モデル名 | ウルトラライト |
適合身長 | 最大185cm |
重量(g) | 600g |
中綿量(g) | 160g |
価格(税込) | \11,000 |
収納サイズ(cm) | 12.5×22cm |
温度域 | 最低使用温度10℃ |
中綿素材 | 極細繊維の保温材 |
シェル素材 | 不明 |
撥水 | ○ |
イスカ アルファライト300X
先に紹介したイスカ ウルトラライトよりも保温性が増した最低使用温度6℃の化繊シュラフになります。同じようにコンパクトに収納でき、夏から春秋のテント泊におすすめです。
最低使用温度が6℃の300Xのほかに、500、700、1000、1300と最低使用温度-20℃まで対応するモデルが用意されています。その分重くはなりますが、低価格で厳冬期まで使用可能なシュラフです。
ブランド | イスカ |
モデル名 | アルファライト300X |
適合身長 | 最大185cm |
重量(g) | 640g |
中綿量(g) | 300g |
価格(税込) | \16,500 |
収納サイズ(cm) | 14×27 |
温度域 | 最低使用温度6℃ |
中綿素材 | Micro Lite™ |
シェル素材 | 20D |
撥水 | ○ |
ファイントラック ポリゴンネストイエロー
独自のシート状立体保温素材「ファインポリゴン」を中綿に採用し、優れた耐湿性と保温性を両立しています。湿気をはじめとした水に非常に強く、速乾性が高いため、様々な天候条件下でも快適に使用できます。
また、保温性も快適温度7℃に下限温度3℃と保温性も高く3シーズンにわたってわたって使用できるモデルです。重量は695gありそれなりに重いので、水への強さが求められる連泊縦走や沢登りなどに向いているでしょう。
ブランド | ファイントラック |
モデル名 | ポリゴンネストイエロー |
適合身長 | 最大185cm |
重量(g) | 695g |
中綿量(g) | 不明 |
価格(税込) | ¥38,280 |
収納サイズ(cm) | Φ17×30cm |
温度域 | EN13537採用 コンフォート温度=7度(摂氏) リミット温度=3度(摂氏) |
中綿素材 | ファインポリゴン |
シェル素材 | ナイロン |
撥水 | ◎ |
モンベル バロウバッグ #3
優れたコストパフォーマンスと機能性を兼ね備えた化繊シュラフです。繊維一本一本に施した撥水加工により、汗や水で濡れても保温性をキープできる「エクセロフト」という中綿を使用しています。
#5は使用可能温度6℃までとなっており、他に#3、#2、#1、EXPの4種類が用意されています。EXPでは使用可能温度-18℃までカバーしていますが3kgを超える重量となります。
ブランド | モンベル |
モデル名 | バロウバッグ#5 |
適合身長 | 最大183cm |
重量(g) | 786g |
中綿量(g) | 不明 |
価格(税込) | \14,300 |
収納サイズ(cm) | 16×32cm |
温度域 | 快適温度7℃、使用可能温度3℃ |
中綿素材 | エクセロフト® |
シェル素材 | 30D |
撥水 | ○ |
ニーモ フォルテ エンドレスプロミス35
快適な睡眠を提供するために設計された3シーズン用の高性能な化繊シュラフです。NEMO特有のスプーンシェイプに100%再生ポリエステルを用いた中綿をふんだんに使用しており、十分な保温性と快適な寝心地を作り出しています。
その分、シュラフは900gと重くなっています。それでも、湿気に強く速乾性が高いため、様々な気象条件でも安心して使用できることから選択肢の一つになるでしょう。
ブランド | ニーモ |
モデル名 | フォルテ エンドレスプロミス35 |
適合身長 | 最大183cm |
重量(g) | 900g |
中綿量(g) | 不明 |
価格(税込) | ¥28,600 |
収納サイズ(cm) | 43×21cm |
温度域 | 快適使用温度=7℃ 下限温度=2℃ |
中綿素材 | 再生ポリエステル |
シェル素材 | ポリエステルリップストップ |
撥水 | 〇 |
マウンテンハードウェア ラミナエコAF
中綿にリサイクルポリエステルを80%使用し、無染色仕上げとしたことで製造時の水や二酸化炭素の使用を大幅に減らした環境配慮型の化繊シュラフです。コールドスポットを解消する独自の構造やフットボックスによって効率的に保温されるなどの工夫がされており、使用可能温度-9℃と考えれば1kgほどの重量も納得できる範囲です。
ブランド | マウンテンハードウェア |
モデル名 | ラミナエコAF |
適合身長 | 最大185cm |
重量(g) | 1090g |
中綿量(g) | 730g |
価格(税込) | \39,600 |
収納サイズ(cm) | 20×42 |
温度域 | 使用可能温度-9℃ |
中綿素材 | リサイクルサーマルQ |
シェル素材 | 20D |
撥水 | × |