「今年こそ冬の雪山にチャレンジしたい」とお考えの方。足に馴染んだいつもの登山靴で行こうとしていませんか。
普段履いている登山靴は、基本的に冬を除く3シーズン用に作られています。厳冬期用の登山靴は、3シーズン用の登山靴と異なり、氷点下の厳しい寒さと雪から登山者の足元を守る機能を備えています。雪山登山をお考えなら、冬の雪山に適した雪山用登山靴が必要です。
この記事では、初めて雪山にチャレンジする登山者に向けて、雪山用登山靴の特徴と選び方、おすすめのモデルを紹介しています。ぜひ、最後まで読んで参考にしてください。
冬の雪山に対応する雪山登山靴の特徴

雪山登山靴には、3シーズン用登山靴にはない、次のような特徴があります。
①保温材が入っている

雪山では、足元は常に雪面に接している上、冷たさを感じても、上半身のようにすぐに保温することができません。そのため雪山登山用の登山靴には、ゴアテックスと一体となった保温材(中綿)が入っていて、足元を雪による冷えから守っています。
雪の中に足を突っ込んでも快適でいられる保温性の高さが、3シーズン用の登山靴にはない大きな特徴です。
②ソールが硬く、フラット
雪山登山では、シューズにアイゼンを装着します。

雪面を蹴りこむ際、シューズのソールが柔らかいと足の力がアイゼンに伝わらず、氷雪に刺さらなかったり雪面が削れなかったり、最悪の場合、アイゼンが外れてしまったりします。
そのため、雪山用の登山靴はシャンク(*)を内蔵してソールの剛性を高めています。3シーズン用の登山靴の中には歩きやすさを重視してソールが折れ曲がるくらい柔らかいものもありますが、雪山用の登山靴は前後に力を加えてもソールが曲がることはありません。ソールが硬いことで、凍った雪道でもアイゼンが刺さって滑りにくく、しっかりと立つことができます。


また、3シーズン用の登山靴は、つま先が反ってやや浮いていますが、雪山用登山靴はつま先までソールがフラットなため、アイゼンがピッタリと密着し、外れにくいです。アイゼン装着に適したソールの硬度と形状になっているため、滑りやすい雪道であっても歩行に安定感をもたらしてくれます。
*シャンクとは?

シャンクとは、アウトソールとインソールの間に埋め込まれた樹脂製のプレートのことです。ソールの前後への曲がりを抑え、岩場や凸凹といった不整地での歩行に安定感を持たせます。
冬の雪山用登山靴は、雪山の滑りやすく不安定な登山道でもアイゼンがしっかりと刺さって立つことができるよう、シャンク内蔵の硬いソールになっています。
③アイゼン装着用のコバがある

雪山登山靴には、アイゼンを取り付けるための「コバ」と呼ばれる溝がついています。コバは、上の画像にように踵に設置されているか、踵とつま先の2か所に設置されており、アイゼンの金具をコバに引っ掛けて固定します。


ただし、雪山用登山靴でもコバの無いタイプがあり、その場合、ベルトで縛って固定するアイゼンを使用します。
アイゼンには、「ワンタッチ式」「セミワンタッチ式」「ベルト式」の3種類があり、次の表のようにコバの有無によって取り付けられるアイゼンが変わります。
コバの有無 | 装着できるアイゼン |
つま先と踵にコバがある | ワンタッチ式アイゼン |
踵にコバがある | セミワンタッチ式アイゼン |
コバが無い | ベルト式アイゼン |
雪山登山靴の選び方

雪山用の登山靴を選ぶポイントを紹介します。
①サイズやフィット感など自分の足に合うものを選ぶ

3シーズン用の登山靴の選び方同様、最も重要なのは自分の足に合うかどうかです。特に、雪山用登山靴の場合、剛性が高く、重量も片方のシューズだけで1㎏近くと重いため、自分の足に合わないとトラブルが発生しやすいです。
購入の際は、必ずお店で試し履きをしてみましょう。冬用の厚手の靴下を履いて試着するのがポイントです。
サイズはつま先に1㎝程度余裕があるものを選びます。靴紐を全部ほどいて足を入れ、つま先をシューズの先端にくっつけて、踵に指1本入るくらいのサイズ感です。
同じサイズでもメーカーによってフィット感が異なるので、横幅が圧迫されないか、足指のどこかが当たらないかなど、しっかりと確認しましょう。
お店によっては傾斜台が置いてあるので、実際に歩いてみることをおすすめします。靴の中の足指が前方のコバに近いほどアイゼンの前爪に力が伝わりやすいため、登攀性がアップします。雪山をイメージしながら、歩きやすさ、足との一体感などをチェックしてみてください。
また、スムーズに足入れができるか、足首周りの動きは妨げられないか、靴紐でフィット感の調節がしやすいか、などもチェックするといいでしょう。
*雪山用登山靴の各パーツの名称
名称は、各メーカーにより多少異なりますが、試し履きでお店のスタッフと話す際の参考にしてください。

(注)コバが踵とつま先の2か所にあるタイプもあります。
②アッパーの素材に着目
冬用登山シューズのアッパー素材は、「レザー」「化繊」の2種類があります。
レザー | 保温性、耐久性に優れる

雪山登山には、昔から皮革のゴツイ登山靴が使われてきました。現在のようにテクニカルな素材がなくても充分タフで温かかったからです。そんな歴史あるレザー製の登山靴は、保温力と剛性が高いのが特徴です。厳冬期の高所登山など極寒に挑む方におすすめします。
最初は硬い履き心地ですが、徐々に自分の足に馴染んでくるのが魅力で、メンテナンスをすれば長期間使える良き相棒となる存在に。
ただし、片足約1㎏と重いのがデメリットです。
化繊 | 軽量性、コスパに優れる

アッパー素材が化繊の登山靴は、軽量なのがメリットです。レザー製に比べて100~200g程度軽く、片足の重さが1㎏未満です。縦走登山など機動性を重視し、足への負担を減らしたい方に向いています。
また、化繊のシューズは、値段が安いのも魅力です。レザー製に比べ5,000円ほど値段が下がるため、初めての雪山用登山靴としてもおすすめです。
ただし、レザー製に比べて耐久力がやや落ちるのがデメリットです。
③アイゼンとの相性を見極める

どんなアイゼンでも、とりあえず雪山用登山靴に装着することはできます。しかし、靴とアイゼンには相性があり、装着さえできればいいというものではありません。選択を誤ると事故につながる恐れがあるため、雪山用の登山靴を選ぶ際は、必ずアイゼンとの相性をチェックしてください。
チェックポイントは、「ソール」「つま先」「踵」の3か所。靴とアイゼンの相性が良ければ、ソールとアイゼンが一直線に重なります。揺れたり浮いたりしている箇所があるなら、靴とアイゼンは合っていないことになります。
つま先と踵もフィットしているかどうかを確認します。特に踵は靴によって幅が異なり、コバにアイゼンの金具が取り付けられないこともあるため、必ずご自分のアイゼンをお店に持参してチェックしましょう。
また、同じモデルでもサイズが変わるとアイゼンとの相性が変わります。いろいろ試して最もフィットする一足を見つけてください。
アイゼンをこれから購入する方は、お店のスタッフに相談してアドバイスを受けながら選びましょう。
雪山登山靴のおすすめモデル5選
雪山初心者におすすめの雪山用登山靴の定番モデルを紹介します。どのシューズにすればいいか迷ったら、まずはこの中から選んで試着してみることをおすすめします。なお、各モデル全景画像の上段がメンズ、下段がウィメンズです。
雪山登山靴の定番モデル一覧
商品名 | ネパールエボGTX | モンブランプロGTX・モンブランプロGTX WMN | マンタテックGTX・マンタテックGTX WMN | アルパインエクスパート Ⅱ GT・アルパインエクスパート Ⅱ GT Ws | マウンテンプロ EVO GT RR M's・マウンテンプロ EVO GT RR W's |
メーカー | スポルティバ | スカルパ | スカルパ | ローバー | ザンバラン |
男性用・女性用 | 男女兼用 | メンズ・ウィメンズ | メンズ・ウィメンズ | メンズ・ウィメンズ | メンズ・ウィメンズ |
価格 | 89,100円 | メンズ:85,250円 ウィメンズ:85,250円 | メンズ:57,200円 ウィメンズ:57,200円 | メンズ:79,200円 ウィメンズ:79,200円 | メンズ:80,300円 ウィメンズ:80,300円 |
アッパー素材 | ペルワンガー社製防水レザー3mm | ペルワンガー社製耐水スエード3mm | ペルワンガー社製耐水スエード3mm | ペルワンガー・スウェードレザー | ペルワンガーレザー(2.6~2.8mm) |
中綿 | ゴアテックス・インシュレーテッドコンフォート | ゴアテックス・インサレーティッド | ゴアテックス・インサレーティッド | ゴアテックス パフォーマンス コンフォート+プリマロフト400 | ゴアテックス・インシュレーテッドコンフォート |
ソール | ヴィブラム社製ソール | ヴィブラム エッセンシャルAC | ヴィブラム ペンタックスプレシジョンXT | ヴィブラム Alp Trac Ice | ヴィブラム Penia(ミッドソール:PU) |
サイズ | 38~48(24㎝~32㎝) | メンズ:39~48(24.5㎝~32㎝) ウィメンズ:37~42(23㎝~27㎝) | メンズ:39~48(24.5㎝~32㎝) ウィメンズ:36~42(22㎝~27㎝) | メンズ:UK6~11(24.7㎝~29㎝) ウィメンズ:UK4~7(23㎝~25.6㎝) | メンズ:EUR40~48(約25.cm~29.0㎝) ウィメンズ:EUR37~43(約23.cm~26.5㎝) |
重さ(片足) | 約1040g | メンズ:900g ウィメンズ:765g | メンズ:880g ウィメンズ:710g | メンズ:900g ウィメンズ:750g | メンズ:945g ウィメンズ:871g |
対応アイゼン | ワンタッチ式 | ワンタッチ式 | セミワンタッチ式 | ワンタッチ式 | ワンタッチ式 |
【スポルティバ】ネパールエボGTX(男女兼用) | 厳冬期用ブーツの大定番

ぴったりと足を包みこむような圧倒的なフィット感で、足との一体感が高い、大人気の厳冬期用登山靴です。

足入れ感が良く、ふくらはぎにフィットするミニゲイターを装備することで雪の侵入を防ぎ、保温性を高めています。
アッパー素材は防水処理をした高品質のスエードレザーを、保温素材は防水透湿性と保温性を備えたGORE TEX insulated Comfortを採用しています。ソールは滑りにくく耐久性に優れ、信頼性の高いヴィブラム社製ソールです。

足首まわりはしっかりとサポート性がありながら、柔軟性、屈曲性に優れた「3D FLEX」システムを採用。足首を自由に動かすことができるため、急斜面や岩場でもソール全体で接地でき、スリップしにくいです。

また、つま先部にシューレースフックを1ピッチ増やすことと、足首手前にロック付きレースフックを設けることで、シューズ全体の確実なフィット感を実現。さらにロックはワンアクションで開放できるため、冬のグローブをはめたままで調節が可能です。

価格 | 89,100円 |
アッパー素材 | ペルワンガー社製防水レザー3mm |
中綿 | ゴアテックス・インシュレーテッドコンフォート |
ソール | ヴィブラム社製ソール |
サイズ | 38~48(24㎝~32㎝) |
重さ(片足) | 約1040g |
対応アイゼン | ワンタッチ式 |
【スカルパ】モンブランプロGTX (メンズ・ウィメンズ)| 軽量性と優れたフィット感で歩きやすい


幅広甲高の足型を使っているため日本人の足に合いやすく、フィット性に優れ、厚手のソックスを履いても窮屈さを感じずに雪山登山を楽しむことができます。

軽量ですが、冬用登山靴らしいしっかりとした剛性感があります。足入れはスムーズで、足首まわりはアッパーとタンが一体となった「ソックフィットシステム」により、心地よいフィット感を実現。さらに、ゲイター装備で雪や小石などの侵入を防ぐと共にヒートロスを防止します。足首まわりは柔軟性が非常に高く、足首の自在な動きを妨げません。

中綿はゴアテックスインサレーティッドを採用。高い保温力が備わっています。

足の甲を締め付ける部分がフックになっており、付け根がループになっていることで、甲と足首部の締め付けを別々に調整することができ、より高い次元でシューズ全体のフィット性を向上させることができます。
軽く、フィット性が高く、保温性があり、歩きやすいモデルです。
価格 | メンズ:85,250円 ウィメンズ:85,250円 |
アッパー素材 | ペルワンガー社製耐水スエード3mm |
中綿 | ゴアテックス・インサレーティッド |
ソール | ヴィブラム エッセンシャルAC |
サイズ | メンズ:39~48(24.5㎝~32㎝) ウィメンズ:37~42(23㎝~27㎝) |
重さ(片足) | メンズ:900g ウィメンズ:765g |
対応アイゼン | ワンタッチ式 |
【スカルパ】マンタテックGTX(メンズ・ウィメンズ) | コスパ◎で雪山初心者におすすめ


雪山用登山靴は値段が高く、70,000円~100,000円台が一般的ですが、マンタテックGTXは、メンズ・ウィメンズ共に57,200円と、破格と言っていいほどの値段です。それでいて機能、品質が高く、デザイン的にも優れているため非常にコスパが良く、改めて登山者の注目を集めている人気の雪山登山靴です。

ソールに使用されているヴィブラム ペンタックスプレシジョンXTは、岩場でのグリップ力と、一般登山道における歩きやすさを兼ね備えています。アウトソールの約0.5cmの深いラグ(靴底の突起)とラグパターンにより、ぬかるんだ雪道を歩いてもソールに泥がつきにくい仕様となっています。
軽量性、しなやかなシャンク、足首の柔軟性・屈曲性などを備えているため、歩きやすさは抜群です。また、ゆったりとした足型を使っているため窮屈な感じがなく、価格の安さからは想像できない保温力を備えています。
雪山初心者の最初の一足におすすめです。
価格 | メンズ:57,200円 ウィメンズ:57,200円 |
アッパー素材 | ペルワンガー社製耐水スエード3mm |
中綿 | ゴアテックス・インサレーティッド |
ソール | ヴィブラム ペンタックスプレシジョンXT |
サイズ | メンズ:39~48(24.5㎝~32㎝) ウィメンズ:36~42(22㎝~27㎝) |
重さ(片足) | メンズ:880g ウィメンズ:710g |
対応アイゼン | セミワンタッチ式 |
【ローバー】アルパインエクスパート Ⅱ GT(メンズ・ウィメンズ) | 圧倒的な保温力を誇る


ゴアテックスとプリマロフト400を組み合わせた中綿が、指先から踵、足の甲部分も含め足全体を包み込むように配置されている、保温力に優れたモデルです。常に低温にさらされる雪山登山靴の保温性は、雪山登山経験者なら必ず求めたい機能といわれるほど重要なポイントですので、保温を重視したい方におすすめです。

ゆったりとした足型、クッション材と一体化された特別設計のシャンク、人間工学に基づき考えられた足首周りの作り、厚みを抑えたソールなどで歩行性を高めています。


シューレースで好みのフィット感に調整できる上、登山者の足骨の形や歩行中の筋肉の動きに追従して動くよう設計されているため圧迫感を軽減。フィット感と動きやすさのバランスの良いシューズです。
価格 | メンズ:79,200円 ウィメンズ:79,200円 |
アッパー素材 | ペルワンガー・スウェードレザー |
中綿 | ゴアテックス パフォーマンス コンフォート+プリマロフト400 |
ソール | ヴィブラム Alp Trac Ice |
サイズ | メンズ:UK6~11(24.7㎝~29㎝) ウィメンズ:UK4~7(23㎝~25.6㎝) |
重さ(片足) | メンズ:900g ウィメンズ:750g |
対応アイゼン | ワンタッチ式 |
【ザンバラン】マウンテンプロ EVO GT RR(メンズ・ウィメンズ)| 雪山登山に対応する高性能なアルパインブーツ


まず、2枚のタンを面ファスナーで張り付けたダブルタン構造により、甲から脛にかけてのフィット感を細かく調整することができます。




また、足首の屈曲部分にアッパーレザーの深い切込みと、テープフックを採用することで可動域を存分に広げ、自由度の高いテクニカルな動きが求められるアイスクライミングにも対応できる作りとなっています。

極寒の環境にも対応できるよう保温材にゴアテックス インシュレーテッドコンフォートを採用するだけでなく、起毛加工が施されたポリエステル素材『THERMO COMFORT FOOTBEDS』をインソールとして使用。足底の冷えを防止します。
シューレースでさまざまな足の形状にフィットさせることができる構造をもち、足首までをしっかりと包み込む歩きやすい特徴を備えています。
価格 | メンズ:80,300円 ウィメンズ:80,300円 |
アッパー素材 | ペルワンガーレザー(2.6~2.8mm) |
中綿 | ゴアテックス・インシュレーテッドコンフォート |
ソール | ヴィブラム Penia(ミッドソール:PU) |
サイズ | メンズ:EUR40~48(約25.cm~29.0㎝) ウィメンズ:EUR37~43(約23.cm~26.5㎝) |
重さ(片足) | メンズ:945g ウィメンズ:871g |
対応アイゼン | ワンタッチ式 |
自分の足に合う一足で雪山登山にチャレンジを
雪山用登山靴は、自分の足に合うものを見つけることが最重要課題です。さまざまなモデルや、同じモデルの異なるサイズを、お店と人と相談しながらいろいろ試着してみてください。納得のいくものが見つかったら、それはきっと信頼できる良き相棒になるでしょう。