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登山者必読!安全登山のための遭難リスク対策ガイド【徹底解説】

登山者必読!安全登山のための遭難リスク対策ガイド【徹底解説】

登山には遭難リスクがあり、誰でも遭難してしまう可能性があります。しかし、安全知識を身につけ、対策を講じることで未然に防ぐことができるでしょう。そこで、本記事では、安全登山のための遭難対策について解説します。登山遭難の現状や遭難事例、遭難対策から遭難時の対処法などを網羅的にまとめました。これらの情報は、安全登山に役立つ知識となるため、ぜひ参考にしてください。

データからみる登山における遭難の実態

山岳救助ヘリコプター 病気の登山者を吊り上げて搬送
登山 遭難
山岳救助ヘリコプター 病気の登山者を吊り上げて搬送 出典:PIXTA

登山で遭難した経験がない人にとって、遭難の実態を正確に把握することは難しいでしょう。そのため、これまでの登山遭難の統計データから、遭難の実態を紐解いていきます。

他人事ではない!登山における例年の遭難者数

山岳遭難の概況
登山 遭難
山岳遭難の概況 出典:山岳遭難・水難|警察庁Webサイト (npa.go.jp)

警察庁が発表している「山岳遭難の概況」によると、年間約2,000人登山で遭難していると記載してあります。これを1日あたりに換算すると5~6人となり、他人事のように楽観視できる数字ではないでしょう。

また、近年では、里山のような低山でも遭難事例が増えています。そのため、危険個所の多い高山だけでなく、身近な山においても注意が必要です。

登山の遭難原因は「道迷い」が一番多い

態様別山岳遭難者構成比の推移
登山 遭難
態様別山岳遭難者構成比の推移 出典:山岳遭難・水難|警察庁Webサイト (npa.go.jp)

登山における遭難の原因を見てみると、もっとも多いのが「道迷い」で、全体の約4割を占めています。山道は複雑で不明瞭な場所が多いため、道迷いしやすいようです。

次いで多いのが「滑落と転倒」。山道は足場が不安定な場所が多いため、転倒または滑落によってケガをしてしまう人が多いです。また、山では熱中症や脱水症状を起こして行動不能になるケースもあります。遭難の原因を把握し、対策を講じることで、遭難リスクを効果的に軽減できるでしょう。

なぜ遭難する?登山遭難のきっかけとなる要因

爺ヶ岳登山・悪天候(ガス)
登山 遭難
爺ヶ岳登山・悪天候(ガス) 出典:PIXTA

前章で解説したとおり、登山における遭難の原因は、滑落や転倒、道迷いなどがあります。以下では、それらの原因が、どのような状況で起こるのかを解説します。

「不注意」による道迷いや転倒

道迷いや転倒を引き起こす要因の一つとして、「不注意」があります。不注意の例を以下に記します。

  • パーティと会話に夢中で躓いた
  • 浮石に気づかず踏んで転んだ
  • 急いで下山中していて分岐を間違った

こうした不注意によって、道迷いや転倒が引き起こされます。そして、転んでケガをして歩けなくなったり、道に迷って戻れなくなったら「遭難」につながるのです。とくに、下山中は疲れがたまり、注意が散漫になりやすいので、油断しないようにしましょう。

「準備不足」によって起こるトラブル

登山には、さまざまな危険が潜んでいます。それらの危険に対応するためには、適切な知識や登山装備が必要です。準備不足で山に登ると、遭難につながるリスクが高くなります。以下では、準備不足によって起こるトラブルの例をいくつか挙げます。

準備不足の例起こりうるトラブル
登山靴でなくスニーカーで登る足元がぐらつきやすいため、転んでケガをする
レインウェアを携行しない突然の雨に対応できず、体が冷えて動けなくなる
地図やコンパスを携行しない現在地や進路が分からなくなり、道に迷ってしまう

上記の例のように、「準備不足」が遭難を招く要因になります。

登山者の判断を狂わす「正常性バイアス」

正常性バイアスとは、予期しない事態にあったときに、異常や危険な事態を過小評価したり、無視したりする傾向のことです。登山での出来事に置き換えると、以下のようになります。

  • 道迷いしてしまったとき、「なんとかなるだろう」と突き進む
  • 急斜面を歩くとき、「滑らないだろう」と強引に進む

楽観的に考えてしまい、完全に道を見失ったり、滑落してケガをしたりするケースがあります。正常性バイアスの怖さは、あくまで「自分は大丈夫」と妄信的になることです。トラブルが起きた際に正常な判断ができず、さらに窮地に追い込まれる事態に陥ることもあります。

この正常性バイアスは、日常のなかでは理解するのが難しいと思います。そこで、次章で解説する「遭難事故の事例」をみることで、よりリアルに想像できるでしょう。

事例から学ぶ!登山遭難の怖さ

登山道と女性ハイカー 
登山 遭難
登山道と女性ハイカー  出典:PIXTA

登山遭難の実態や要因について解説してきましたが、いまいちピンとこない人もいるかもしれません。そこで、遭難事故の事例をみることで、よりリアルに登山遭難について考えることができるでしょう。以下では、登山の遭難事故例を2つご紹介します。

【道迷い遭難】荒川三山の遭難事故例

1999年8月、南アルプスの荒川三山(前岳・中岳・悪沢岳)で起きた遭難事故例です。道迷いしたことがきっかけで、下山しようと進んだところ、滝に進路を阻まれます。八方塞がりのなか、滝つぼに落ちて足を骨折。行動不能になって、その後ヘリで救助されました。

当時の状況や登山者の心境を考えると、遭難してしまった理由がみえてきます。

遭難時の状況・単独で登っていた
・雨で視界が悪かった
遭難時の心境・地図を出すのが億劫だった
・早く下山したかった
・道迷いに気づいていたが、戻るのが大変そうだった

雨の要因、そして登山者の焦りや油断が道迷いを引き起こしています。また、道迷いに気づいてなお進み続けたり、滝から落ちたりと、誤った判断をしています。この判断の狂いは「正常性バイアス」によるもの。なんとかなるだろうと、安直な考えに引っ張られてしまうことがあるのです。

【気象遭難】トムラウシ山の遭難事故例

2009年7月、登山ツアー参加者15名とガイド3名の計18名がトムラウシ山で遭難したケースです。当時、暴風雨にさらされる悪天候で、行動不能になる人が続出しました。結果として、18人のパーティーのうち8人が死亡する事態に。

登山者を死に至らしめた要因は「低体温症」。暴風雨によって急激に体温が下がり、動けなくなったのです。この遭難事故では、意外と思うような点が2つあります。

  • プロのガイドがいても遭難事故が起きてしまった
  • 夏でも低体温症になった

天候を読むのは、経験のあるガイドでも難しい。また、山には転びやすい場所や道に迷いやすいところが多々あるので、誰でも遭難してしまう可能性があることを理解しておかなければいけません。

暖かい夏でも、低体温症になる場合もあります。とくに、標高の高い山は、地上に比べて気温が低く、さらに強風が吹くことが多いため、体温は下がりやすいです。

【登山遭難対策】リスクを最小限にするための準備3つ

ガイドブックや登山地図
登山 遭難
ガイドブックや登山地図

前章では、登山遭難の事例について解説しました。次に、具体的にどうすれば登山遭難を防げるのか。以下では、登山前にするべき準備について3つご紹介します。この準備をすることで、遭難リスクを軽減することができるでしょう。

綿密な登山計画を立てる

安全登山の第一歩は、登山計画を立てることです。登る山やコースの特徴、注意箇所を把握することで、起こりうるトラブルをある程度予測することができます。そして、その対策をすることで、遭難につながるトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。以下では、登山計画を立てるときに気づくことや、その対策例について表にまとめました。

登山計画を立てるときに気づくこと対策例
想定よりも歩行時間が長く、日没までに下山できないかもしれない早出して、時間にゆとりをもって行動する
標高差が高く、登るのに苦労するかもしれない・時間にゆとりのある行程を組む
・食料や飲料水を多めに持ち歩く
鎖場や大きな岩場などの難所がある・登る山やコースを変更する
・難所の通行の仕方を学んだうえで慎重に歩く

このように、無理のない登山計画を立てることで、遭難リスクを軽減できます。

適切な登山装備を準備する

安全に登山するためには登山装備が不可欠です。登山靴やレインウェアはもちろん、登山時のトラブルに備えて、ファーストエイド(応急手当)やエマージェンシー用品(緊急時に使う物)が必要です。

また、山の環境や山行スタイルによっても、必要な登山装備は変わります。たとえば、残雪がある場所ではアイゼンが必要ですし、鎖場やハシゴ場では手の保護のために手袋が必要になります。適切な登山装備がないとケガをしたり、トラブルに対処できなかったりするので、必要なものは準備しておきましょう。

規則正しい生活で体調を整える

登山は体力をかなり使うスポーツです。起伏のある山を長時間登り、ときには、ずっと直射日光を浴びます。そのため、途中で気分が悪くなったり、疲れて歩けなくなることもあるでしょう。

元気に登山するためには、体調を万全にしておくことが大切です。前日の夜更かしや深酒などはしないようにします。体調を整えて登山に臨みましょう。

【登山遭難対策】登山中に実践すべき安全対策3つ

方位磁針で方角を確認するハイカー
登山 遭難
方位磁針で方角を確認するハイカー 出典:PIXTA

山登りにおいて、しっかりとした事前準備を行っても、遭難を完全に防ぐことは難しい。山の状況は、現地に行ってみないと分からないことも多く、さらに山の環境も刻々と変わるからです。そのため、登山前の準備のほかに、登山中に気をつけるべき点を3つご紹介します。

地図やGPSでこまめに現在地を確認する

登山道には、獣道や分岐点など道に迷いやすいポイントがいくつかあります。また、落ち葉や雪などで不明瞭な道もあるため、地図やGPSを使い、こまめに現在地を確認することが大切です。そうすることで、道を誤った場合でも早期に気づけます。

▼道迷いしやすいポイント

  • 登山道の分岐点
  • 雪渓や落ち葉などで登山道が見えづらい場所
  • 迷いやすい地形(沢沿いや尾根のジグザグ道、斜面を横切る道など)

休憩や水分補給をこまめにとる

登山では、重い荷物を持って長時間歩くため、かなり体力を使います。そのため、疲労や脱水症状で動けなくなるケースもあります。こうした事態を防ぐために、休憩や水分補給をこまめにとることが大切です。

具体的には、1時間ごとに10分の休憩を目安にとるとよいでしょう。疲れる前に休む、喉が渇く前に飲むといったようなイメージです。適度な休憩が、長時間動き続けられる秘訣になります。

「ルートファインディング」で安全な足運びを意識する

ルートファインディングとは、最適な道選びのことをいいます。登山道では転びやすいポイントがいくつかあるので、そのポイントを避けながら歩き、転倒を防ぎます

▼登山道で転びやすいポイント
濡れた木道、木の根、浮石、濡れた岩、砂利、落ち葉など

また、段差が高いところや傾斜がある場所も体力を消耗してしまいます。できるだけ段差の低い場所や傾斜の少ない場所を歩くことで体力を温存できます

ルートファインディングのやり方は以下の通りです。

①遠方の目印を見て目的地を確認する
②中間を見てルートを最適なルートを探す
③目の前を見て安全な場所を歩く

①から③を繰り返すことで、安全に体力を温存しながら歩けるでしょう。

登山遭難の一歩手前!道迷い時のリカバリー方法

立て看板
登山 遭難
立て看板 出典:PIXTA

登山において、道を間違ってしまうのはよくあることですが、すぐに気づいて戻れば遭難にはなりません。つまり、この道迷い時の行動が、遭難を防ぐ分岐点になります。

道に迷ったときは、「来た道を引き返す」のが原則です。道を間違ったまま進んでしまうと、完全に道を見失ってしまうおそれがあります。「登り返すのがめんどう」とか、「下ればなんとかなるだろう」といった、心の甘い囁きに惑わされないようにしましょう。

来た道を引き返し、見覚えのあるポイントを探します。しかし、登りと下りとでは視点が変わるので、通った道が分かりづらくなります。そのため、地図やGPSを駆使して、慎重にリカバリーを試みましょう

もし遭難してしまったら?登山遭難時の基本行動マニュアル3つ

山岳遭難 
登山 遭難
山岳遭難 出典:PIXTA

前章では、登山で遭難しないための対策について解説しました。しかし、実際に遭難してしまった場合はどうしたらよいだろうと不安になる人もいるでしょう。そこで、以下では、登山遭難時にとるべき基本行動を3つご紹介します。

まずは冷静に現状を把握する

遭難時、焦ったりパニックに陥ったりすることもあるでしょう。しかし、そのような状態では、判断力が鈍くなり、間違った判断をするおそれがあります。そのため、深呼吸して冷静になるように心がけましょう。

落ち着いたら、現状を把握します。転倒してケガをした場合は、どの程度のケガなのか確認し、応急手当をします。また、道に迷ったときは、現在地を把握し、進路を確認しましょう。

自力で下山できそうにないときは緊急通報する

もし、ケガをしてしまったり、完全に道に迷ったりしたら、緊急通報をしましょう。電波が通じる場合は、110番もしくは119番に電話をして、状況と場所を伝えます。通報後は、体力を温存するために、待機しておくほうが賢明です。

もし電波が通じない場合は、尾根や開けた場所へ移動し、連絡を試みましょう。開けた場所は電波がつながりやすく、救助隊からも発見されやすいです。

道に迷ったら登る

もし体力に余裕があり、かつ、日没までの時間があるなら、尾根や山頂を目指して歩くのも手です。山頂を目指して歩くことで進路が狭まり、登山道に行き当たりやすくなります。

一方、道が分からないまま、ふもとの方に下ってはいけません。その理由は、滝や崖などの「通れない道」に阻まれる可能性が高いためです。無理に下山しようとすると、かえって危険なので注意しましょう。

命を守る!登山遭難時に生存率を高める5つの方法

ツェルト
登山 遭難
ツェルト

遭難した場合、救助隊がすぐ来るのは難しく、数日間山のなかで過ごすことになる可能性があります。そのため、自分で生き延びるための方法を知っておくことが重要です。以下では、登山遭難時に生存率を高める方法を5つご紹介します。

登山届を提出しておく

登山届は、遭難したときに見つけ出してもらうためのカギになります。登山届には登山する山やコースの情報が記載されているため、遭難した場合でも救助隊が迅速に捜索することができます。もし登山届がなく、どこにいるか想定できない場合、遭難者を探すのは極めて難しくなるでしょう。

また、家族や友人に登山予定を伝えておくことも大切です。遭難した際に異変に気づき、捜索願を出してくれます。

遭難時はむやみに動かない

遭難した場合、むやみやたらに動き回るのは危険です。山道は足場が悪いことも多く、焦って行動してケガをする可能性が高まります。また、携行する食料や飲料水は限られるので、体力を温存するほうが得策です。

食料や水は多めに携行する

遭難リスクの備えとして、食料と飲料水は多めに携行しましょう。非常食は、口にしやすく即エネルギーになるものが好ましいです。たとえば、ゼリーやようかんなど。また、ナッツ類は小さいわりに栄養価が高いので、非常食としておすすめです。

飲料水は水だけでなく、スポーツ飲料や経口補水液もあるとよいでしょう。発汗して失われがちな塩分やミネラルを効果的に補ってくれます。

体温を下げない工夫をする

体を冷やしてしまうと、低体温症を引き起こし、行動不能に陥ることがあります。とくに汗や雨で体が濡れると、急激に体温が奪われるので注意しましょう。体を冷やさないために防寒着を着たり、雨風をしのげる場所に避難したりすることが大切です。

さらに、体温を上げる行動をとるのも効果的です。体を動かしたり、食事を摂ることで体を温めることができます。

緊急野営できる装備を携行する

山では夜や明け方になると寒くなるため、雨風をしのげるツェルト(簡易テント)があると便利です。ツェルトを避難所のように活用することで、体力を温存することができます。

危機に備える!登山遭難時に役立つ5つのアイテム

エマージェンシー用品
登山 遭難
エマージェンシー用品

登山において、遭難リスクに備えることが大切です。以下では、登山遭難時に役立つアイテムを5つご紹介します。これらのアイテムを準備し、自分の身を守りましょう。

ナビゲーションツール

ナビゲーションツールとは、現在地や進行方向を知るためのアイテムです。おもに地図やコンパス、GPSアプリがあります。

ナビゲーションツールを持っているだけではなく、使い方を熟知しておくことも大切です。街中や里山などで慣らしておくとよいでしょう。

ヘッドライト

山のなかで日没を迎えてしまうと、暗くて行動ができなくなります。そのため、夜間でも行動できるようにヘッドライトを携行するとよいでしょう。

ヘッドライトの明るさは200ルーメン以上で、防水性能があるものがおすすめです。また、長時間使えるように、予備の電池も携行しましょう。

ツェルト(簡易テント)

ビバーク(緊急野営)で活躍するツェルト。雨風をしのぎ、体力を温存するのに重宝します。

ツェルトの利点は軽くて持ち運びやすいことと、設営しやすいことです。ツェルトはさまざまな使い方ができ、木々の間に括りつけたり、そのまま被ったりもできます。

エマージェンシーシート

エマージェンシーシートは、緊急時に体温の低下を防ぐために使用します。気温の低い夜間や、行動せず留まるときにエマージェンシーシートで体を包み、体温を維持します。防寒着よりも軽くコンパクトなので、携帯性に優れます。

モバイルバッテリー

電子機器の電源を確保するために使います。携帯電話やヘッドランプの充電をし、いざというときに使えるように携行します。モバイルバッテリーの容量は、使用する電子機器を考慮して選びましょう。

遭難リスクに備えて安全登山をしよう

野反湖 湖畔のハイキングコース
登山 遭難
野反湖 湖畔のハイキングコース 出典:PIXTA

登山遭難の現状や遭難事例、遭難対策から遭難時の対処法などを解説しました。山に入る以上は遭難のリスクが伴うので、遭難しないための対策を講じることが大切です。とくに、登山計画を立てたり、エマージェンシー用品を用意したりするなど、登山前にできる準備を怠らないようにしましょう。遭難リスクに備えることで、安全に登山を楽しめます。

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