高山登山は、開けた眺望で壮大な景色を楽しめる、まさに登山の醍醐味です。
しかし、森林限界を越えると自然環境は厳しさを増すため、適切な準備が不可欠となります。
今回は、低山から一歩進んで初めての高山登山に挑む方々に向けて、楽しく、そして何より安全に登山を体験できるよう、必要な持ち物と装備について詳しくご紹介します。
対象となる登山のレベル
本稿では以下のような登山のレベルを想定しています。
- はじめて高山登山へチャレンジする人
- 森林限界を越える山
- 食事は山小屋や持参したお弁当(調理はしない)
- 無雪期(春・夏・秋)
- 一般的な登山道を使用
藪漕ぎや沢登りなどのテクニカルなルートは想定しておりませんので、予めご了承ください。
高山と低山の違い
本稿では森林限界を越える山を高山として扱います。
森林限界とは樹々が生育できなくなる限界のことで、日本列島は南北に長いため地方によって大きく異なりますが、本州では概ね標高1500m〜2000m前後で森林限界を迎えます。
森林限界を超えた場所では以下のような特徴があります。
- 眺望が良い
- 風が強い
- 直射日光に晒される
- 標高が高いため気温が低い
森林限界を超える山では低山で用いる装備に加えて、上記の特徴に対応する装備を追加することになります。
高山登山で最低限必要な持ち物リスト
アイテム | 説明 |
---|---|
登山用ザック | 必要な装備、食料、水などを運び、緊急時には生命を守る重要な装備です。 |
登山靴 | 足元の安定性を保ち、足への負荷を軽減し、滑りやすい地形での滑倒を防ぎます。 |
レインウェア | 突然の雨や風から身体を保護し、体温の低下を防ぎ、快適な登山を続けるために必要です。 |
防寒具 | 寒冷な気候や急激な気温変化による体温低下を防ぎます。 |
グローブ | 手を保護するために必要です。 |
サングラス | 目を保護するために重要です。 |
ザックカバー | 雨が降った時にザックが濡れないようにするために使用します。 |
水と水筒 | ボトルかハイドレーションタイプのどちらかを選びましょう。 |
ファーストエイドキット | 体に傷を負ったときに応急処置ができる必要最低限のキットです。 |
登山用地図とコンパス | スマホや時計に備わった地図、もしくは紙地図でルートを確認できるように準備しましょう。 |
タオル・てぬぐい | 汗拭き、日焼け防止に役立ちます。 |
行動食 | エネルギ、ミネラル、ビタミンなど登山で必要な栄養を補給しましょう。 |
健康保険証のコピー | 万が一のためにコピーを用意しておくと安心です。 |
ビニール袋 | ゴミ袋や濡れたものをしまうときに役立ちます。 |
現金 | 山小屋での買い物や自動販売機の使用に必要です。 |
携帯電話 | 万が一の通信手段として重要です。 |
エマージェンシーシート | 急な気温の低下や怪我など緊急時に役立ちます。 |
モバイルバッテリー | スマートフォンやその他の電子機器の充電に必要です。 |
登山用ザック
日帰り登山で必要とされている登山用ザックの容量は一般的に20〜30Lと言われています。
ザックは大は小を兼ねないため、ご自身の荷物の量に合わせて適切なサイズを選ぶことが重要です。
ザックの背負い心地は重量物を背負う登山において疲労に直結する重要なアイテムです。信頼性が高い、実績のあるメーカーの製品をおすすめします。
グレゴリー、アークテリクス、オスプレー、カリマー、パタゴニアなどのブランドが有名です。
登山靴
主に不整地を歩く登山において、登山靴は足と足首を保護するために非常に重要です。また、足に合わない登山靴を使用すると、疲労が増し、さらに怪我を引き起こす可能性もあります。そのため、自分の足に合った登山靴を選ぶことが重要です。
レインウェア
登山では予期しない天候に遭遇する可能性が常にあります。
身体が濡れてしまうと、低体温症を引き起こすリスクが高まるため、レインウェアは登山者にとって重要な装備となります。また、レインウェアは防寒着としても役立ちます。
天候が良く雨が降らないと思われても、必ずレインウェアを持参しましょう。
防寒着
登山は高い運動強度を伴い、活動中には汗をかくほど暑く感じることもある一方、休憩を取ると体感温度が急速に下降します。
このため、特に高山では適切な防寒着が欠かせません。ダウンジャケットはその軽量性と保温性から防寒着に適していますが、濡れるとその保温性が大幅に低下するため、発汗が予想される活動時や雨天時の使用には制限があります。
これらの点から、アウターの下にレイヤリング可能なインナーダウンが登山用の防寒着としておすすめです。
グローブ
登山におけるグローブは手の保温だけでなく手の保護、 手の防水という三つの役割を担います。またそれぞれの役割は季節によって形状や素材で快適性が異なり、登山用グローブ選びは混乱する人も多いようです。
それぞれの季節と登山スタイルによって快適なグローブが異なるので、いろいろなグローブを試してみて自分にとってベストなアイテムを手に入れるようにしましょう。
ザックカバー
ザックカバーはザック用のレインウェアです。
登山用ザックはある程度の撥水加工がされていますが、本格的な雨には対応することができません。
身体と同様に荷物を濡らすことも安全に大きく関わりますので、重要なアイテムです。
ザックに付属している場合もありますが、付属していない場合は必ず購入しましょう。
ファーストエイドキット
、大きな怪我に発展しないように、応急処置ができる最低限のファーストエイドをもっていくようにしましょう。
転んで怪我をしてしまったときには、湿潤治療が重要です。水で汚れを落として、バンドエイドなどで応急処置ができる位のファーストエイドは最低でも準備しておきましょう。
登山において地図とコンパスは基本かつ重要なツールです。
初心者用の山は、登山道や案内板が整備されているので、あまり必要性を感じないかもしれません。しかし、逆に言うと地図読みの練習にも最適なフィールドといえます。
最近はスマホでも登山地図を閲覧可能です。ただし、山中は電波が届かない場合がありますので、予め地図はダウンロードしておきましょう。
行動食
登山は運動強度が高く、エネルギー消費の激しいアクティビティです。 そのため、カロリー補給が重要です。
さらに、発汗によりミネラルが失われるため、水分補給だけでなく、ミネラルの補給にも注意が必要です。
こまめな補給を心がけましょう
健康保険証のコピー
登山は自然との接触が深いため、予期しない事故やケガ、病気のリスクが常にあります。そのような場合に、健康保険証のコピーがあれば、救急車を呼んだり、病院での治療をスムーズに受けることができます。
ビニール袋
山では自分で出したゴミは自分で持ち帰るのがルールです。
ゴミ袋以外にも濡れたレインウェアをしまう際などにも重宝しますので複数枚持参しましょう。
現金
山小屋や自動販売機で飲食物を購入する際に必要になる場合がありますので、持っておくと安心です。
携帯電話
登山中に通信手段を確保することは、万が一の事態に備えて非常に重要です。
スマートフォンは通信だけでなく、登山に役立つ情報収集にも活用することが可能です。ただし、緊急時に備えて電源が切れないよう、バッテリー残量には十分に注意する必要があります。
さらに、モバイルバッテリーを持参すると、バッテリー切れのリスクを軽減できます。これにより、必要な時にスマートフォンを使用することが可能になり、より安心感を持つことができます。
エマージェンシーシート
エマージェンシーシートは、軽量でコンパクトに折りたたむことが可能で、緊急時に非常に有用な装備品となります。
エマージェンシーシートの主な機能は保温と防水で、アルミニウム製のものは体温を反射するため、寒さから体温を保つのに役立ちます。
また、防水性もあり、雨天や雪天の際に濡れることを防ぎます。また、適切に配置すれば、雨避けのシェルターとしても使用可能です。
さらに、その鮮やかな色や反射性は、救助隊が自分の位置を見つけやすくするための信号としても機能します。
モバイルバッテリー
モバイルバッテリーがあることで、スマホやヘッドライトのバッテリー切れのリスクを大幅に軽減することができます。
あると便利な持ち物
アイテム | 説明 |
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トレッキングポール | 坂道の昇降を補助し、負担を減らすために使用します。 |
登山用時計 | 高度や気圧を測定するために重要です。また、予想到着時間の計算にも役立ちます。 |
ゲイター | 足元から泥や水、雪などを防ぐための装備です。 |
トレッキングポール
トレッキングポールは登山やハイキングにおいて非常に有用なツールです。
歩行時のバランスを安定させ、不安定な地形でも安全に移動するのを助けます。さらに、下半身にかかる負荷を軽減し、特に下り坂で膝への圧力を和らげます。適切に使用すると、全身を使った効率的な運動が可能になり、体力の維持に寄与します。
また、滑りや転倒のリスクを軽減し、さらに、トレッキングポールはテントの支柱としてや、非常時には担架の一部としても利用可能です。
登山用時計
登山用の時計は、ただ時間を知るためだけでなく、さまざまな機能を備えており、登山中の安全性や便利性を高めるために重要なアイテムです。
多くの登山用時計には、高度計、気圧計、方位磁針(コンパス)、温度計などの機能が搭載されています。
これらの機能は、天候の変化を予知したり、位置や方向を確認したり、高度の変化を把握することができ、登山中の判断を助け、安全な登山を実現します。
ゲイター
ゲイターは靴とズボンの間を覆う装備で、足元を雪や泥、砂、水、小石などから保護します。これにより足元の快適性を維持し、歩行効率を向上させます。
特に樹林帯では、雨が降った後に泥濘みが長く続くことがあります。そのような状況でも、ゲイターは靴の中に泥や水が入るのを防ぐ役割を果たします。
低山登山においても、足元を保護し、歩行の効率と快適性を高めるために、ゲイターは大変有用なアイテムとなります。
パッキング方法を学んで収納
パッキングを工夫することで、疲労を軽減し快適に登山することができます。荷物の重量配分を考え、重い物は身体に近く、軽い物は外側へ収納しましょう。また、頻繁に使用するアイテムはバックパックの入り口付近に収納しすると、状況に応じてアイテムの出し入れが容易になります。
持ち物チェックリストで忘れ物防止!
高山登山に最低限必要な持ち物
チェック | アイテム |
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登山用ザック | |
レインウェア | |
防寒着 | |
登山靴 | |
グローブ | |
サングラス | |
ザックカバー | |
水と水筒 | |
ファーストエイドキット | |
登山用地図とコンパス | |
タオル・てぬぐい | |
行動食 | |
健康保険証のコピー | |
ビニール袋 | |
現金 | |
携帯電話 | |
エマージェンシーシート | |
モバイルバッテリー |
あると便利な持ち物
チェック | アイテム |
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トレッキングポール | |
登山用時計 | |
ゲイター |