アルプスや八ヶ岳をはじめ、登山を行う場合の必須装備の一つがヘルメットです。落石や滑落などによる頭部への損傷から身を守るため、安心安全な山行のために非常に重要な装備です。
主に重要視すべき性能は2点で、衝撃から頭部を守る耐衝撃性能と歩行時の頭のぐらつきによる不快感を抑える軽量性とフィット性による快適性能です。今回は、3種類ある登山ヘルメットの構造のうち、特に軽量で快適性に優れたインモールド構造のヘルメットを紹介します。
信頼できるメーカーの耐衝撃性能に優れた安心なヘルメットの中でも、特に軽量な200g前後のヘルメットに厳選してご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
登山用ヘルメットのおすすめメーカー
ペツル
ペツルは、50年以上の歴史を持つクライミングギアを販売するブランドです。クライミングや救助に使用するハーネス、ヘッドランプなどを主に製造しており、安全はもちろんのことデザイン性の高さも人気のメーカーです。
ヘルメットは、「シロッコ」という最軽量モデルが人気で現在では進化を重ねた3代目となっています。また、初の女性用ヘルメット販売もペツルが行っており、革新的な発想やデザイン性の高さも兼ね備えています。
ブラックダイヤモンド
アメリカの名門アウトドアブランドで、クライミングをはじめトレッキングやバックカントリースキーなど様々なアイテムを展開しています。信頼の名門ブランドは、多くの登山者に愛されており、耐久性と機能性を兼ね備えています。
クライミングからバックカントリースキーまで様々なアクティビティに合わせて、ヘルメットだけでも多彩なラインナップをそろえています。安全性と快適性を求めたモデルが多く、2サイズ展開や女性用モデルもあるなど多くの方にフィットしやすい万能タイプのメーカーと言えるでしょう。
マムート
160年の歴史をもつスイス発の老舗アウトドアブランドで、素材の特性を活かした確かな品質のアイテムが多くの登山者に人気のメーカーです。もともとはロープメーカーとして始まっており、ヘルメットを含めたクライミング用品に定評があります。
マムートのヘルメットは、高い技術力が特徴で、MIPS(多方向衝撃保護システム)の採用など耐衝撃性能と軽量性の両立を図ったモデルが多く、過酷な状況に挑戦するような登山者でも安心して選択できる性能を誇ります。
グリベル
200年以上の歴史をもつイタリアのアウトドアブランドです。多くの登山者から信頼されるクライミングギアは、高い安全性を誇り、特にヘルメットやピッケルなどの高所向け装備では世界トップクラスの地位を確立しています。
ヘルメットは、安全性が高く、またフィット感や独特なデザイン性にも定評があります。イタリアのメーカーではありますが、ジャパンフィットを採用しており、日本人の頭に合わせて調整している点も高評価のポイントです。
登山用ヘルメットの"5つのポイント"を抑えた選び方
登山用ヘルメットを選ぶ時には5つのポイントを抑えることで、実際に使用する時にストレスなく安全に登山をすることが可能です。あまり考えないでヘルメットを購入すると、頭が痛い、首が疲れる、夜間や雨天時に使いづらいなど登山に集中することができなくなってしまう可能性もあります。
たかがヘルメットですが、されどヘルメットです。普段は装着していることを忘れるくらいの快適性でありながら、万が一の際にはしっかりと自分の頭を守ってくれる最高の一点を選びましょう。
①代表的な2種類+αの構造から選ぶ
登山用ヘルメットには大きく分けて2種類の構造があります。
- インモールド構造:軽くて耐衝撃性が高いが、価格も高い
- ハードシェル構造:耐久性が高く重量感があるが、価格は手頃
軽量性を重視するならば「インモールド構造」がおすすめ
軽量な登山用ヘルメットの多くは、インモールド構造と呼ばれる発泡スチロール(EPS)や、発砲ポリプロピレン(EPP)を使用した構造を採用しています。さらに通気性にも長けているため夏の縦走登山や発汗の可能性が高い登山におすすめのモデルです。
衝撃に強く価格が手頃なものならば「ハードシェル構造」がおすすめ
耐衝撃性・耐久性に優れたポリカーボネイトシェルなどを使い、硬くて傷に強い特徴があります。ヘルメットを薄くすることができ更には耐久性が高いヘルメットです。外側に樹脂製のシェルをまとい、内側に発泡剤という構造が一般的で、価格が安く重量は軽いもので230g前後、通常300g前後のスペックです。
インモールドの軽さとハードシェルの耐久性を備えた「ハイブリットタイプ」
EPPとEPS、2つのフォームにABSシェルを組み合わせることで軽さと耐久性を両立させたタイプです。このタイプのヘルメットは主流ではありませんが優れた技術力のブラックダイヤモンドから発売されています。
②安全基準を満たしたヘルメットであるか確認する
登山用登山用ヘルメットにはヨーロッパと日本の2種類の安全規格が採用されているモデルがほとんどです。価格が安いモデルにはこの安全規格外であることもあるので必ず確認するようにしましょう。
EN規格-EN12492
ヨーロッパの統一規格をEN規格と言い、その中でもEN12492が山岳用ヘルメットの規格です。この規格は5種類のテストからなり非常に厳しいことテストで成り立っています。
UIAA安全規格
UIAAとは国際山岳連盟のことで、クライミングの発展や安全に寄与することを目的に活動を行っている国際団体です。UIAA規格はヘルメットに限らず登山用品やクライミング用品の耐久性などを定めた安全規格でカテゴリーの用品毎にUIAA規格基準が定められています。
テスト方法
- 対貫通性:円錐形ストライカさから人頭模型に取り付けたヘルメットの頭頂部へ落下させ、結果人頭模型にストライカが接触しないかを確認
- 衝撃吸収性:半球形と平面形のストライカ2m、0.5mの高さから頭頂部へ落下させ、結果10kNの衝撃過重であるかを確認
- あごひもの強度:あごひもに500Nの荷重を加え、結果あごひも全体の伸びが25mm以下であるかを確認
- あごひもの有効性:スチールワイヤーの先に取り付けられたフックをヘルメットの縁にかけ上に引っ張られるようにプーリーを介してワイヤーをセットし、重り10kgを175mmの距離落下させ、結果人頭模型から外れないかを確認
- 通気孔の面積:400平方メートル以上
③サイズ調整と頭の形に合っているかをチェック
欧州やアメリカのブランドは、その国の人の頭の形に合わせたモデルが多いので、日本人がヘルメットをかぶった時にフィットするかを確認する必要があります。
またキャップやビーニーなどをかぶった上からヘルメットを装着する場合は後頭部に設けられた調整ダイヤルで簡単に操作できるタイプを選ぶことでフィット感を高めることが容易に行えます。
④通気性が高いベンチレーションの数と大きさを確認
夏山登山の場合はヘルメットをかぶっていることで風がダイレクトに頭に当たらないため汗をかきやすく蒸れやすくなります。このようなことがないように多数のベンチレーションを備えたヘルメットは蒸れにくく快適な装着感があります。
またヘルメット内部にフォーム素材のインナーパッドがあるモデルは吸湿と吸汗によって顔に汗が滴ることを軽減します。このインナーパッドを取り外して洗えるモデルは衛生的です。
⑤ヘルメットの上からヘッドランプの装着がしやすいかを確認
暗い山の中を登山する時には足元の視界が悪いためヘルメットを装着することがおすすめです。この時ヘルメットの上からヘッドランプを装着する必要がありますが、ヘッドランプクリップがあるとヘッドランプをヘルメットの上から装着した時に滑りづらく安心です。ヘルメットをかぶるシーンを想定して必要な機能がついたモデルか確認するようにしましょう。
超軽量!インモールド構造のヘルメットおすすめ5選
ブランド | マムート | グリベル | モンベル | ペツル | カンプ |
イメージ | |||||
モデル名 | Crag Sender Helmet | ステルス | L.W.アルパインヘルメット | メテオ | ストーム |
価格(税込) | ¥13,200 | ¥16,500 | ¥9,790 | ¥15,730 | ¥14,850 |
構造 | インモールド | インモールド | インモールド | インモールド | インモールド |
サイズ | 52-57cm、56-61cm | 55-61cm(ワンサイズ) | S/M(52-57cm)、M/L(57-62cm) | S/M(48-58cm)、M/L(53-61cm) | S(48-56cm)、L(54-62cm) |
重量(S/M) | 199g(52-57)、219g(56-61) | 198g | 225g(S/M) | 225g(S/M)、240g(M/L) | 約230g(S)、約250g(L) |
カラー | チタニウム、ホワイト、ジェード、ブラッドレッド | イエロー、チタングレー、ホワイト | ダークグレー、オレンジ、ターコイズ、ホワイト | ブラック、レッド | ライトブルー、グレー、ホワイト、レッド、グレー/ライム、ライトブルー/フクシア |
規格 | EN 12492規格 | EN 12492規格 UIAA | EN 12492規格 | EN 12492規格 UIAA | EN 12492規格 |
①199g 『マムート Crag Sender Helmet 』
マムート Crag Sender Helmet は、登山やクライミング愛好者にとって大事な頭部を守る耐衝撃性能と軽量性を兼ね備えたおすすめのヘルメットです。このヘルメットは、インモールド構造を採用しており、アウターシェルと内部の発泡ポリスチレン(EPS)フォームが一体化されているため、優れた頭部の保護力とトップクラスの軽量化を実現しています。重量は約199g(サイズS/M)と非常に軽量で、装着しているかどうか分からないほどです。
快適性にも配慮されており、調節可能なヘッドバンドとベンチレーションホールにより、フィット感と通気性が高められています。特に、頭部全体に均等にフィットするデザインが、ヘルメットのずれや圧迫感を最小限に抑え、クライミング中のストレスを軽減します。また、Crag Sender Helmet は、前側面に2か所と後部に1か所のヘッドランプ用のクリップを備えており、夜間の活動にも対応しています。
価格帯は¥13,200とヘルメットとしては中程度ですが、性能と品質を考慮するとコストパフォーマンスに優れたモデルと言えるでしょう。特に、軽量で快適なヘルメットを求める初心者から中級者のクライマーにおすすめのヘルメットです。
ブランド | マムート |
モデル名 | Crag Sender Helmet |
価格(税込) | ¥13,200 |
構造 | インモールド |
サイズ | 52-57cm、56-61cm |
重量(S/M) | 199g(52-57)、219g(56-61) |
カラー | チタニウム、ホワイト、ジェード、ブラッドレッド |
規格 | EN 12492規格 |
②198g 『グリベル ステルス』
グリベル ステルスは、その斬新なデザインと軽量性で注目を集めるインモールド構造のクライミングヘルメットです。グリベルのヘルメットラインアップの中でも、特にスタイリッシュで近未来的な外観が特徴で、一目で他のヘルメットと区別がつきます。
重量は約200gと、非常に軽量であるため、長時間のクライミングや登山でも頭への負担を最小限に抑えます。また、独自の多面体デザインにより、衝撃を効率的に分散し、頭部をしっかりと保護します。
アジア人の丸型で横幅の広い頭に対応したJapanFit規格であり、快適性にも配慮されています。内側にはクッション性の高いパッドが配置されており、長時間の使用でも快適なフィット感を実現しています。さらに、ベンチレーションホールが多く設けられており、汗をかきやすい環境でも頭部を涼しく保つことができます。
価格は¥16,500とやや高めの設定ですが、その軽量性、耐久性、そしてデザイン性を兼ね備えているため、価格に見合う価値があると言えるでしょう。特に、軽量かつスタイリッシュなヘルメットを求めるクライマーや登山者にとって、おすすめのヘルメットになります。
ブランド | グリベル |
モデル名 | ステルス |
価格(税込) | ¥16,500 |
構造 | インモールド |
サイズ | 55-61cm(ワンサイズ) |
重量(S/M) | 198g |
カラー | イエロー、チタングレー、ホワイト |
規格 | EN 12492規格 UIAA |
③225g 『モンベル L.W.アルパインヘルメット 』
モンベルのL.W.アルパインヘルメットは、軽量性と機能性を重視したインモールド構造のヘルメットです。このモデルは、登山やクライミングなどの過酷なアウトドア活動に対応するために設計されており、非常に軽量でありながら低く抑えられた価格が特徴です。重量はわずか225gで、長時間の活動でも頭部への負担を軽減します。
このヘルメットは、アウターシェルと内部の発泡ポリスチレン(EPS)フォームがインモールド成形されており、軽量性と衝撃吸収性に優れています。また、日本人の頭部に合わせて設計されたアジアンフィットデザインに調節可能なダイヤルアジャスターが備わっており、個々の頭部形状に合わせてしっかりとフィットします。
ヘルメットには複数のベンチレーションホールが設けられており、高い通気性を確保しています。4クリップ仕様で、バッテリーが後ろにあるタイプのヘッドライトでも安定して装着することができる他、内側のパッドは取り外し可能で洗濯が可能です。
価格帯は¥9,790と1万円を切る低価格で、性能と品質を考慮すると非常にコストパフォーマンスに優れたヘルメットとなっています。特に、これから山岳域に挑戦しようとしている初心者の方にとって、軽量性と安全性を両立した実用的なヘルメットとしておすすめです。
ブランド | モンベル |
モデル名 | L.W.アルパインヘルメット |
価格(税込) | ¥9,790 |
構造 | インモールド |
サイズ | S/M(52-57cm)、M/L(57-62cm) |
重量(S/M) | 225g(S/M) |
カラー | ダークグレー、オレンジ、ターコイズ、ホワイト |
規格 | EN 12492規格 |
④225g 『ペツル メテオ』
ペツル メテオは、クライミングや登山、スキーなどの多用途に対応する軽量インモールドヘルメットとしてとても人気があるヘルメットです。このモデルは、わずか225gという軽量性を誇り、長時間の活動でも頭部への負担を最小限に抑えます。また、ペツル独自の設計により、優れた保護性能と快適性を兼ね備えています。
このヘルメットは、耐衝撃性能、頭部の保護性能にも優れており、ペツル独自の「 TOP AND SIDE PROTECTION 」によって前部、側部、後部あらゆる方向からの衝撃を考慮して作られています。
さらに、後部にはゴーグルクリップが装備されており、スキー時にも便利に使用できます。ヘッドバンドはグローブを装着していても調整しやすくできており、3シーズンの使用だけでなくスキーツーリングにも使える万能型のヘルメットとなっています。
価格は¥15,730とやや高めに設定されていますが、その多機能性から複数のアウトドアアクティビティに使用できる軽量で高性能なヘルメットという点では十分に価格を上回る価値あるヘルメットと言えるでしょう。山岳域をオールラウンドに活動する方にとって、ペツルメテオは最もおすすめできるヘルメットとなります。
ブランド | ペツル |
モデル名 | メテオ |
価格(税込) | ¥15,730 |
構造 | インモールド |
サイズ | S/M(48-58cm)、M/L(53-61cm) |
重量(S/M) | 225g(S/M)、240g(M/L) |
カラー | ブラック、レッド |
規格 | EN 12492規格 UIAA |
⑤230g 『カンプ ストーム 』
カンプ ストームは、テクニカルなクライミングやマウンテニアリングのために開発されたインモールド構造のヘルメットです。このモデルは、わずか230gという軽量設計と快適な通気性、フィットしやすい快適性によって長時間のアクティビティでも頭部への負担を軽減し、快適なアクティビティを実現してくれるでしょう。
ヘルメットのデザインは非常にコンパクトで、パッキング時にもかさばらず持ち運びが容易です。低く抑えられたシルエットは、激しい動きでもしっかり頭部にフィットし暴れないようになっています。
このヘルメットの特徴として、優れた通気性があります。頭部全体に配置された22ものベンチレーションホールが、ヘルメット内の空気循環を促進し、汗をかきやすい状況でも頭を涼しく保ちます。さらに、調整可能なダイヤル式のフィットシステムが備わっており、個々の頭に合わせてフィットするためより快適に装着できます。
価格は¥14,850で安くはありませんが、他の高性能ヘルメットと比べてもそん色ない性能でコストパフォーマンスに優れています。特に、軽量かつ快適なヘルメットを求めるクライマーや登山者におすすめのヘルメットです。
ブランド | カンプ |
モデル名 | ストーム |
価格(税込) | ¥14,850 |
構造 | インモールド |
サイズ | S(48-56cm)、L(54-62cm) |
重量(S/M) | 約230g(S)、約250g(L) |
カラー | ライトブルー |
規格 | EN 12492規格 |