登山におけるヘルメットは、転倒時に頭を守ることに大きな役割を果たします。岩場や鎖場の有無などに関わらず、全登山者が持つべき必携の登山装備と考えましょう。
200g以下の超軽量モデルから定番の人気メーカーまで、選び方のポイントやおすすめモデルをわかりやすく解説します。これから登山を始める方も、安心して自分にぴったりのヘルメットを選んで安全な登山を楽しみましょう!
登山用ヘルメットが必要な理由

登山にヘルメットが必要な理由は、主に「落石や転倒・滑落による頭部の怪我を防ぐため」です。登山中は、岩場や急斜面での落石、滑落、転倒といった事故が発生しやすく、これらによる頭部外傷は命に関わる重大なリスクとなります。
実際、夏山の事故原因の約4割が「滑落+転倒」であり、ヘルメットを着用することで頭部の怪我を大幅に軽減できるため、初心者を含め全ての登山者にとって重要な装備です。
登山用ヘルメットの"5つのポイント"を抑えた選び方
登山用ヘルメットを選ぶ時には5つのポイントを抑えることで、実際に使用する時にストレスなく安全に登山をすることが可能です。
たかがヘルメットですが、されどヘルメットです。普段は装着していることを忘れるくらいの快適性でありながら、万が一の際にはしっかりと自分の頭を守ってくれる最高の一点を選びましょう。
1. 代表的な2種類+αの構造から選ぶ
登山用ヘルメットには大きく分けて2種類の構造があります。
インモールド構造:軽くて耐衝撃性が高いが、価格も高い
ハードシェル構造:耐久性が高く重量感があるが、価格は手頃
軽量性を重視するならばインモールド構造がおすすめ

軽量な登山用ヘルメットの多くは、インモールド構造と呼ばれる発泡スチロール(EPS)や、発砲ポリプロピレン(EPP)を使用した構造を採用しています。さらに通気性にも長けているため夏の縦走登山や発汗の可能性が高い登山におすすめのモデルです。
衝撃に強く価格が手頃なものならばハードシェル構造がおすすめ

耐衝撃性・耐久性に優れたポリカーボネイトシェルなどを使い、硬くて傷に強い特徴があります。ヘルメットを薄くすることができ更には耐久性が高いヘルメットです。外側に樹脂製のシェルをまとい、内側に発泡剤という構造が一般的で、価格が安く重量は軽いもので230g前後、通常300g前後のスペックです。
インモールドの軽さとハードシェルの耐久性を備えたハイブリットタイプ

EPPとEPS、2つのフォームにABSシェルを組み合わせることで軽さと耐久性を両立させたタイプです。このタイプのヘルメットは主流ではありませんが優れた技術力のブラックダイヤモンドから発売されています。
2. 安全基準を満たしたヘルメットであるか確認する

登山用登山用ヘルメットにはヨーロッパと日本の2種類の安全規格が採用されているモデルがほとんどです。価格が安いモデルにはこの安全規格外であることもあるので必ず確認するようにしましょう。
EN規格-EN12492
ヨーロッパの統一規格をEN規格と言い、その中でもEN12492が山岳用ヘルメットの規格です。この規格は5種類のテストからなり非常に厳しいことテストで成り立っています。
UIAA安全規格
UIAAとは国際山岳連盟のことで、クライミングの発展や安全に寄与することを目的に活動を行っている国際団体です。UIAA規格はヘルメットに限らず登山用品やクライミング用品の耐久性などを定めた安全規格でカテゴリーの用品毎にUIAA規格基準が定められています。
3. サイズ調整と頭の形に合っているかをチェック

欧州やアメリカのブランドは、その国の人の頭の形に合わせたモデルが多いので、日本人がヘルメットをかぶった時にフィットするかを確認する必要があります。
またキャップやビーニーなどをかぶった上からヘルメットを装着する場合は後頭部に設けられた調整ダイヤルで簡単に操作できるタイプを選ぶことでフィット感を高めることが容易に行えます。
4. 通気性が高いベンチレーションの数と大きさを確認

夏山登山の場合はヘルメットをかぶっていることで風がダイレクトに頭に当たらないため汗をかきやすく蒸れやすくなります。このようなことがないように多数のベンチレーションを備えたヘルメットは蒸れにくく快適な装着感があります。
またヘルメット内部にフォーム素材のインナーパッドがあるモデルは吸湿と吸汗によって顔に汗が滴ることを軽減します。このインナーパッドを取り外して洗えるモデルは衛生的です。
5. ヘルメットの上からヘッドランプの装着がしやすいかを確認

暗い山の中を登山する時には足元の視界が悪いためヘルメットを装着することがおすすめです。この時ヘルメットの上からヘッドランプを装着する必要がありますが、ヘッドランプクリップがあるとヘッドランプをヘルメットの上から装着した時に滑りづらく安心です。ヘルメットをかぶるシーンを想定して必要な機能がついたモデルか確認するようにしましょう。
登山向けにおすすめのヘルメット
登山向けにおすすめのヘルメットをインモールド構造とハードシェル構造でそれぞれおすすめのモデルを紹介します。紹介するヘルメットは全て登山用ギアに力を入れているだけでなく高い技術力と信頼性の高さが特徴のブランドのヘルメットです。いずれのヘルメットもヨーロッパ規格、国際山岳連盟規格に準じたモデルです。
おすすめメーカーの200g以下超軽量ヘルメット4選!
インモールド構造の特徴の一つである軽量性に特徴を持たせた4種類のヘルメットを紹介します。全て200g以下で登山装備の軽量化に力を入れている方におすすめのモデルです。
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ブランド | ペツル | ブラックダイヤモンド | マムート | グリベル |
イメージ | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
モデル名 | シロッコ | ベイパー | Crag Sender Helmet | ステルス |
価格(税込) | ¥19,800 | ¥22,990 | ¥15,400 | ¥16,500 |
構造 | ハイブリッド | ハイブリッド | インモールド | インモールド |
重量(S/M) | 160g | 186g | 199g | 198g |
規格 | EN 12492規格 UIAA | EN 12492規格 UIAA | EN 12492規格 | EN 12492規格 UIAA |
~最も軽量でフィット感に優れた~『ペツル シロッコ』

後頭部を広くカバーする形状でしっかりと頭を保護するデザインです。前頭部から側面、後頭部にかけて大きな通気孔を設け、汗をかきづらく通気性に優れています。
EPPフォーム (シェル)、クラウン (ポリカーボネート)、ライナー (EPSフォーム)の3種類のハイブリッド構造で、軽量に作られています。
ヘッドランプ取り付け用のクリップは前に2箇所後ろに1箇所ついています。
~高いプロテクションが魅力~ 『ブラックダイヤモンド ベイパー』

ブラックダイヤモンドの中で最も軽く人気のベイパーが2023年にリニューアルし、さらに軽くて強いヘルメットに生まれ変わりました。フォームをEPPに変更することで、軽く弾性に富んでおり、より衝撃に強くなりました。また、ALUULAで補強することでより厳しい強度規格にも対応しています。
あごひもは調整可能でフィット感の向上も図られており、ブラックダイヤモンドらしい安心感のあるヘルメットに仕上がっています。
ヘッドランプ取り付け用のクリップは前に2箇所取り付けられており、取り外しが可能です。
~高い通気性と薄型設計を採用~ 『マムート Crag Sender Helmet』

特殊な形状を採用し頭部の広い範囲をカバーするデザインで、さらに薄型でかぶりやすい特徴があります。通気性にも優れ両サイドから後頭部にかけての大型のベンチレーターがヘルメットのデザインを特徴をづけています。
アウターシェルとEPSフォームのハイブリッド構造で、重要な部分にケブラーの補強を施した構造で、軽量でありながらもヘルメットトップクラスの保護力を発揮します。
フィット感も抜群によく、調整可能なあごひもと後部のダイヤルで頭の大きさに合わせて細かな調整も可能です。ヘッドランプ取り付け用のホルダーは前後に伸縮性のループがあり容易に取り付けが可能です。
~コストパフォーマンスに優れた~ 『グリベル ステルス』

グリベルのヘルメットはジャパンフィットを採用し、西洋人に比べて丸い形状の日本人の頭に合うように、内側のヘルメットの幅と深さを調整しています。
ポリカーボンのシェルとポリエチレンフォームのハイブリッド構造で、ワンサイズ展開で幅広い頭にフィットするように作られています。ポリスチレンパッドは20mmの厚みがあり、高い耐衝撃性能を誇っています。
ヘッドランプ取り付け用のホルダーは前に2箇所、後ろに2箇所備わっており、ヘルメットにしっかりと固定します。
初めてヘルメットを購入する登山者に人気のモデル
価格が安く買い求めやすいモデルから、スキーツーリングにも使える汎用性が高いモデルと様々な種類のヘルメットがあります。人気モデルからレスキュー用品まで8つの人気おすすめヘルメットを紹介します。
※横スクロールで表がスクロールできます。
ブランド | モンベル | ペツル | ブラックダイヤモンド | グリベル | マムート | メトリウス | エーデルリット | ペツル |
モデル名 | L.W.アルパインヘルメット | メテオ | ハーフドーム | サラマンダー2.0 | スカイウォーカー 3.0 | ハードトップ ヘルメット | サラテ ライト | ボレオ |
イメージ | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | |
価格(税込) | ¥9,790 | ¥14,960 | ¥9,240 | ¥9,460 | ¥9,350 | ¥10,010 | ¥20,680 | ¥10,780 |
構造 | インモールド | インモールド | ハードシェル | ハードシェル | ハイブリッド | ハイブリッド | ハイブリッド | ハイブリット |
重量(S/M) | 225g | 225g | 260g | 360g | 330g | 225g | 187g | 300g |
規格 | EN 12492規格 | EN 12492規格 UIAA | EN 12492規格 | EN 12492規格 | EN 12492規格 | EN 12492規格 | EN 12492規格 | EN 12492規格 UIAA |
~軽量で安価に購入が可能~『モンベル L.W.アルパインヘルメット』

モンベルのヘルメットの中で最も軽量なモデルです。日本人の頭の形にフィットするようにデザインされた2サイズ展開で、価格も安く初心者にもおすすめのモデルです。ベンチレーションの数は他のモデルと比べると少ないため肌寒い季節にもおすすめのヘルメットです。
~スキーツーリングにも使用可能~『ペツル メテオ』

軽量で薄型設計のヘルメットです。スキーツーリング用として認証を受けた汎用性にも優れたモデルで、ペツル独自の独自基準によるプロテクションに優れたヘルメットです。大きな通気口を側面と前面に配置し春から夏に向けての暑い季節でも快適に登山を楽しむことができます。
~手始めの購入におすすめ~ 『ブラックダイヤモンド ハーフドーム』

紹介するヘルメットの中では最も価格が安く機能性にも優れたヘルメットです。片手で操作できるダイヤルやヘッドランプクリップを備え使いやすくシンプルなデザインに仕上がっています。
~デザイン性とコストパフォマンスに優れた~ 『グリベル サラマンダー2.0』

ジャパンフィッティングを採用した大きな頭の人にもフィットするデザインに仕上げたヘルメットです。自分の頭の形に合うヘルメットがないと悩んでいる方の救世主のような存在で人気があります。
~軽さと安心、フィット感抜群~『マムート スカイウォーカー 3.0』

耐久性に優れたハードシェルとEPP・EPSフォームのハイブリッド構造で高い保護性能を実現。頭部全体をしっかり守りつつ、通気性やフィット感も抜群。調整システムは収納可能で持ち運びも便利、環境配慮素材も採用した安心の一台です。
~堅牢な安心、2025年の新定番~ 『メトリウス ハードトップ ヘルメット』

耐久性に優れたABS樹脂製ハードシェルとEPSフォームを組み合わせた構造で、落石や衝撃からしっかり頭部を守ります。安全基準(EN12492・UIAA106)を満たし、コストパフォーマンスも抜群。長時間の着用でも安定したフィット感が得られ、初めての登山にもおすすめです。
~完成された軽量ハイブリットヘルメット~『エーデルリッド サラテ ライト』
ドイツのクライミングメーカーで、全ての製品をドイツ国内で製造しており品質の高さに定評のあるエーデルリッドの軽量ハイブリッドヘルメットになります。発泡ポリプロピレン製のアウターシェルにABS製のハードシェルがより堅牢で高い耐衝撃性を実現しています。それでいて187gという軽量な設計であり、まさに完成された登山ヘルメットといったところです。
様々なアクティビティで活用することができる耐久性に優れたヘルメットです。ペツルのヘルメットの中では価格が安くコストパフォーマンスに優れていることから多くの登山者に人気のあるモデルです。ペツルの独自基準に基づいた構造、ヘッドランプを取り付けるための4つのクリップなど高い機能性をもで備えたモデルです。