肌寒い時期の登山。防寒用にフリースとダウンのどっちを選べばいいか、悩んでしまいませんか。
寒いからと両方着こむ方もいれば、ざぶざぶ洗えて手軽だからとフリースしか使わなかったり、軽くて温かいからとダウンしか使わなかったりなどさまざまです。
また、どちらも寒い時期のマストアイテムだけあって、どう重ね着をすればいいのか、レイヤリングの順番も気になりますよね。
フリースとダウンは、どちらもポピュラーな防寒アイテムですが、機能や特徴が異なるため、登山では使い分けをしています。
本記事ではフリース、ダウンそれぞれの特徴をメリットとデメリットに分けて解説した上で両者を比較し、どう使い分けたらいいのかを紹介しています。
また、肌寒い時期の重ね着の順番やコツについてもお伝えしていますので、フリースやダウンを登山でどう着ればいいのか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
フリースのメリットとデメリット
フリースの特徴を、メリットとデメリットに分けて解説します。
フリースのメリット | 吸湿速乾性、ストレッチ性が高い
フリースはダウンより濡れに強く、汗を吸っても放散するため、行動中に着続けていられます。また、ダウンより耐久性もあるため、洗濯機でざぶざぶ洗えて、干せば短時間で乾くのが特徴です。
また、登山用のフリースはストレッチ性があるため動きやすく、特に薄手のフリースなら通気性もあるため、激しいアクティビティでもストレスなく着用できます。
フリースのデメリット | 保温性、コンパクト性が低い
フリースは防寒着ではありますが、ダウンに比べてると保温性は劣ります。特に、薄手のフリースは通気性があるので、風が強いときなどはウィンドブレーカーなどのアウターが必要です。
また、フリースは軽量ではありますが、ダウンに比べてかさばるのがデメリットで、収納時のコンパクト性に欠けます。
ダウンのメリットとデメリット
ダウンの特徴を、メリットとデメリットに分けて解説します。
ダウンのメリット | 保温性、軽量性、コンパクト性が高い
防寒アイテムに不可欠な保温力。ダウンはその保温力が最も高いウェアです。ダウンの内部には空気の層があるため熱が逃げず、なおかつ外の冷気も入ってこないため、いつまでも温かさを保持できます。
また、空気の層の中には羽毛が入っているため、暖かい上に非常に軽く、小さくコンパクトにまとまります。装備の軽量化が重視される登山では、軽量性とコンパクト性を備えた保温着として欠かすことのできないアイテムです。
ダウンのデメリット | 濡れに弱い、表面がキズ付きやすい
ダウンの最大の弱点は、濡れに弱いことです。羽毛が濡れてしまうと肝心の保温力が落ちてしまい、乾くまで使うことができません。しかも、一度濡れてしまうと、フリースとは正反対に、乾くまで非常に時間がかかります。
登山での濡れとは雨や雪だけではなく、テントの結露や汗も含まれます。ダウンは保温力が高いため、行動中に着続けていると汗をかき、汗でダウンが湿ってしまうと汗冷えの原因となってしまいます。
そのため登山では、ダウンは行動中ではなく休憩時に使うのが基本です。
また、行動中に着ないダウンを腰に巻いていると、表面を木の枝などに引っ掛けてしまったり、滑って転んだ時に破けたりしやすいです。中の羽毛が出てしまえば、せっかくの保温力が落ちてしまいます。
ダウンは軽量コンパクトにまとまるので、使わない時は必ずザックに収納しておくようにしましょう。
フリースとダウンの機能比較一覧
フリースとダウンそれぞれのメリットとデメリットが一目でわかるよう、機能の違いを一覧表にまとめました。
フリース | ダウン | |
保温性 | 〇 | ◎ |
防風性 | △ | 〇 |
吸湿・吸水性 | ◎ | △ |
通気性 | ◎ | △ |
速乾性 | ◎ | △ |
軽量性 | △ | ◎ |
コンパクト性 | △ | ◎ |
ストレッチ性 | ◎ | △ |
上の表からもわかるように、フリースとダウンのどちらにも◎が付いている機能はありません。どちらかが◎だと、もう片方は必ず△(または〇)です。
つまり、フリースとダウンはどちらも保温着ではあるものの(保温力はダウンの方が高いです)、保温以外の機能に関しては、両者正反対といえるのです。
こうした機能性の違いを知っておくと、それぞれどういったシーンで活躍するかがわかってきます。
フリースは行動着、ダウンは休憩時の保温着
フリースとダウンそれぞれの特徴を踏まえると、登山でのフリースとダウンの使い分けは次のようになります。
- フリース:歩いている時に着用(行動着)
- ダウン:止まっている時に着用(休憩時の保温着)
フリース | 歩いている時に着用(行動着)
登山でのフリースは、肌寒い時期の行動着として着用します。
フリースは適度な保温性を備えながら吸湿速乾性や通気性があるため、行動中の熱を外へ逃してくれます。また、雨や汗で濡れてしまってもポリエステルでできているため乾きやすく、ある程度の保温力を保持できます。
さらに、ストレッチ性があるため動きやすく、汚れてもメンテナンスに気を遣わずに洗濯でガンガン洗えるのも魅力です。
フリースは濡れに強く、手軽に着用できて扱いやすいため、保温性のある行動着としては使い勝手が良いといえます。
▼フリース着用時の注意点
- 通気性があるため風を通します。風が強いときはウィンドブレーカーなどのアウターを着用することで保温力が上がります。
- フリースはダウンより保温性が低いです。登山をする時期や山の高さによっては、中厚手や厚手のフリースを選ぶといいでしょう。
- 行動中に体温が上がってフリースを脱ぐ場合、ダウンよりかさばるため、ザックへの収納に手間取ることがあります。
ダウン | 止まっている時に着用(休憩時の保温着)
ダウンは濡れに弱いため、汗や雨などで湿ってしまうと、保温力が急速に落ちてしまいます。特にダウンを着たまま登り続けているとオーバーヒートしてしまい、汗冷えを招く原因になります。
ダウンはデリケートなため、枝にちょっと引っかかったり転んだりした拍子に破けてしまうことがあります。また、メンテナンスが面倒で、汚れても洗濯機で洗うことができません。
そのためダウンは、行動中の着用には向きません。登山におけるダウンは、山ごはんの時やテントでの停滞時、山頂で景色を眺めている時など、止まっている時の体を温める保温着として使います。歩行時と違ってじっとしている時は寒さを感じやすく、サッと羽織れるダウンがあるととても重宝します。
ダウンは、使っていない時は軽量でコンパクトにまとまるため、行動中はザックに収納しておくのが基本です。秋冬の登山なら、寒さを感じた時にすぐに着用できるよう、取り出しやすい位置に入れておくといいでしょう。
▼ダウン着用時の注意点
- ダウンは濡れに弱いため、着用時に雨が降ってきたらレインウェアなどの防水シェルを着て、できるだけダウンを濡らさないようにします。
- フリースを着て行動し、止まった時に寒さを感じたらダウンを羽織るといった着方をします。ダウンで保温力を補う感じです。
- 登山をする時期や山の高さによっては、中厚手や厚手のダウンを選ぶといいでしょう。
レイヤリング(重ね着)の順番とフリース、ダウンのシーン別使い分けのポイント
秋から冬の登山では、発汗を抑えながらしっかりと保温ができるレイヤリング(重ね着)をすることが大切です。フリースやダウンはどういった順番で着用すればいいのか、レイヤリングにおけるフリースとダウンの位置づけを解説し、シーン別の使い分け方を紹介します。
秋冬登山の基本のレイヤリング
寒い時期の基本のレイヤリングは、次のような順番になっています。
- 【ベースレイヤー】直接肌に触れるウェア
- 【ミドルレイヤー】ベースレイヤーとアウターレイヤーの間に着る中間着
- 【アウターレイヤー】いちばん外側に着るウェア
各レイヤーには、それぞれ次のような役割があります。
- 【ベースレイヤー】肌をドライに保つ
- 【ミドルレイヤー】体が湿った状態を取り除き、保温をする
- 【アウターレイヤー】雨や風から体を守り、冷えを防ぐ
ベースレイヤーは肌に直接触れるアンダーウェアや速乾性のTシャツなどです。アウターレイヤーは、風を防ぐウィンドブレーカー、雨を防ぐレインウェア、雪を防ぐハードシェルなど、個別の機能に対応したアイテムが揃っています。
そして、肌寒い時期に欠かせないのが、ベースレイヤーとアウターレイヤーの間に着用して体を保温するミドルレイヤーです。ミドルレイヤーはただ体を温めるだけでなく、熱や汗を外へ逃して蒸れを起こさないようにする重量な役割を果たしています。
フリースとダウンはミドルレイヤー
ミドルレイヤーは種類が多く、時期や環境などシーンによって選ばれるアイテムが異なります。代表的なミドルレイヤーには、次の5種類があります。
- ダウンインサレーション
- 化繊インサレーション
- アクティブインサレーション(化繊)
- フリース
- 山シャツ
本記事で取り上げているフリースとダウンは、ミドルレイヤーに位置付けられています。
フリースはミドルレイヤーの定番
ミドルレイヤーは近年、進化が著しく、様々な素材が登場していますが、保温力があって吸湿速乾性、通気性に優れ、ストレッチ性に富んで動きやすいフリースは、ミドルレイヤーの定番です。
そして、近年注目されているのが、アクティブインサレーションです。アクティブインサレーションは化繊の中綿が入ったジャケットで、通気性と吸湿速乾性に優れているため行動着として汗に強く、表面がつるつるしていて上からアウターを着やすいというメリットがあります。
フリースは秋冬日帰り登山の行動着
フリースは保温力と通気性を備えているため、秋冬の中低山登山の行動着として活躍します。ストレッチ性があって動きやすいため、クライミングなど動きの大きなアクティビティにもおすすめです。
特にテクニカルと名がつくようなモデルは、動きやすくて乾きも速いためミドルレイヤーとして最適です。
薄手タイプの方が幅広く使えますが、寒がりのかたや冬は中厚手タイプでもいいでしょう。
ダウンは厳冬期の高所登山など汗をかかない登山で
ダウンは最も保温力があり、軽量性に優れていますが、濡れると保温性が失われるため、汗をかく行動中の着用はおすすめできません。
しかし、寒くて汗をかかない登山であれば着用できます。例えば、寒さの厳しい厳冬期の高所登山では、軽くて暖かいダウンは行動着として大活躍します。上から防雪用アウターとしてハードシェルを着たり、軽量化のためにハードシェルと一体型のダウンジャケットを着たりして積極的に活用します。
ただし、標高差のある雪山登山で、防寒対策が必要だが汗をかく可能性があるなら、ダウンより化繊インサレーションがおすすめです。ダウンより軽量性、保温性が低いですが、濡れに強く、メンテナンスが簡単です。
汗をかかないのであれば、ダウンはゆっくりと歩く冬の日帰り登山や標高差の少ない山歩きにも使えます。
それ以外は、秋冬の日帰り登山や縦走登山、山小屋、テント泊での休憩時に着用する保温着として使います。行動中はザックにしまっておきましょう。
ダウンは、フィルパワーや封入されているダウンの質量などによって保温力が異なり、山行時期や山の標高、どういったシーンで使うのかなどによって選びます。詳しくはこちら↓をご覧ください。
フリース、ダウンは両方必要
これから登山の秋冬ウェアを購入するなら、まずは基本的な保温着であるフリースとダウン両方を用意するといいでしょう。
登山で利用することがほとんどなかったとしても、キャンプなどのアウトドアやタウンユースとして使えるので無駄にはなりません。
本記事を参考にフリースとダウンの特性を理解した上で、山行時期や山の標高、山域、気温などによって使い分けてみてください。