標高2000m以上の登山における春から夏の服装、レイヤリングを紹介します。標高が高くなる登山の服装を考える際に要注意なのが、行動中に汗をかかないことです。2000m標高を上げると約15°気温が低くなるので、登山口が暖かくとも山の上は風が強く体感温度が低くなることが予想されます。防寒対策に注意を払った服装とレイヤリングを心がけましょう。この記事では春~夏山登山の服装とおすすめのレイヤリングを紹介します。
標高2000m以上の山で考えるべき服装
100m標高を上げると0.6度気温が下がります。また風速1m/sで体感温度が1度下がります。行く山の標高と風の強さを事前に確認し、頂上付近の体感温度がどれくらいになるか確認しておきましょう。
例えば八ケ岳の赤岳(2,899m)に出かけると仮定した場合、都心で最高気温25°、最低気温19°だった場合、頂上付近では、最高気温8°、最低気温2°となります。風の強さが3m/sであれば、そこから更に-3°低く見積もる必要があります。露出している肌に汗をかいていれば、風が当たることで、そこから気化熱によって急激に体の熱が奪われます。寒くなることで体力が奪われることを念頭において、考えられた服装とレイヤリングで登山をするよう心がけましょう。
春から夏山登山の服装とレイヤリング
春から夏山登山に必要な服装を以下の表にポイントを踏まえてまとめました。汗をかいて冷たい風に当たればとたんにリスクとなる標高の高い登山では防寒対策と、汗をかかないレイヤリングが重要となります。
服装 | ポイント |
---|---|
ベースレイヤー | 汗離れがよく、通気性と程よい速乾性が両立 |
ミドルレイヤー | 軽量で透湿性に優れた薄手のフリース |
アウターレイヤー | 軽量なウィンドブレーカー、寒ければレインジャケットを活用 |
防寒着 | 軽量性と保温性に優れたダウンや化繊のジャケット |
レインウェア | 軽量で透湿性に優れ外気を取り入れやすいレインウェア |
パンツ | 薄手で通気性に優れたパンツやショーツ、寒ければレインパンツを活用 |
ソックス | クッション性と通気性に優れた薄手タイプ |
グローブ | 手の保護用グローブ、保温グローブ、レイングローブの3種類の携行が望ましい |
ベースレイヤーのポイントとおすすめの一着
春から夏山登山では汗をかくことを想定に入れてベースレイヤーを選びましょう。通気性があるベースレイヤーは、行動を落とすだけで体を涼しくすることができます。
また素早い速乾性があると気化熱によって体温が素早く奪われる可能性が高まります。トレイルランニングなどのハードなアクティビティでは素晴らしい機能ですが、ゆっくりと歩く登山では、ゆっくりと乾くメリノウール製のベースレイヤーがおすすめです。
春~夏山登山におすすめのベースレイヤー
スマートウールのメリノ150は、程よい生地厚と、メリノウールの混紡比率が、夏山登山の汗の乾きや通気性にちょうど良いベースレイヤーです。日焼けと肌寒さが気になるようであれば、アームカバーの着用をおすすめします。
メリノウールベースレイヤーのおすすめ、化繊素材のベースレイヤーとの違いを紹介しています。
ミドルレイヤーのポイントとおすすめの一着
冬山登山や初春の寒さが残る登山では、保温する為のウエアとしてミドルレイヤーは重要な位置づけですが、夏山ともなると暖かい場所が多いので、休憩時や登山開始タイミングや稜線に出て風が強く寒いときに着用することとなります。ザックの中にしまっておく時間が多いことを考えると、できるだけ軽量性に優れ、着用中汗をかいた際も蒸れを外に排出する透湿性に優れたミドルレイヤーがおすすめです。
春~夏山登山におすすめのミドルレイヤー
通気性に優れたタイプのミドルレイヤーは軽量なアイテムが多く、パタゴニアのR1をはじめとした1年を通して使いやすいアイテムが多いです。
アウターレイヤーのポイントとおすすめの一着
標高2000m以上の山では、標高を上げると風にたたかれることが多くなり、樹林帯に入れば風が止んで蒸し暑くなる。このように体感温度差が激しい登山となることを想定しましょう。
コンパクトに持ち歩けるウインドブレーカーであれば、このような体感温度差があってもザックの側面ポケットに入れておけば素早く着脱ができるし、ジッパーの開閉で外気温も容易に取り入れられます。
春~夏山登山におすすめのアウターレイヤー
トレイルランニングにおすすめの超軽量なウィンドブレーカーは夏山登山のウィンドブレーカーとしても最適です。軽量といえどもブランド毎で異なる特徴をチェックしてみてください。
防寒着のポイントとおすすめの一着
夏山登山における防寒着は、テント泊や小屋泊をする場合に、体を冷やさないように着用することを目的とした防寒着となります。こう考えると移動中はずっとザックの中にしまっておくこととなるので、できるだけ軽量かつコンパクトで、保温性にも優れたダウンや化繊ジャケットがおすすめです。
春~夏山登山におすすめの防寒着
軽量ダウンジャケット徹底比較の記事では日本で手に入れることができるダウンジャケットの中で最も軽量なアイテムを9つピックアップしています。ユニクロのダウンとの比較もしていますので、ぜひチェックしてみてください。
レインウェアのポイントとおすすめの一着
雨が降れば否応なしに着用しなければいけなくなるのがレインウェアです。樹林帯で標高を上げている最中に雨が降ればレインウェアを着用することとなるでしょう。
このようなシーンでは汗をかく可能性が高まります。汗を極力かかないようにレインウェア内にたまった熱を放出する透湿性、外気温を取り入れやすいジッパー構造などをチェックするようにしましょう。
また雨が降らない場合はザックの中にしまっておくこととなるので、軽量性に優れたレインウェアがおすすめです。
春~夏山登山におすすめのレインウェア
Bitihorn Dri1 Jacketは僅か220gと軽量ながらもベンチレーションが脇についており、素早く蒸れを逃がすことができるレインジャケットです。裏地にはプリント加工が施されているため、ベタつかずさらりとした肌触りが特徴です。
モンベルのレインジャケットは、軽量ジャケット且つコストパフォーマンスに優れています。しかしながらデメリットもあり、それらを詳しく紹介しています。
パンツのポイントとおすすめの一着
ロングのトレッキングパンツであれば、行動を妨げないストレッチ性や、汗をかいた時の透湿性に優れたパンツがおすすめです。
暑いことが予想される夏山登山ではショーツを取り入れる事も一考です。この場合は肌が露出することとなるので虫除け、岩や木などの擦れの可能性を踏まえる必要があります。
春~夏山登山におすすめのパンツ
ザノースフェイスのアルパインライトパンツは、足上げがしやすいストレッチを備え、程よいシルエットで見た目もよく、中にタイツを履いてもストレッチ性によって窮屈さを感じない薄手タイプのトレッキングパンツです。
アークテリクスのパリセードパンツは、細かな改善を重ねて年々進化し続ける、サラサラした肌触りと程よいストレッチを兼ね備えた、撥水力の高いトレッキングパンツです。バックル、ポケット、立体裁断、ポケットによるベンチレーションなど細かな機能を備えたトレッキングパンツです。
ソックスのポイントとおすすめの一足
汗をかくことが多い足は吸湿速乾性があることで蒸れによる足のトラブルを避けることができます。また一泊以上の登山ともなると皮脂の嫌な臭いが気になるのもソックスです。
また2000m以上の登山ともなると岩場やガレ場などを歩く機会も多くなることでしょう。これらを踏まえると程よいクッション性と通気性に優れた中〜薄手タイプのメリノウール製ソックスがおすすめです。
春~夏山登山におすすめのソックス
ブリッジデイルのハイクは、ウールフュージョンテクノロジーというウールにポリプロピレンやポリエステルといったマイクロファイバーを巻き付ける技術を採用しており、保温が必要なときに暖かく、暑くて湿気が多くなると巻き付けたマイクロファイバーが機能して快適さを保つ優れた機能を備えています。
Smartwoolのクラシックシリーズは好みの厚みのソックスを選ぶことができる、メリノウールソックスです。ライトクッションは下から3番めの厚さで、足裏全体にクッションを装備しているので、様々な路面から足裏を保護するソックスです。
以下の記事では、上で紹介したおすすめのソックス以外にも、より薄手タイプのソックスや、耐久性に優れたメリノウールソックスなど、おすすめの登山用ソックスを紹介しています。
グローブのポイントとおすすめのアイテム
夏山登山で考えなくてはいけないのが
- 鎖場などを歩く際の手の保護
- 稜線などを歩いた際の手の保温
- 雨が降った際のレイングローブ
となります。
全てを兼ね備えたグローブを探すというのは難しく複数のグローブを持ち歩くこととなります。
手の保護用グローブは主に標高を上げ下げする登山中に着用します。稜線に出て横移動が多くなるシーンでは保温グローブを着用し、雨が降った時にはこれらのグローブの上からレイングローブをするというように使い分けることをおすすめします。
またもしもグローブが濡れてしまったら手が冷えてしまうので、予備のグローブも持ち歩くようにしましょう。
春~夏山登山におすすめのグローブ
テムレスの11craftsmanはアラミド繊維とステンレスワイヤー糸を使用した非常に丈夫で耐久性に優れたグローブです。鎖場、棘のある枝なども遠慮なく掴むことができます。
ブラックダイヤモンドのスクリーンタップは、薄手でしなやかで、生地そのものがスマホ操作が可能です。ライトウェイト、ミッドウェイト、ヘビーウェイトと生地の厚みと重量違いで3種類の展開があるので、標高と場所と季節によって厚みを変えると良いでしょう。ライトウェイトはインナーグローブとしても使い心地が良いです。
テムレスの03advanceは、軽量性に優れ価格も安く、カフ付きモデルは手首からの雨の侵入を防ぎ、高所における強い雨にも安心して使用できます。
グローブとのレイヤリング方法や、おすすめで紹介した保温グローブの紹介をしています。