登山パンツって、種類が多すぎて選べない。そう思っていませんか?
でも実は、迷うポイントはたった2つです。「いつ登るか(季節)」と「どんな天気で登るか」。この2つを決めるだけで、選ぶべきパンツはほぼ1本に絞れます。
- 春から秋の登山なら、伸びるナイロン素材の「トレッキングパンツ」を1本。 これが主役です
- 雨が降ったら、その上から「レインパンツ」を重ねる。 主役を着替えるのではなく、上から履くのがポイント
- 冬は保温タイツが土台。初冬の中低山なら上に「ソフトシェルパンツ」、雪山や高山なら「ハードシェルパンツ」
- 休憩中や山小屋で寒いときは、「ダウンパンツ」や「化繊中綿パンツ」をプラス1枚
つまり、登山パンツは1本で全部をまかなうものではなく、「基本の1本+足すもの」で組み立てるのが正解です。
この記事では、その組み立て方を季節とシーンごとに整理していきます。そのうえで、用途別に10本のおすすめモデルを紹介します。
登山専用パンツのメリット・デメリット

「そもそも、わざわざ登山用を買う必要ある?」という疑問から片づけておきましょう。
メリット:疲れ方が変わる
いちばん大きいのは「動きやすさ」です。 登山は、思っている以上に脚を大きく上げます。段差をまたぐ、岩に足をかける、そういう動きが何百回と続く。伸びない生地だと、そのたびに生地が突っ張って、じわじわ体力を削られます。
次に「乾きの速さ」。登山は汗をかきます。綿のパンツは汗を吸って重くなり、しかもなかなか乾きません。濡れた生地が肌に張りつくと、風が吹いたときに一気に体が冷えます。 夏でも標高が上がれば気温はぐっと下がるので、これは地味に危険です。
そして「肌を守る力」。登山道は、想像よりずっと草木が張り出しています。すり傷、虫刺され、それに日焼け。生地1枚あるだけで、下山後の疲労感がかなり違います。
デメリット:値段
登山用パンツは高いです。 ちゃんとしたものは1万円前後、ハードシェルパンツになると数万円します。普段着のパンツと比べたら、ためらう金額なのは間違いありません。
なので、「まずは春夏用のトレッキングパンツを1本だけ」買うのがおすすめです。 最初から全部そろえる必要はありません。詳しく説明していきます。
失敗しない登山パンツ選び 3つのポイント
スペック表を全部見比べる必要はありません。見るべきは、この3つだけです。
- 動きやすさ(ストレッチ性)
- 乾きの速さ(速乾性)
- すり傷・日差しから守る力(生地の強さとUV対策)
順番に見ていきます。
①動きやすさ(ストレッチ性)

4WAYストレッチというのは、タテにもヨコにも伸びる生地のこと。 縦だけ伸びる生地よりも、しゃがんだり脚を上げたりする動きに追従してくれます。
生地の表示で言うと、「ポリウレタン」が数%混ざっているものが伸びる生地です。ナイロン94%+ポリウレタン6%、といった表記を探してみてください。
もうひとつ、試着できるなら、その場でしゃがんでみるのが確実です。 膝とお尻が突っ張らないか。これだけで判断できます。
②乾きの速さ(速乾性)

綿(コットン)は避ける。 これだけ覚えておけば大丈夫です。
登山用のパンツはほぼすべてナイロンかポリエステルの化学繊維でできています。どちらも水を吸いにくく、乾きが早い素材です。
「はっ水加工」がしてあるとさらに安心。 小雨や朝露くらいなら、生地の表面で弾いてくれます。ただしはっ水加工は防水ではありません。 本降りの雨には勝てないので、そこはレインパンツの出番になります。
③すり傷・日差しから守る力

ここは「生地の厚さ」で決まります。 生地の厚さは「デニール(D)」という単位で表され、数字が大きいほど厚くて丈夫です。
- 50デニール前後……軽くて涼しい。整備された登山道向き
- 100デニール以上……ゴツゴツした岩場や、藪をかき分ける道でも安心
夏場は「UPF」という日焼け止めの指標も見てみてください。UPF40+と書いてあれば、紫外線をしっかりカットしてくれます。
迷ったら「50~80デニールくらいの、伸びるナイロン」。 これが最も外れの少ない選択です。
4つのタイプを1枚の表で整理
登山パンツの素材は、大きく4つ(+フリース)に分けられます。それぞれ得意なことがまったく違うので、表で一気に整理します。
素材タイプ | 得意なこと | 苦手なこと | 主な出番 | 価格の目安 |
ナイロン系(ストレッチ) | 動きやすさ・乾きの速さ・軽さ | 本降りの雨、真冬の寒さ | 春~秋の行動着(通年の主力) | 6,000~15,000円 |
ソフトシェル | 風を防ぐ・ほどよい保温・伸びる | 本降りの雨 | 晩秋~冬の行動着 | 10,000~20,000円 |
ハードシェル | 雨・雪・風を完全に防ぐ | 蒸れやすい・重い・高価 | 雨天/雪山での最終防衛 | 15,000~60,000円 |
化繊中綿・ダウン | とにかく暖かい・軽く畳める | 行動中は暑い/ダウンは濡れに弱い | 休憩中・山小屋・厳冬期 | 10,000~20,000円 |
フリース | 肌ざわりのよさ・軽い保温・手頃な価格 | 風を通す・かさばる | 山小屋やテントでのくつろぎ着 | 5,000~15,000円 |
ナイロン系(通年の主力)

登山パンツと言われて最初に思い浮かべるのが、このタイプです。伸びるナイロン生地に、はっ水加工がしてあるもの。
軽くて、動きやすくて、乾くのが早い。 春から秋までの登山なら、これ1本で足ります。まず買うべき「基本の1本」です。
ソフトシェル(春秋・冬の行動着)

ソフトシェルというのは、「伸びる生地でできた防風ウェア」のこと。 見た目はふつうのパンツに近いのに、風をしっかり止めてくれます。
冬用として売られているものは、裏側がうっすら起毛していることが多いです。 これは保温というより、風を止めながら汗を逃がすための作り。保温タイツと合わせて、冬の行動着になります。雨には強くありませんが、雪がちらつく程度なら弾いてくれるのがありがたいところ。
ハードシェル(雨・雪の最終防衛)

ハードシェルは、雨と雪と風を完全にシャットアウトするための「殻」です。 ゴアテックスに代表される防水透湿素材(水は通さないのに、汗の蒸気は逃がす生地)でできています。
同じカテゴリに見えて、履き方が2つに分かれます。 レインパンツは、雨が降ってきたときに行動着の上から重ねて履くもの。雪山用のハードシェルパンツは、保温タイツの上に直接履いて、朝からそれ自体を行動着として着るものです。トレッキングパンツの上に重ねて履くわけではありません。
化繊中綿・ダウン(休憩と厳冬期)

歩いているときではなく、止まっているときのための装備です。
- ダウン……いちばん暖かくて、いちばん小さく畳める。ただし濡れると保温力が落ちる
- 化繊中綿……ダウンより少し重いけれど、濡れても暖かさが残る。汗をかきやすい人向き
季節で選ぶ|夏・春秋・冬でこう変わるおすすめパンツ
夏|涼しさと、虫・日差し対策を両立させる

夏の登山パンツに求められるのは、とにかく「涼しさ」と「乾きの速さ」です。
薄手で通気性のいいナイロン生地を選んでください。目安は50デニール前後。ここにUPF(紫外線防止指数)が付いていれば理想的です。
「暑いから半ズボンでいいのでは?」と思うかもしれません。 これは、どちらが正解というより行き先で使い分けるところです。
整備された登山道や、標高の高い涼しい山なら半ズボンは快適です。 下に薄手のタイツを合わせれば、日焼けと擦り傷はカバーできて、涼しさはそのまま残ります。
一方で、草が張り出した道、虫の多い低山、日陰の少ない稜線では長ズボンが有利です。 草の擦れ、虫刺され、直射日光は、歩いているあいだじゅう地味に体力を削ってきます。
迷ったら、まず長ズボンを1本。 そのうえで、行き先に応じて半ズボン+タイツを足していくと無駄がありません。
夏向けのモデルは種類が多く、比較のしがいがあるところ。 定番のオールラウンドモデルから、軽量・速乾に振り切ったモデル、虫と日差しの対策に特化したモデルまで、夏のトレッキングパンツを10本比較した記事でくわしくまとめています。 夏山の予定がある方はそちらもあわせてどうぞ。
~"最初の1本に迷ったらこれ"~『モンベル O.D.パンツ ライト』

春から秋まで、これ1本でほぼ足ります。
伸びるナイロン生地に、はっ水加工。300gちょっとという軽さで、価格は1万円を切ります。「登山パンツの最初の1本」として、これ以上に迷いのない選択肢はなかなかありません。
特筆すべきはサイズ展開の細かさ。 通常サイズに加えて、ショート丈とロング丈が用意されています。「登山パンツは裾が余りがち」という悩みが、そもそも起きません。
価格(税込) | ¥8,900 |
平均重量 | 303g |
素材 | ナイロン94%+ポリウレタン6%・リップストップ(はっ水加工) |
春・秋|いちばん判断が難しい季節

春と秋は、実は一番むずかしい季節です。 朝は氷点下近く、昼は汗ばむ陽気、なんてことが普通に起こります。
まず押さえておきたいのが、タイツは山の途中で脱げないということ。脱ぐにはパンツを下ろすことになるので、朝はいた時点で、その日はそのままだと考えてください。調整するのは、あくまで外側です。
そのうえで、行き先によって2通りに分かれます。
低山や、風の弱い樹林帯の日は「夏用のトレッキングパンツ+薄手タイツ」。 朝の冷え込みをタイツでしのぎ、日中はそのまま歩けます。タイツは薄手を選ぶのがコツで、厚手にすると日中が暑すぎます。
稜線に出る日や、風が読めない日は「ソフトシェルパンツ+タイツ」。 稜線(山の尾根すじ)は風が強く、風を止められるかどうかで体感温度がまるで変わります。ソフトシェルなら、ある程度の風や雨から身を守ることができます。
どちらも共通しているのは、厚手のパンツを1本で買わないこと。 厚手の1本は、暖かい日にどうにもならなくなります。
春と秋は、行き先と当日の気温で組み合わせが変わります。まずは手持ちの夏用パンツに薄手タイツを合わせるところから始めて、風の強い日にソフトシェルを足す、と広げていくのが失敗しません。
冬|行き先で「ソフトシェル」か「ハードシェル」かが決まる

冬は考え方が変わります。夏用パンツにタイツを足す、では追いつきません。
土台になるのは保温タイツです。そのうえに何を重ねるかが、行き先で分かれます。
- 初冬の中低山、天気のいい日帰り … 保温タイツ+ソフトシェルパンツ
- 厳冬期の雪山、標高が高い山、強風・降雪 … 保温タイツ+ハードシェルパンツ
ソフトシェルは「防風と透湿」で選びます。 冬用として売られているものは裏地が薄く起毛していることが多く、これは保温というより、風を止めながら汗を逃がすための作りです。
ここで気をつけたいのが、厚手の裏起毛を選ばないこと。 保温力の高い生地は、登り続けると熱がこもります。汗で内側が濡れると、休憩した瞬間に一気に体温を奪われる。歩いているときに少し寒いくらいがちょうどいい、というのが冬山の基本です。 暖かさは、止まったときに履くダウンパンツや中綿パンツで足すほうが安全です。
雪が出てくるなら、保温より先に「雪による濡れ」への備えが必要になります。 そこから先はソフトシェルの守備範囲を超えるので、ハードシェルパンツの出番です。
雪山まで見据えるなら、冬用トレッキングパンツを10本比較した記事で、保温力と防水性のバランスごとに整理しています。 雪山デビューを考えている方は、そちらを読んでから選んでみてください。
~"初冬の中低山なら、これ1本"~『モンベル クリフパンツ サーモ』

初冬の中低山や、天気のいい冬の日帰り登山に向いた1本です。
生地の裏がふんわり起毛していて、保温タイツと合わせれば冬の行動着になります。表面ははっ水加工なので、雪がちらついても弾いてくれます。
436gと、夏用に比べればずっしりしますが、これは保温層を持っている分の重さです。
ただし、これ1本で厳冬期の雪山までは行けません。 強風や本格的な降雪、アイゼンを使う場面では、次の章のハードシェルパンツに切り替えてください。
ショート丈・ロング丈もそろっているので、体型に合わせやすいのもうれしいところ。
価格(税込) | ¥14,000 |
平均重量 | 436g |
素材 | ポリエステル49%+ナイロン42%+ポリウレタン9%(はっ水加工・裏面起毛加工) |
天気とシーンで選ぶ|4つの場面別おすすめパンツ
雨の日|レインパンツは「上から履く」もの

登山でいちばん軽視されがちなのが、レインパンツです。
上着のレインジャケットは買っても、パンツは「まあいいか」と後回しにする人が本当に多い。でも、下半身が濡れて冷えるのは、体力を確実に奪います。
選ぶときのポイントは3つ。
- 防水性能(耐水圧)は20,000mm以上あると安心
- 蒸れにくさ(透湿性)も同じくらい大事。数字が大きいほど蒸れにくい
- 登山靴を履いたまま脱ぎ履きできるか
3つ目が意外と重要です。雨は突然降ってきます。 そのときに靴を脱がないと履けないパンツだと、道の途中で立ち往生してしまいます。サイドが大きく開く「フルジップ」タイプなら、靴を履いたままでも履けます。
防水透湿素材ごとの違いや、モデル別の比較は、登山用レインパンツの記事にまとめています。 「どの素材を選べばいいのか分からない」という方は、そちらが参考になるはずです。
~"雨対策の入り口として、価格も性能もちょうどいい"~『モンベル サンダーパス パンツ』

レインパンツの最初の1本として、非常にバランスがいいモデルです。
耐水圧20,000mm以上という数字は、本降りの雨でも安心して歩ける水準。 それでいて217gと軽く、価格は1万円以内に収まります。
畳むと8×8×13cmまで小さくなるので、「使わないかもしれないけど、とりあえず持っていく」ができるサイズ感。 レインパンツはこの「持っていく気になるか」が本当に大事です。
より脱ぎ履きしやすいフルジップタイプもあるので、着脱のしやすさを最優先したい方はそちらも検討してみてください。
価格(税込) | ¥9,600 |
平均重量 | 217g |
素材 | ドライテック 3レイヤー(表:50デニール・ナイロン・リップストップ) |
防水・透湿 | 耐水圧20,000mm以上/透湿性15,000g/m²・24hrs |
雪山・悪天候|ハードシェルパンツの出番

雪山になると、レインパンツでは力不足になります。
理由は、雪山では「濡れ」だけでなく「強い風」と「生地の破れ」に備える必要があるから。 アイゼン(靴に付ける金属の爪)を履いて歩くので、うっかり自分の爪で生地を引っかけてしまうこともあります。
ここで、レインパンツとの決定的な違いがあります。 レインパンツは、行動着の上から重ねて履くもの。対してハードシェルパンツは、保温タイツの上に直接履いて、それ自体が行動着になります。 トレッキングパンツの上から重ねて履くものではありません。朝から履いて、1日そのまま歩くのが基本の使い方です。
そのため、ハードシェルパンツは生地が分厚く、丈夫に作られています。 価格は上がりますが、ここは安全に直結する部分です。
形は大きく2種類。
- パンツタイプ……着脱がラク。日帰りの雪山ならこちら
- ビブタイプ(胸当て・肩ひも付き)……雪の侵入を完全に防げる。本格的な雪山向き
モデルごとの素材の違いや、ビブとパンツの使い分けは、ハードシェルパンツを10本比較した記事でくわしく解説しています。
~"雪山でとことん動きたい人へ"~『ファイントラック エバーブレスアクロパンツ』

雪山向けの、フルスペックのハードシェルパンツです。
いちばんの特徴は、膝から上と膝から下で生地を変えていること。
- 膝上……50デニールの伸びる生地で、動きやすさを優先
- 膝下……112デニールの厚い生地で、アイゼンや岩場に備える
「動きやすさと丈夫さ、どっちを取るか」という長年の悩みに、素材の使い分けで答えたモデルと言えます。
価格は6万円超え、決して気軽な買い物ではありません。ただ、雪山を継続してやるつもりなら、ここは投資する価値のある部分です。
価格(税込) | ¥62,480 |
重量 | 540g |
素材 | 膝上:50デニール4WAYストレッチナイロン・リップストップ/膝下:112デニール4WAYストレッチナイロン・オックス |
トレイルランニング|「軽さ」と「ポケット」で選ぶ

山を走るなら、選ぶ基準がガラッと変わります。
まず軽さ。走る動作は歩くよりずっと大きく脚を動かすので、生地の重さがそのまま疲労になります。
次に通気性。走ると発熱量が跳ね上がるので、風を止める生地はむしろ邪魔になります。
そして意外と大事なのがポケットの配置。走っているとポケットの中身が上下に暴れます。 ファスナー付きで、太ももの横に付いているタイプが安定します。
寒い時期のトレラン用ロングパンツについては、専用の記事で7本を比較しています。 走る人はそちらもチェックしてみてください。
~"走る人の定番、そして山小屋でも活躍"~『パタゴニア テルボンヌ・ジョガーズ』

トレイルランニング用として定番のジョガーパンツです。
2.7オンスという極薄の生地で、通気性と速乾性が高く、走ったときの熱がこもりません。 UPF40+の紫外線カット機能も付いています。
ウエストと裾は伸びる別素材になっていて、動きを妨げないつくり。 ドローコード(引きひも)でウエストを調整できるので、ベルトが不要です。
面白いのは、走らない人にも人気があること。 軽くて小さく畳めるので、山小屋泊やテント泊のくつろぎ着として持っていく人も多いモデルです。
価格(税込) | ¥14,300 |
重量 | 170g |
素材 | 2.7オンス・リサイクルポリエステル100%のストレッチ・リップストップ(DWR加工/UPF40+) |
山小屋・テント泊|くつろぎ着としてのフリースパンツ

山小屋に着いてから寝るまで、意外と時間があります。 ここで汗で湿ったパンツのまま過ごすと、体が冷えて、翌日にも響きます。
そこで活躍するのがフリースパンツです。
- 軽くてかさばらない
- 肌ざわりがよくて、汗で湿った肌でも気持ちいい
- そのまま寝袋に入れる
特に薄手のマイクロフリース素材は、軽さと暖かさのバランスがよく、山小屋着の定番になっています。
フリース・シャミースパンツについては、山小屋用・行動用・街着用の3つの視点で10本を比較した記事があります。 選び方が整理されているので、あわせて読んでみてください。
~"山小屋に着いた瞬間の、ごほうび1本"~『ザ・ノース・フェイス マウンテンバーサマイクロパンツ』

歩き終わって、汗で濡れたパンツを脱ぐ。 そこに履き替える1本です。
薄手のマイクロフリースを使っていて、軽いのにしっかり暖かい。 山小屋やテントの中って、動きを止めた瞬間から一気に冷えてきますよね。あの時間を快適にしてくれます。
左右にファスナー付きのポケットがあるのが、地味に効きます。 小屋の中でスマホや行動食を入れて歩き回れるので、いちいちザックを開けなくて済みます。ウエストはひもで絞れるタイプなので、サイズも合わせやすいです。
登山の行動中に着る「中間着」としても使えます。 冬の停滞時や、森林限界を越えるような寒い場面では、レインパンツの下に履くという手もあります。
注意点は、かさばること。 約285gとフリースとしては標準的ですが、ダウンパンツのように小さくは畳めません。日帰りには持っていかない前提の1本です。
価格 | 12,100円 |
重量 | 約285g(Lサイズ) |
素材 | 身生地:Versa Micro 100 ECO(ポリエステル100%)/ウエスト・裾口:NORTHTECH Cloth ECO(ナイロン100%) |
寒さ対策のプラス1枚|ダウンと化繊、どっちを選ぶ?
行動中ではなく、「止まったとき」に着るパンツの話です。
ダウンパンツ|軽さと暖かさで選ぶなら

とにかく軽くて暖かい。 これがダウンパンツの魅力です。200g台で、ペットボトル1本分くらいまで小さく畳めるモデルもあります。
向いているのは、テント泊と冬の山小屋泊。 テントの中は外気とほぼ同じ温度になるので、下半身の防寒があるかないかで、眠りの質がまるで違います。
逆に、日帰り登山ではまず出番がありません。 ザックの容量を圧迫するだけになりがちなので、「泊まるかどうか」で判断してください。
選ぶときは「休憩中に着るのか、行動中も着るのか」で分かれます。 行動中も着るなら、伸びる生地を使ったモデルを選ばないと動きづらくなります。ダウンパンツを10本比較した記事で、この使い分けごとに整理しています。
ひとつ、正直にお伝えしておきたいことがあります。 登山用のダウンパンツは、選べるブランドがとても少ないのが実情です。
ジャケットならどのメーカーも力を入れていますが、パンツとなると話が別で、国内で普通に買えるものを探すと、選択肢は驚くほど絞られます。 大手ブランドでもラインナップに置いていなかったり、置いていても季節によって在庫が途切れたりします。
なので「いろいろ比べてから決めたい」と思っても、そもそも比べる相手が少ない。もし気になるモデルを見つけて在庫があるなら、シーズン中に確保しておくほうが確実です。冬が深まってから探すと、サイズが残っていないことがよくあります。
~"テント泊の夜を、根本から変える"~『モンベル スペリオダウンパンツ』

テント泊をするなら、真っ先に検討したい1本です。
800フィルパワーという高品質なダウンを使い、重量は226g。 収納するとΦ11×17cmまで小さくなります。「持っていくかどうか」で悩まないサイズ感が、このモデルの最大の価値です。
フィルパワーというのは、ダウンの膨らむ力を表す数字。 数字が大きいほど、少ない量でたくさんの空気を抱え込めます。つまり、軽いのに暖かい。
注意点は、濡れに弱いこと。 雨のテント場では扱いに気をつけてください。
価格(税込) | ¥17,200 |
平均重量 | 226g |
素材 | 表地:20デニール・バリスティックエアライトナイロン・リップストップ(はっ水加工)/中綿:800フィルパワー EXダウン |
化繊インサレーション|濡れが気になるならこちら

「インサレーション」は、中綿入りの保温着のこと。 ダウンの代わりに、ポリエステルの中綿を使ったタイプです。
ダウンとの違いは、濡れへの強さ。 ダウンは濡れると羽根がつぶれて保温力を失いますが、化繊の中綿は濡れてもある程度暖かさが残ります。
さらに、伸びる中綿を使ったモデルなら、着たまま歩けます。 ダウンパンツは「休憩用」ですが、化繊中綿パンツは「寒い日の行動着」にもなる。ここが大きな違いです。
同じメーカーのダウンパンツと化繊中綿パンツを実際に履き比べた記事もあるので、迷っている方はそちらが判断材料になります。
もう一段、軽さに振った選択肢もあります。 中綿を布で挟むのではなく、起毛した生地そのもので保温するタイプです。100g前後と圧倒的に軽く、通気性が高いので着たまま歩いても熱がこもりません。
ただし単体では風を通します。 冬はハードシェルパンツの下に履くインナーとして、春夏秋はテント泊のパジャマとして——という使い方が前提になります。「これ1本で完結する保温着」ではなく、組み合わせて効かせるタイプだと考えてください。
~"着たまま歩ける中綿パンツ"~『モンベル U.L.サーマラップ パンツ』

ダウンパンツとの決定的な違いは、「着たまま歩ける」こと。
伸びる化繊中綿を使っているので、動きを邪魔しません。 207gという軽さは、先ほどのダウンパンツよりさらに軽いくらいです。
そして化繊なので、濡れても保温力が残ります。 汗をかきやすい人、雨や雪でウェアが湿りやすい環境で登る人には、こちらのほうが実用的です。
男女兼用のサイズ展開なので、家族やパートナーと兼用しやすいのもポイント。
価格(税込) | ¥12,980 |
平均重量 | 207g |
素材 | シェル:15デニール・バリスティックエアライトナイロン・リップストップ(はっ水加工)/中綿:ストレッチ エクセロフト(ポリエステル) |
~"100gで、冬も夏も出番がある"~『山旅 POLARTEC アルファダイレクト90 ULタイツ』

平均102g。 ここまで来ると、ザックに入れたことを忘れます。
中綿を布で挟む構造ではなく、起毛した生地そのもので保温するタイプ。だから通気性がとても高く、着たまま歩いても熱がこもりません。 ポケットは一切なく、装飾も省いた潔い作りです。
使い方は季節でがらりと変わります。 冬はハードシェルパンツの下に履くインナータイツとして。3シーズンは、小屋泊やテント泊のパジャマとして。1本で2役こなしてくれるので、泊まりの山に行く人ほど元が取れます。
注意点は2つ。 ひとつは、単体だと風を通すこと。防風は上に履くパンツに任せる前提です。もうひとつは、起毛生地なので毛羽立ちやすいこと。 ザックの中で他のギアと擦れないよう、スタッフバッグに入れておくと長持ちします。
価格 | 9,990円 |
平均重量 | 102g |
素材 | POLARTEC アルファダイレクト90(ポリエステル100%・85g/m²) |
価格を抑えたいなら|ユニクロという選択肢
![登山の服装はモンベルで揃える!ユニクロ、ワークマンのおすすめアイテムも紹介[春夏編]](https://admin.yamatabitabi.com/api/image/proxy?url=https%3A%2F%2Fadmin.yamatabitabi.com%2Fapi%2Fimage%2Fproxy%3Furl%3Dhttps%253A%252F%252Fytb-ec-bucket-stg.ap-south-1.linodeobjects.com%252Fimages%252FIMG_7829_1719549305_1752317385.webp%26amp%3Bw%3D1600%26amp%3Bh%3D900%26amp%3Bq%3D95%26amp%3Bf%3Dwebp&w=1280&h=960&q=85&f=webp)
「いきなり1万円は出せない」。 正直な気持ちだと思います。
低山の日帰り登山なら、ユニクロのパンツで十分スタートできます。
理由は3つ。
- 伸びる素材のパンツが3,000円以下でそろう
- 速乾機能(ドライEX)付きのモデルがある
- 街でもそのまま履けるので、無駄になりにくい
ただし、割り切りも必要です。
- 生地が薄いので、岩場や藪の多い道では破れやすい
- はっ水加工がないので、小雨でもすぐ濡れる
- 標高の高い山や、寒い時期には力不足
つまり「整備された低山を、天気のいい日に日帰りで」という条件付きならOK。 そこから先に進むなら、登山用のパンツに買い替えるのが安全です。
ユニクロやワークマンをどう組み合わせるか、登山の服装全体をどうそろえるかは、モンベル・ユニクロ・ワークマンを比較した記事でくわしくまとめています。 予算を抑えて一式そろえたい方は、そちらが具体的です。
~"3,000円以下で始める、最初の1本"~『ユニクロ ウルトラストレッチドライEXジョガーパンツ』

「まず一度、山に行ってみたい」という段階なら、これで十分です。
タテヨコに伸びる素材で動きやすく、速乾機能の「ドライEX」付き。 3,000円を切る価格で、この2つが手に入るのは正直すごいことです。
サイズ展開がXS~4XLと非常に広いのも見逃せません。 登山ブランドのパンツはサイズが限られがちなので、体格が標準から外れる方にとっては現実的な選択肢になります。
ただし、はっ水加工はありません。 雨の予報が出ている日、岩場や藪の多い山では避けてください。「晴れた日の、整備された低山」というのが使いどころです。
価格(税込) | ¥2,990 |
重量 | メーカー公表なし |
素材 | 本体:ポリエステル系(複合繊維含む/リサイクルポリエステル33%使用)※カラーにより混率が異なる |
注意点 | はっ水加工なし。晴天時の低山日帰り向け |
登山パンツに関するよくある質問

Q1. ジーンズやスウェットで登ってはダメですか?
やめておいたほうが安全です。
ジーンズは水を吸うと重くなり、しかも乾きません。濡れたジーンズは体温をどんどん奪います。 伸びない生地なので、段差でも突っ張ります。
スウェットも同じく綿素材なので、汗を吸って乾きにくいです。
「登山用パンツを買うまでのつなぎ」であれば、ユニクロなどの速乾ジョガーパンツのほうがずっと安全です。
Q2. 登山パンツは何本そろえればいいですか?
まずは1本で大丈夫です。
春から秋に登るなら、伸びるナイロンのトレッキングパンツを1本。 これで始めてください。
そのあと必要になる順番は、だいたいこうなります。
- レインパンツ(雨の日のために。1本目の次に買うべき)
- フリースパンツ(山小屋やテント泊をするなら)
- 冬用パンツ/ダウンパンツ(冬山や、寒い時期の宿泊をするなら)
行く山が決まってから買い足すのが、いちばん無駄がありません。
Q3. 夏は「半ズボン+タイツ」と「長ズボン」、どちらがいいですか?
どちらが正解ということはなく、行き先で使い分けるものです。
半ズボン+タイツは、動きやすく、涼しく、脚のサポート効果も期待できる組み合わせ。タイツを合わせておけば日焼けと擦り傷はカバーできるので、整備された道や、標高の高い涼しい山では快適です。トレイルランニングをする人にも人気があります。
一方で長ズボンは、すり傷、虫、日差しをまとめて防いでくれます。 草が張り出した道や、虫の多い低山では、肌が出ていないだけで気の使い方がまったく違います。
まずは長ズボンを1本持っておくと、行き先を選ばず使えます。 そのうえで、涼しさを取りたい山では半ズボン+タイツを足す。この2択を持っておくのが、いちばん融通が利きます。


