八ヶ岳連峰は赤岳(2899m)を主降に、南北30kmに渡って2000m級の峰が連なる。周囲の山から望むと、裾を長く引き、均整のとれた姿である。山梨県、長野県にまたがるその裾野は、諏訪盆地、佐久盆地、甲府盆地へと広がっている。この八ヶ岳の登山をより楽しむために、八ヶ岳にまつわる知識を紹介する。

八ヶ岳の概略

八ヶ岳の概略

八ヶ岳の1200m位までは高原野菜が栽培され、また牧場が広がりその上に広葉樹林、針葉樹林、雑木帯、お花畑、荒々しい岩稜へと続く。八ヶ岳は、夏沢峠を境として北を北八ヶ岳、南を南八ヶ岳と呼ぶ。

北八ヶ岳は鬱蒼とした原生林に池が点在し、またその神秘さに心ひかれて歩けば、ぱっとした草原やササ原が出るなど、開放感を味わえるエリアである。

北八ヶ岳

南八ヶ岳は明るくアルペン的山容で、稜線にはお花畑が広がり岩壁にはクライマーの声がこだまする。八ヶ岳は、南北あわせて、日本の山を凝縮したような山である。連峰の誕生は130万年前に始まり、以後噴火、崩壊を繰り返して現在の姿になったといわれている。人間がこの麓に住みついたころは、まだ噴煙が上っていたかも知れない。また山中および山麓には、山麓温泉、鉱泉が数多くあり、ぜひ立ち寄りたい。

八ヶ岳の動植物

八ヶ岳は独立した連峰である。よってここだけで進化した花、植物や樹木がある。花、植物ではヤツガタケキスミレ、ヤツガタケキンポウゲ、ヤツガタケタンポポ、ヤツガタケアザミ、ヤツガタケシノブ、樹木ならヤツガタケトウヒなど八ヶ岳の名の付くものが数多い。

八ヶ岳

山地帯でシラカバやカラマツの新緑が濃くなる6月頃、レンゲツツジ、コナシ、ベニバナイチヤクソウ、クサボケなどが咲き始める。亜高山帯はオサバグサ、ハクサンチドリ、コイワカガミ、クロユリ、クリンソウなどが咲き、高山帯ではツクモグサ、キバナシャクナゲ、ミヤマキンバイ、オヤマノエンドウなどが咲き始め花の競演が始まる。とくに、硫黄岳から横岳、赤岳にかけての稜線や尾根筋にかけてお花畑に埋まる。そしてコマクサ、トウヤクリンドウと咲けば、花のシーズンは終わる。里山では、秋の花シシウドやゴマナそしてワレモコウにアキアカネが飛び始めると霜の降りるのも近くなる。稜線に雪が来る頃、ナナカマドやダケカンバの紅葉が山を染め、カヤトの尾根が逆光に輝きカラマツの黄色があせてくると麓にも雪がくる。

生息する主な動物は、ニホンカモシカ、ニホンジカ、サル、テン、オコジョ、リス、モモンガ、ヤマネなどがいる。ニホンカモシカは国の特別天然記念物に、ヤマネは天然記念物にそれぞれ指定されている。ニホンジカは近年頭数が増え、食害を与えるばかりかカモシカの領域まで侵すまでになっている。

八ヶ岳の遺跡

広大な山麓には旧石器時代、縄文時代からの国宝級の遺跡、土器、土偶石器などが発掘されている。野辺山では約1万4千年前の旧石器時代の石器が、南佐久郡北相木村の洞窟からは縄文時代早期の人骨や生活用品が、それぞれ発掘されている。

茅野市の尖石縄文考古館には、この地方で発掘された出土品や、国宝に指定されている土偶(縄文のビーナス)仮面土偶(仮面の女神)などが展示されている。ほかには、富士見町の井戸尻遺跡、原村の阿久遺跡があり、和田峠の黒曜石などもよく知られている。山行前後にこれらの遺跡類などに立ち寄り、その長大な歴史を思いながら山を歩けば、八ヶ岳に対する楽しみも一段と深いものになってくることだろう。

八ヶ岳の主な峰

赤岳(2899m)

キレットからの高度差、岩が特徴的な南側からの赤岳。

八ヶ岳連峰最高峰。堂々とした山容は名実とも主峰にふさわしい。諏訪側の夕日に燃える西壁は、まさに赤岳の名の通りである。2つのピークがあり、南峰に赤森神社が祀られている。北峰には、赤岳頂上山荘がへばり付くように建っている。6月第一日曜日には頂上で開山祭が盛大に行われる。

横岳(2829m)

横岳のモルゲンロート。嶮しくも綺麗な稜線。

南八ヶ岳にあり、幾つかの峰を持つ岩稜の山で、諏訪側は岩壁で大同心、小同心がそそり立っている。稜線のお花畑は、全国でも有数の種類と規模を誇る。

阿弥陀岳(2805m)

阿弥陀岳。奥には御嶽山、乗鞍岳。

南八ヶ岳の主稜線からは外れているが、山容は厳しく尊厳さえ感じる一峰。信仰の山らしく山頂には石碑、石仏が祀られている。御小屋尾根を下ると日本三大奇祭のひとつ、御柱祭の御神木を切り出す御小屋山を経て美濃戸口に至る。山頂で方向が分からなくなった時、中岳のコルへの下山道は阿弥陀仏の裏側に進めばよい。

硫黄岳(2760m)

南八ヶ岳の一峰。圧巻は爆裂火口で、本沢温泉まで標高差600mの絶壁である。頂上は広々として開放感があり、ゆっくりと360度の展望が楽しめる。しかし崩壊が激しく、いつ崩れても不思議ではないので火口には近付かぬこと。横岳方面、夏沢峠方面にはそれぞれのケルンが立っており、視界の悪い時の頼りとなる。

権現岳(2715m)

権現岳と富士山

赤岳の南方に位置する。山頂には小さなオベリスクがあり、祠が祀られて古剣がある。古文書によるとノロシバにも鳥居があり、信仰の山として崇拝されているという。現在の青年小屋も以前は青年修練宿舎と呼ばれ、一帯は修験道の道場として栄えていたようだ。頂上付近まで樹木に覆われ、南面は静かに見えるが東面から見る厳しい岩壁に雪が付くと、冬の厳しい姿を見せる。

編笠山(2524m)

編笠山

名前の通り編笠を伏せたような形で、山頂付近は岩石が積み重なっている。八ヶ岳最南端にあり、甲斐駒ヶ岳を正面に鳳凰三山、北岳など南アルプスの山並みと、甲府盆地の奥には富士山の霊峰が望める。

天狗岳(2646m)

夏沢峠北方に位置し、二峰からなる。岩峰の東天狗岳に対し小鞍部の西にハイマツに覆われた西天狗岳があり、西尾根が唐沢鉱泉に派生している。東天狗の東側は岩壁で、下方にはミドリ池がある。北側には天狗の奥庭と呼ばれる凹地がある。丈の低い針葉樹とダケカンバと池塘が箱庭のように配され、スリバチ池が天狗岳を映している。

北横岳(2480m)

北横岳

北八ヶ岳で一番大きな山容を持つ。稜線に大岳、三ッ岳を従え周りには幾つかの池を配したどっしりとした山である。2つの峰のうち、北峰が高く3等三角点があり、赤岳と同じく6月第一日曜日に開山祭が行われる。南峰の北側には噴火口が見られ、火口には池がある。南側中腹より流れ出た溶岩の台地は坪庭と呼ばれ、ロープウェイ駅からの遊歩道が整備されている。

蓼科山(2530m)

蓼科山

八ヶ岳連峰最北端に位置し、円錐形で均整の取れた独立峰で、別名女の神山、諏訪富士などの呼び名もある。佐久側からはお供え山とも。山頂は広く岩石が積み重なり噴火口跡が認められる。中央に蓼科神社が祀られている。山頂部では、濃霧時にはルートを見失わないよう注意が必要である。諏訪側の山腹には幾つかの帯状の縞枯れ現象が見られる。

冬の八ヶ岳の景色

華やかに咲いた山の草花は、10月中旬になると冬ごもりに入る。気温も零下まで下がり初霜、初氷を観測する。比較的天候は良く、秋晴れの山行は最高であるが一度崩れると悲しい結果になりかねない。時には稜線付近では、雪が舞うこともある。十分な装備と計画、良きリーダーのもとに行動をしたい。登山者もめっきり少なくなるので、単独登山は慎みたい。

12月になると八ヶ岳連峰は白さが増し、沢筋の滝にはアイスクライミングのコールが響く。諏訪地方では八ヶ岳に7回雪が降れば里にも雪が来ると言われている。中旬には完全な冬山になる。年末から正月三が日で一部営業する小屋もあるので事前に調査しておきたい。

冬の八ヶ岳の気温

気温は1月、2月が最も下がり零下10度から20度を上下する。稜線は諏訪側からの強風が吹き、立って歩くのに苦労することもある。積雪は2月から3月と深さを増し、雪崩の危険が増大する。斜面があれば雪崩は起きると考え、最大の注意で行動したい。ビーコンも必要装備のひとつだ。赤岳鉱泉、行者小屋を基地にトレースのしっかり付いた道を歩き、これが八ヶ岳だ。などと思っていると大変なことになる。北八ヶ岳の樹林帯などはトレースがつかず、ワカンを履いても苦しいラッセルになる。また、佐久側は諏訪側から飛ばされた雪で積雪は一層深い。山麓に花の便りが聞かれても、山は猛吹雪や雪崩の危険があることを忘れてはならない。

ビーコンの使い方はこちらから

八ヶ岳周辺の温泉

八ヶ岳には、山行を終えて疲れを癒す事が出来る温泉、鉱泉が数多くある。自噴しているものから、地下1500m近くからボーリングにより汲み上げているものまであり、どの登山口付近でも容易に入浴できる。施設も大浴場にサウナ付きから自治体経営の湯までありいろいろと選ぶことが出来る。たまには山行後、ひなびた「いで湯」で一泊して帰ってみてはどうだろう。

奥藝科温泉鄉

天狗岳、高見石への登山口。バスの終点渋の湯までの渋川沿いに4軒の宿があり、どの宿も日帰り入浴ができる。自然に湧き出る温泉で泉質も様々だ。武田信玄の隠し湯ともいわれ、江戸時代から湯治場として利用されてきた。歴史を偲ぶように湯道街道沿いに湯治場まで、道しるべとして66体の観音様が並んでいる。下流は横谷渓谷となり、幾つもの滝があって、紅葉季節はとくに素晴らしい。

唐沢鉱泉

天狗岳、黒百合平の登山口。こちらも武田信玄の隠し湯といわれている。茅野市豊平から三井の森別荘地を抜け桜平への道を左に折れ砂利道を約4kmで鉱泉に着く。駐車場も広く用意され、登山者の駐車も無料で利用できる。建物の隣に源泉があり、相当の量で湧き出ている。大きな石を配した浴場と地元で捕れた鹿肉、イノシシ料理に定評がある。

夏沢鉱泉

諏訪側からの夏沢峠への登山口、桜平から2km弱、鳴岩川の川岸に建つ。水力と太陽光で発電し、いち早くトイレの水洗化をした。前の枝沢から自噴している鉱泉を引き加熱している。通年営業で、宿泊者には茅野駅からの送迎をしてくれる。積雪期には除雪終点より雪上車でのサービスがある。入浴のみも可能で、山の行き帰りに利用してもよい。

本沢温泉

佐久側から夏沢峠への登山道、硫黄岳の直下の標高2150mにある日本第二の高所温泉で、通年営業の温泉では日本一とか。近くで自噴する60度の湯を引いている。男女別の大きな浴槽で疲れを癒せる。建物から200mほどの湯川上流の河原に、爆裂火口露天風呂がある。脱衣場などはなく浴槽1つの混浴であるが、湯に浸かりながら見上げる硫黄岳の爆裂火口は絶景である。

稲子湯

佐久側からの登山基地になる温泉宿。創業は明治12年という歴史を持つ。春から秋まではJR小海線小海駅から町営バスが運行されている。冬期は、宿泊者のみ松原湖駅から送迎してもらえる。国道299号からのアクセス途中には、県の天然記念物サラサドウダンツツジの群落があり、5月下旬に花をつける。稲子湯寄り、道路から10分ほど入ると、落差30mほどの八岳滝が落ちている。

その他の山麓の湯

ほかにも、いくつもの温泉がある。佐久側では海ノロ駅近くに海ノ口温泉が3軒ほどあり、立ち寄り湯で透明の湯がある。蓼科山山麓では、北側に春日温泉、南側には横谷温泉、蓼科温泉などがあり、日帰り入浴も多くの宿で利用できる。南八ヶ岳の山麓にも鉢巻道路沿いに水を持った宿があり、小淵沢や甲斐大泉でも露天風呂を楽しむことが出来る。また霧ヶ峰にも温泉がある。

八ヶ岳の登山口案内

山麗は開発が進み奥まで車で入れるようになった。安易な入山者による遭難が増えている。入山が楽になったとはいえ、山そのものの厳しさはなんら変わっていない。装備と経験に似合った行動が必要だ。時間に余裕を持って、特に単独登山は避けたい。また、車上荒らしが多発しているので万全な対策を!

夢科山方面

竜源橋、蓼科山登山口、七合目登山口、梦科牧場、大河原峠

  • 蓼科スカイラインは積雪期一般車通行不可。

北横岳方面

ピラタス蓼科ロープウェイ

天狗岳方面

唐沢鉱泉、奥蓼科温泉、稲子湯、本沢入口、ゲート前、唐沢橋

  • 稲子湯以外、積雪期一般車通行不可。ゲート前には四駆車のみ。
  • 国道299号11月下旬より4月下旬まで通行止め。

赤岳、横岳、硫黄岳方面

美濃戸口、美濃戸、桜平、海ノ口自然郷横岳登山口

  • 桜平は積雪期一般車通行不可。桜平、美濃戸は普通車のみ。

阿弥陀岳

舟山十字路

編笠山、権現岳方面

天女山、観音平、富士見高原スキー場、造林小屋ゲート前*富士見高原以外積雪期一般車通行不可。

  • 積雪期は冬用タイヤのほかにチェーンも携行すると心強い
  • カーナビに山小屋の電話番号を入力すると、の小屋事務所に案内されることがあるので、利用の際は注意のこと。

八ヶ岳の登山ルート

山旅旅
1970.01.01
山旅旅
https://yamatabitabi.com/archives/97311/
登山・トレラン・山スキーマガジン
山旅旅
1970.01.01
山旅旅
https://yamatabitabi.com/archives/97560/
登山・トレラン・山スキーマガジン

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