登山やトレイルランニングなど、山のアクティビティで大切なのは重ね着(レイヤリング)をして汗をかかないように体温調整をすることです。
レイヤリングでは、肌に最も近いベース、ミドル、アウターでそれぞれ異なる機能を持ったウェアを重ねて着用することで、環境変化の厳しい山で快適かつ安全に行動することが可能です。
今回はこのレイヤリングの中で真ん中に位置づけられるミドルレイヤーについて、選び方とオススメのモデルを紹介します。
ミドルレイヤーの役割
ミドルレイヤーはベースレイヤーの上、アウターの下という中間に位置づけられます。
ミドルレイヤーの役割を単純に考えれば防寒着なのですが、そう簡単ではありません。
内側(ベースレイヤー側)から見た時には、ミドルレイヤーは汗を吸い取り(吸湿性、吸水性)、ベースレイヤーをドライに保つ役割を担います。またこもった熱を適度よく排出(通気性・透湿性)し、発汗を防ぎます。
外側(アウター側)から見た時には、冷たい外気温を遮断(保温性)し、体温の低下を防ぐ役割を担います。ちょっとした雨が降って濡れてしまっても、ミドルレイヤーが重くならない(速乾性、耐水性)機能を備えたモデルも多く見られます。
ミドルレイヤーの選び方
ミドルレイヤーを選ぶときには、上に挙げたような機能を備えたアイテムを選ぶようにしましょう。
- ベースレイヤーの汗を吸い上げ吸湿性と吸水性
- 熱を適度に排出する通気性と透湿性
- 外気温を遮断する保温性
- 汗を吸っても重くならない速乾性
- ちょっとした雨にも濡れない耐水性
- 防寒着として持ち歩きやすい軽量性
これらの機能は、登山をする季節や、アクティビティによって重要度が異なります。以下はその例です。
3シーズンの低山におけるミドルレイヤー
暑い季節はミドルレイヤーを行動着として省くこともありますが、休憩中は防寒着として活用することを想定できます。このような場合はザックの中に入れて持ち歩くことが多いので、以下の2点がミドルレイヤーを選ぶ時に重要視します。
- 防寒着として持ち歩きやすい軽量性
- 外気温を遮断する保温性
3シーズンの高所登山におけるミドルレイヤー
登山スタート時、風が直接体に当たる稜線上の歩行でミドルレイヤーを着用することになります。寒暖差が激しくなるため、汗をかかないで着用し続けられるミドルレイヤーが重視されます。この場合は以下の4点がミドルレイヤーを選ぶときに重要視します。
- ベースレイヤーの汗を吸い上げ吸湿性と吸水性
- 熱を適度に排出する通気性と透湿性
- 汗を吸っても重くならない速乾性
- 防寒着として持ち歩きやすい軽量性
冬の低山におけるミドルレイヤー
3シーズンの高所登山と同様に、暑くなったり寒くなったりすることが多いのが、冬の低山です。また標高を上げると急激に寒くなることも想定すると、保温性も重視する必要があります。このような場合は以下の3点がミドルレイヤーを選ぶときに重要視します。
- ベースレイヤーの汗を吸い上げ吸湿性と吸水性
- 熱を適度に排出する通気性と透湿性
- 外気温を遮断する保温性
冬の高所登山におけるミドルレイヤー
冬の季節はミドルレイヤーを着用し続けることが多くなり、さらには高所登山においては様々な登山装備を装着することになります。このような厳しいことが想定される登山では、以下の4点がミドルレイヤーを選ぶときに重要視します。
- ベースレイヤーの汗を吸い上げ吸湿性と吸水性
- 熱を適度に排出する通気性と透湿性
- 外気温を遮断する保温性
- 防寒着として持ち歩きやすい軽量性
登山におけるミドルレイヤーの種類
登山におけるミドルレイヤーには代表的なものとして
- ダウンインサレーション
- 化繊インサレーション
- アクティブインサレーション(化繊)
- フリース
- シャツ
の5種類に分けることができます。それぞれに良し悪しがあるので、行動のしやすさから適切な種類を選ぶようにしましょう。
ダウンインサレーション
保温力に対し非常に軽量で、防風性にも優れています。
しかし濡れに対して弱く、通気性や速乾性も低いため、汗をかく可能性が低い冬の高所登山におすすめです。手入れが面倒なのがデメリットです。
化繊インサレーション
ダウンよりかは軽量性には劣りますが、濡れに対しては強く、さらに手入れも簡単です。汗をかく可能性もあるけれども寒さもしっかり凌ぎたい、標高差がある冬の登山におすすめです。
アクティブインサレーション(化繊)
通気性と速乾性に優れ、動きやすいストレッチ素材を採用した、行動着として着用しやすい特徴があります。化繊インサレーションの中でも、保温性よりも通気性に重きをおいたモデルとして位置付けるとわかりやすいでしょう。
アークテリクスのコアロフト、ポーラテックのアルファ、ファイントラックのファインポリゴン、モンベルのエクセロフトなどが代表的なアクティブインサレーションの素材です。
フリース
濡れに強く、フリースそのものがストレッチするため動きやすいミドルレイヤーです。肌触りがよく快適な着心地なので、大きな行動が多いトレイルランニングやクライミング向けのミドルレイヤーです。
ポーラテックのフリースやパタゴニアのレギュレーターなどが、このフリースに該当します。
シャツ
フリースやアクティブインサレーションなどが、世の中に浸透していない時は登山シャツをミドルレイヤーとして活用していました。ボタンダウンなので、通気性に優れ、乾きも早く、腕をまくれば涼しく過ごすことができるため、アークテリクスなどが登山用シャツを販売し脚光を浴びています。
おすすめのミドルレイヤーを季節別で紹介
登山で使用するのにおすすめのミドルレイヤーを登山シーン×季節別で紹介します。いづれも軽くて、携行性に優れ、オールシーズンで活用することができるミドルレイヤーです。
縦走登山×夏
夏の縦走登山でミドルレイヤーを着用するタイミングは、森林限界を超えて冷たい風に当たりながら行動するときや、休憩するときです。夏の登山は高所でも暖かいことが想定されるのでミドルレイヤーを省くこともありますが、念のために持ち歩くアイテムに位置づけられます。このような登山では、できるだけ軽く、通気性に優れたアイテムがおすすめです。
アークテリクス『スカイラインLSシャツ』
速乾性とUVプロテクションに優れたポリエステル素材を使用したシャツです。正面からボタンが見えないデザインで普段使いもしたくなるファッション性にも優れたシャツです。左の胸ポケットにはジッパー付きのポケットが備わっておりスマートフォンやパスポートを収納できるサイズです。
パタゴニア『エアシェッド・プロ・プルオーバー』
冬のトレイルランニングなどのハードなアクティビティや夏の縦走登山や、ファストパッキングまであらゆるアクティビティをサポートするミドルレイヤーです。プルオーバータイプで多くのミドルレイヤーと比較しても軽く、対応できる気温は極寒から温暖までさまざま。オールシーズンのアクティビティで活躍します。
縦走登山×秋・春
夏以外の3シーズンでの縦走登山は、高所だと非常に寒くなることが想定されます。汗を吸っても重くならない速乾性と、通気性や透湿性に優れたアクティブインサレーションやポーラテックなどのフリースがおすすめです。
パタゴニア『R1デイリージャケット』
ポケット部分に凹凸がなく、またツルリとした素材のため、上からハードシェルやダウンなどを着用しやすくミドルレイヤーとして使いやすいミドルレイヤーです。ストレッチが効いているため動きを妨げず、手をあげるなどの行動にストレスを感じないのも特徴です。
襟と首の後ろ、裾にはキャプリーン・クール・ライトウェイトの素材を使用し吸湿速乾と防風性を備えているので、3シーズンのミドルレイヤーに快適です。
縦走登山×冬
最も厳しい寒さと強い風が想定される冬の縦走登山では、防風性に優れ保温力が高い、ダウンインサレーションや化繊インサレーションがおすすめです。森林限界を超えることになるため、できるだけ保温力に優れ軽量なモデルがおすすめです。
アークテリクス『アトム LT フーディ』
「本社のスタッフ全員がアトム LTを1着以上所有しています。特に女性スタッフのほとんどは2着持っています。」と公式サイトでも公言されているように、保温力に優れていながらも軽量で着心地の良さが良い化繊ジャケットです。
熱がこもりやすい脇から体幹の側面には透湿性に優れた生地が配置され、暑すぎず、寒すぎないアウター兼ミドルレイヤーとして活用することができます。
パタゴニア『R1 テックフェイス・ジャケット』
この4種類のテクニカルフリースR1の中で、R1テックフェイスは生地の厚みが薄く通気性に優れている一方で、グリッド構造による程の良い保温性を備えた、汗をかきやすいハードな動きを要する登山に最適な一枚に仕上がっています。
パタゴニア『R1エア』
素材は中空糸を使用した5.7オンス·リサイクル·ポリエステル·ジャガード·フリース100%でハイキュ·フレッシュ耐久性抗菌防臭加工済みです。重量はフルジップタイプで366g、クルータイプで275gです。スリムフィットを採用しており体にフィットする作りとなっています。フリース素材は独自のジグザグ織りの生地の中空糸を使用しており、手をあげる、腕を振るなどの激しい動きに追従してくれます。
低山登山×冬
冬の縦走登山は危険が多いことから、低山登山を楽しむ方が多いのが冬です。低山登山といえども寒暖差が激しいことを想定し、外気温を遮断する保温性と同時に、速乾性と通気性や透湿性にも優れた薄手の化繊インサレーションやアクティブインサレーションがおすすめです。
アークテリクス『アトムSLフーディ』
アークテリクスの化繊インサレーションの中で最も軽量なモデルがアトムSLフーディです。このインサレーションは、体幹の部分のみに薄い化繊綿が入っており、袖部分は表生地とメッシュ生地が裏地に貼られた仕様。脇腹から脇下、脇下から袖口の部分までは薄いフリースパネルで汗抜けが良い特徴があります。
ザノースフェイス『バーサマイクロジャケット』
バーサロフトジャケットをより軽量かつ、オールシーズン使用できるフリースにしたのがマイクロジャケットです。Lサイズで250gという軽量性にマイクロフリース素材による保温性を両立させたジャケットで、登山では中間着として使用できます。また3シーズンでもアウターとしても活用することができる汎用性に優れたアイテムです。
メーカ別おすすめベースレイヤー
信頼ある、好きなメーカーから汎用性のあるベースレイヤーを選ぶのも良いでしょう。以下ではメーカーの中でも汎用性の高いベースレイヤーを紹介します。
Rab『アルファフラッシュ』
ポーラテックのアルファダイレクトは圧倒的な通気性で、登山やバックカントリースキーなどのアクティビティにおける行動着として、また軽量なフリースとして、保温着として活用するなど汎用性に優れています。このアルファダイレクトを全面に使用したのがRabアルファフラッシュです。化繊中綿のメリットである濡れへの強さが最大限に活かされたジャケットに仕上がっています。
パタゴニア『R1エア』
R1エアは名前の通り、軽量なミドルレイヤーでストレッチ性に優れているので、手を上げるようなダイナミックな動きに快適なフリースです。R1シリーズの中で最も通気性に優れているので汗をかくことが予想されるような登山でも使えるし、程よく保温するのでハードシェルと組み合わせることで、程よく温かな丁度よいミドルレイヤーとしてもおすすめです。
ファイントラック『ポリゴン2ULジャケット』
シート状立体保温素材「ファインポリゴン®」を2枚封入した、オールシーズン対応の濡れに強いミドルレイヤーです。アクティブインサレーションに数えられ、優れた通気性と肌面の生地の親水コーティングによる汗処理能力も兼ね備えています。
ザ・ノースフェース『マウンテンバーサマイクロジャケット』
マイクロフリースによる軽量で優れた保温性を持つ汎用性に優れたジャケットタイプのミドルレイヤーです。耐摩耗性に優れたナイロン生地を肩に使用したことでザックとの相性もよく、オールシーズン着用できるザ・ノースフェイスの定番モデルです。
モンベル『トレールアクションジャケット』
モンベルのフリースの中でもストレッチ性に優れ動きやすく、程よく保温し、通気性にも優れるため、行動着にも防寒着にも最適なアイテムがモンベルのトレールアクションジャケットです。登山やトレイルランニング用のフリースでストレッチ性に優れたアイテムの多くが、ポーラテックのパワーストレッチやパワードライを使用していますが、モンベルはストレッチクリマプラスという名のポリエステルとポリウレタンを交編(こうへん)した独自の素材を使用。そのため他のフリースと比べると購入しやすい価格設定であることが魅力の1つになっています。
アークテリクス『アトム LT フーディ』
フィットはトリムフィットといって体に密着したデザインなので、レイヤリングとして中間着にもなるし、アウターにもなるという万能さがあります。また湿気がウェアの中に溜まりづらく、外に排出しつつ保温されます。
アトムLTの全体を構成する部分にはコアロフトというアークテリクスオリジナルのインサレーションが配置されています。脇には通気性を確保するためのフリースパネルが施されているので、ウェアを着ていても暑くなりすぎません。
Houdini『アウトライトフーディ』
秋口から冬~春にかけて出番が多くなるのがフリーですが、着心地の良さ、快適性において、これ以上のものには出会ったことがないという程に気持ちの良いのがHOUDINI(フーディニ)のパワーフーディです。このパワーフーディよりも薄手のフリースを採用しているのが、アウトライトフーディです。素材にはポーラテックのパワーストレッチプロライトを使用しており、汗をかいても透湿性が優れているので皮膚をドライに保ってくれます。