寒さが厳しくなる秋から冬にかけての登山では、気温低下に対する対策が重要です。行動中の保温ももちろんですが、行動中にかいた汗が冷える休憩中の保温着は、より保温性能の高さが要求されます。
今回は、軽量で高性能なジャケットを厳選してご紹介します。優れた保温性と通気性を兼ね備え、様々な環境で活躍するでしょう。紅葉をはじめとした魅力たっぷりの寒い季節の登山も、寒さ対策を十分に行って快適に過ごしましょう!
登山の保温着とは
登山では、オールシーズン寒さ対策が必要です。標高の高い北アルプスや富士山などでは、夏でも都心の真冬並みの気温のため、寒さをシャットアウトする防寒着が欠かせません。
一方、登山は冬でも汗をかく激しいアクティビティです。タウン用の防寒着では発汗時の熱を閉じ込めてしまい、大量の汗が逃げ場を失って肌が常に濡れた状態となってしまいます。
汗に濡れたままでは外気温に体が冷やされ、いわゆる汗冷えとなって低体温症を招く危険があります。
登山に防寒着が必要とはいえタウン用の防寒着では、登山につきものの汗をうまく処理することができません。そのため、汗をかくことを前提に設計された登山用防寒着を装備することが大切です。
登山の保温着の選び方6つのポイント
登山での保温着の役割は、ただ体を温めるだけではありません。寒さから身を守り、体を常に快適な状態に保つ登山用保温着の正しい選び方のポイントを紹介します。
1.保温着を【休憩中に着る保温着】と【着て歩く行動着】とに分けて考える
登山用の保温着は、「休憩中(=じっとしている時)」と「行動中(=歩いている時)」の2つの側面から考える必要があります。
まず、休憩中は行動を止めるため熱が生まれず、行動中にかいた汗がそのままだと急速に熱を奪われ、冷えを感じます。高度のある場所では寒冷な空気や風の影響で余計に寒さを感じやすく、動きを止めてじっとしている時に、サッと羽織れて体を温めてくれる休憩時用の保温着が必要です。
一方、行動中は寒冷な環境であっても熱を生み、汗をかくため、体を温めてくれるだけの保温着では必要以上に汗をかいてしまい、その汗が内にこもって蒸れ、汗冷えを招く原因になります。
そのため、行動中に着る保温着には、保温性と相反する熱や汗をどう処理するかといった視点が求められます。まとめると次のようになります。
- 休憩中の保温着:保温性が大切
- 行動中の保温着:通気性と保温性の両方が必要
2.休憩中の保温着は軽量なダウンまたは化繊ジャケットがおすすめ
休憩時用の保温着は、行動中はザックに入れておき、ランチタイムや山小屋についたときにサッと羽織るため、軽量コンパクトで持ち運びしやすいダウンジャケットや化繊ジャケットがおすすめです。
ダウンジャケットは保温力が高いので安心感がありますが、タウンユースのダウンだと重量があり、透湿性がないため蒸れやすく、雨や雪に濡れるとなかなか回復しません。軽登山でなければ、軽くて撥水性のある登山用ダウンジャケットの利用をおすすめします。
化繊ジャケットはダウンよりも少しかさばりますが、濡れに強いというメリットがあるため、急な雨や雪の時でも安心です。保温力はダウンより落ちるものの、羽毛と比べて遜色のない化繊を使用した製品もあり一概にはいえません。
ただ、化繊ジャケットは後に述べるように行動中に着る保温着としての利用もあるため、休憩時用の保温着として化繊ジャケットを選ぶなら、保温性を重視したモデルを選びましょう。
3.行動中の保温着は「汗をうまく処理すること」が大事
登山での防寒対策は、いかにして汗冷えを防ぐかがポイントです。そのため行動中はできるだけ汗をかかないよう、レイヤリングによるウェアの着脱で体温調節を図りますが、それでも汗をかいてしまうのが一般的です。
汗冷えを防ぐには、かいた汗をうまく処理し、肌とウェア内の環境を常にドライに保つ必要があります。
汗対策とドライな環境作りに重要な役割を果たすのが、ベースレイヤーとミッドレイヤーです。
肌に直接触れるベースレイヤーと、体を保温するミッドレイヤーに何を選ぶかが、行動中の保温着のポイントといえます。
4.ベースレイヤーで「肌と汗を切り離す」のがポイント
ベースレイヤーは肌に直接触れる上、行動中に脱ぎ着できないため、登山の汗対策を大きく左右する重要なアイテムです。汗をかいても肌をドライな状態にするには、肌と汗を切り離す必要があります。その役目を担うのが、ベースレイヤーです。
ベースレイヤーが汗を素早く吸って拡散することで、肌はドライな状態となり、汗冷えを防ぎます。
ファイントラックのドライレイヤーは汗冷え対策として開発されたベースレイヤーで、行動中の汗処理に悩む多くの登山者から支持されています。
また、汗対策と共に保温性や着心地の良さも重視したベースレイヤーとして人気があるのが、メリノウール素材の商品です。冬山や高山だけでなく、年間を通じて着用する愛好者もいるほど親しまれています。
5.ミドルレイヤーはフリースまたはアクティブインサレーションがおすすめ
ベースレイヤーで汗と肌とを切り離したら、ミドルレイヤーで汗を放出しつつ体を保温します。
ミドルレイヤーには通気性や透湿性に優れ、なおかつ保温性もあるフリースがおすすめです。タウン用のフリースは汗が内にこもって蒸れやすいため、登山用のフリースを選びましょう。
また最近は、行動中の保温着として、アクティブインサレーションと呼ばれる化繊のジャケットの人気が高まっています。
アクティブインサレーションは、行動中に着ていてもオーバーヒートにならない程度の保温力があり、なおかつ通気性と撥水性に優れているため汗対策ができる上、多少の降雨時でも着続けていられます。
ただし、アクティブインサレーションは、保温力よりも通気・撥水性のほうが高いため、動きを止めると寒く感じられ、休憩時用の保温着としてはおすすめできません。
アクティブインサレーションは保温性も兼ね備えた行動着として着用し、ダウンなど休憩時用の保温着を別途装備しておくのがおすすめです。
6.通気性、透湿性を重視するなら化繊素材がおすすめ
登山の防寒対策において、保温力を第1に考えると、ダウンやウールなど天然素材のほうが勝ります。しかし、登山では雨や雪、そして汗による「濡れ」がつきものです。
濡れに強く、通気性、透湿性に優れているのが化繊素材です。化繊は天然素材に比べて値段が安いのも魅力です。ただし、肌触りや着心地などは天然素材のほうが優れているため、一概にどちらがいいとはいえません。
アクティブに動き、汗をかきやすい方なら化繊素材を、平均よりもゆったりと行動する方なら天然素材をおすすめしますが、ご自分の好みやシーンに応じて選んでみてください。
秋におすすめのダウンジャケット
メーカー | マウンテンハードウェア | パタゴニア | THE NORTH FACE | Rab | モンベル |
商品名 | ゴーストウィスパラージャケット | アルプライト・ダウン・プルオーバー | ライトヒートジャケット | ミシックGジャケット | ライトアルパインダウン ジャケット |
イメージ | |||||
重量(g) | 230g | 224g | 205g | 277g | 312g |
価格(税込) | \39,600 | \18,425 | \28,600 | \63,800 | \20,350 |
中綿素材 | 800フィルダウン 90% , フェザー 10% | 800フィルパワー・ダウン100% | ダウン80%、フェザー20% | 1000FPヨーロピアングース | 800フィルパワー EXダウン |
シェル素材 | 10D リップストップナイロン | 10Dナイロン100% | ナイロン100% | 7D Atmos™ ナイロンリップストップ | 20Dナイロン |
フード | なし (フーディタイプあり) | あり | なし | あり | なし |
マウンテンハードウェア ゴーストウィスパラージャケット
このジャケットは、平均重量は236gと非常に軽く、コンパクトに収納可能なため、秋冬の登山における防寒着としておすすめです。800フィルパワーのQシールドダウンを使用し、撥水加工が施されているため、濡れてもロフトを保ち続け断熱性の損失を防ぎます。また、リサイクルナイロンを使用した10デニール×10デニールのリップストップ生地が採用されており、耐久性と軽量性を兼ね備えています。
パタゴニア アルプライト・ダウン・プルオーバー
224gと非常に軽量でコンパクトに収納可能なダウンジャケットです。800フィルパワーのダウンを使用し、冷涼な天候下でも優れた保温性を発揮します。PFCフリーの耐久撥水加工が施されており、登山でのハードな使用時に気になる耐久性も兼ね備えています。異なるキルトパターンによって動きやすさと保温性を両立しており、おすすめの1着です。
THE NORTH FACE ライトヒートジャケット
軽量かつ高い保温性を誇るインナーダウンジャケットです。重量はわずか約205gで、今回ご紹介するダウンの中で最軽量でありながら、高品質なダウンを使用しているため、優れた保温性を提供します。ダウンが偏りにくいキルトデザインにより、均一な暖かさを実現し、小雨にも対応できる撥水加工が施されています。
Rab ミシックGジャケット
極めて軽量で高い保温性を誇るダウンジャケットです。このジャケットは、高級な1000フィルパワーのヨーロッパ産グースダウンを使用しており、優れた暖かさと軽量性を実現しています。重量はわずか277gで、携帯性にも優れています。内側にはRab独自のTILT(熱反射技術)が施されており、体温を効率的に反射して保温効果を高めます。
モンベル ライトアルパインダウン ジャケット
軽量で高い保温性を備えたダウンジャケットです。800フィルパワーの高品質EXダウンを使用し、優れた保温力を発揮します。独自のボックス構造により、ダウンの片寄りを防ぎ、効率的に熱を保持します。また、シングルキルト構造で縫い目を最小限に抑え、コールドスポットを減らすことで保温性能を向上させています。モンベルならではの低価格で、コストパフォーマンス抜群の1着です。
秋におすすめのアクティブインサレーション
メーカー | Rab | パタゴニア | モンベル | THE NORTH FACE | NORRONA |
商品名 | Xenair Alpine Light Insulated Jacket | ナノエアライトハイブリッドフーディ | EXライト サーマラップ ジャケット | ベントリックスジャケット | falketind Octa Jacket |
イメージ | |||||
重量(g) | 293g | 335g | 163g | 260g | 264g |
価格(税込) | \26,400 | \40,700 | \15,400 | \28,600 | \31,900 |
中綿素材 | 40グラム・フルレンジ・ポリエステル | ストレッチ エクセロフト | VENTRIX ECO(ポリエステル100%) | TEIJIN Octa(ポリエステル) | |
素材 | 表:20D Pertex Quantum Air 裏:20Dナイロン | 30D ポリエステル | 表:20Dナイロン | 15D Mechanical Stretch Breathable Recycled Nylon | PERTEX® 51% RECYCLED NYLON / 49% NYLON |
フード | あり | あり | なし | なし | なし |
Rab Xenair Alpine Light Insulated Jacket
合成インサレーションを使用した軽量なジャケットで、優れた保温性と通気性を提供します。このジャケットは、濡れても保温力を維持できる特徴があり、風に対する抵抗力も高いです。外側のシェルは通気性があり、激しい活動中でも蒸れにくく快適に過ごせます。
パタゴニア ナノエアライトハイブリッドフーディ
冷涼な天候下での激しい運動や高所での使用に最適なジャケットです。テクニカルなR1エアのニットパネルが保温性、伸縮性、通気性を提供し、激しい運動中でも快適に過ごせます。レイヤーを着替えることなく、運動中も静止中も体温を適切に維持できる設計となっています。
モンベル EXライト サーマラップ ジャケット
軽量で薄手の化繊綿入りジャケットで、行動中に着続けられるよう設計されています。独自の中綿素材「ストレッチ エクセロフト®」を使用し、保温性と通気性を絶妙に両立させています。この素材は濡れに強く、速乾性も高いため、汗や雨にさらされても保温力を維持します。ジャケットはコンパクトに収納可能で、春・秋のトレッキングや夏季の高山ではアウターとして、冬山では中間着として一年を通じて活躍します。
THE NORTH FACE ベントリックスジャケット
アクティブインサレーションを採用した軽量なジャケットで、通気性と保温性のバランスに優れています。中綿には「ベントリックスエコ」を使用し、濡れに強く、内ポケットに収納可能なパッカブル仕様で携行性に優れています。表地にはストレッチナイロンを使用し、動きやすさを確保。フロントのダブルスライダージップやバラクラバ型フーディにより、体温調節が容易です。
NORRONA falketind Octa Jacket
軽量で通気性に優れた化繊ジャケットです。裏地に使用されているOCTA素材は、中空で8本の突起を持つ繊維で構成されており、軽量ながらも高い保温性を提供します。また、サイドパネルと袖口にはストレッチ性のある素材を使用しており、動きやすさとフィット感を向上させています。