春や秋の登山は、残雪や新緑、紅葉など美しい自然が楽しめる時期ですが、気温や天候の変化が大きいため、適切な服装選びがとても重要です。初心者の方も安心して楽しめるように、頭から足元までの基本アイテムやレイヤリングのコツを分かりやすく解説します。
この記事を読めば、春や秋ならではの登山を安全かつ快適に楽しむための準備がバッチリ整います!ぜひ参考にして、安全で快適な登山で美しい自然を楽しみに山に出かけてみてください!
まずは、1000m〜2000mの標高においての体感温度を考えよう

100m標高を上げると0.6℃気温が下がると言われています。また風速1m/sで体感温度が1℃下がると言われています。上の写真は5月の武甲山登山で1200m付近の登山道です。足元にはまだ雪が付いています。
※横スクロールで表がスクロールできます。
山の名前 | 金時山 | 石割山 | 赤城山|黒檜山 |
標高 | 1,212m | 1,412m | 1,828m |
登山口の標高 | 650m | 990m | 1369m |
標高差 | 562m | 422m | 459m |
気温差(0.6×0.01×標高差) | 3.3℃ | 2.5℃ | 2.75℃ |
4月の頂上付近の気温 | 9℃ | 5℃ | 3℃ |
3つの山の頂上付近の気温と、登山口との気温差を表にまとめてみました。登山口から頂上までの標高差はどの山も同じぐらいですが、標高が高い山の頂上付近の平均気温は低いことがわかります。標高が高くなる分、防寒着と汗をかかないためのレイヤリングに注意を払う必要が出てきます。
またどの山も登山口と頂上の気温差は約3℃、風が吹くことも考えると約5℃気温差があると考えて、防寒着とウィンドブレーカーを必ず持ち歩くようにしましょう。
春や秋における登山の服装を総まとめ!
まずは、必要になるウェアを体の部位ごと簡単に表にまとめましたのでチェックしてみてください。
この後、アイテムごとに詳しく解説とおすすめ商品の紹介をしていきます!気になるアイテムが見つかったら、ぜひ下へスクロールしてみてください。また、より詳しい解説やおすすめ商品は別記事で詳細に解説していますので、そちらも合わせてご覧ください!
アイテム | イメージ | 春秋の登山における使用シーン | 求める性能 | 備考 | |
①ヘッドウェア(頭・顔) | 登山キャップ | ![]() | 気温が下がらない季節や中低山なら | 遮光性 | 基本の登山装備 |
防寒キャップ | ![]() | 中低山でも気温が下がる懸念があるなら | 保温性 | 残雪の中低山や春先や秋に活躍 | |
ビーニー(ニット帽) | ![]() | 冬に近い季節や雪の恐れがある高山で | 保温性 | もしもの際の防寒装備 高山では春秋でも雪の恐れがあるので携行するように | |
②アイウェア | サングラス | ![]() | 常に | 紫外線カット | 基本の必携装備 |
③トップス | ドライレイヤー | ![]() | 汗処理に特化 | 吸湿速乾性 | 汗をかきやすい方はあると快適 |
ベースレイヤー | ![]() | 常に、汗処理 | 吸湿速乾性 | 最高気温に合わせて、半袖or長袖を選択 | |
長袖シャツ | ![]() | 2枚目の行動着として | 吸湿速乾性 | 気温が微妙で、ベースレイヤー+ミドルレイヤーだけでは温度調節が難しいときに | |
ミドルレイヤー(アウター) | ![]() | 寒いときや休憩時 | 保温性 透湿性 動きやすさ | フリースやソフトシェルなど。春秋はこれが基本のアウターになる。 | |
レインウェア | ![]() | 荒天時備えて携行 | 撥水性能 | 雨により体を濡らしてしまうことを防ぐ 雨ならレインウェア、雪が予想されるならハードシェルを携行 | |
アウター(ハードシェル) | ![]() | 荒天、特に雪に備えて携行 | 防風性 撥水性 透湿性 堅牢性 | ゴアテックスなどのハードシェル 雪が予想されるならハードシェルを携行 | |
保温着 | ![]() | 気温の低下が予想される場合の休憩時 | 保温性 携行性 | ダウンや化繊ジャケットがあると安心 | |
④グローブ | インナーグローブ | ![]() | 常に | 吸湿速乾性、操作性 | 手のベースレイヤー、スマホ操作などできるものを。予備グローブも必携。 |
ミドルグローブ | ![]() | インナーグローブだけでは冷える時 | 保温性 透湿性 操作性 | 樹林帯や中低山などでは単独使用も | |
⑤パンツ (下半身) | ベースレイヤー | ![]() | 気温の低下が予想される場合 | 保温性 吸湿速乾性 | トレッキングパンツだけでは寒い場合に着用 |
トレッキングパンツ | ![]() | 常に | 吸湿速乾性 動きやすさ | 気温に合わせた厚さのものを | |
ダウンパンツ | ![]() | 気温が冷え込んだ時の休憩時 | 保温性 携行性 | 気温がひどく冷え込むことが予想される場合には携行すると安心 | |
レインパンツ | ![]() | 荒天に備えて携行 | 撥水性能 | 急な荒天に備えて携行 | |
⑥靴下 (足) | 登山ソックス | ![]() | 常に | クッション性 | 靴との相性を考慮 |
ゲイター | ![]() | 残雪やぬかるみ対策 | 防水性 | 残雪やぬかるみが予想されるなら着用 |
それでは!各部位ごとに詳しく解説していきます!
1. ヘッドウェア(頭・顔)
春や秋の登山では、天候や気温が不安定で変化しやすいため、状況に応じて適切にヘッドウェアを使い分けるようにしましょう。
キャップは日差し対策に適しており、春の強い紫外線や秋の低い日差しから頭部を守ります。通気性が良く、行動中の快適さを確保しますが、保温性はないので気温が下がらない場合に限ります。
一方で、防寒キャップは耳当てや裏地付きで保温性が高く、朝晩の冷え込みや風が強い環境に適しています。春の残雪期や秋の紅葉の時期などは、標高に応じて防寒キャップを選択するといいでしょう。
さらに、ビーニー(ニット帽)はコンパクトで保温力が高く、標高の高い場所や休憩時に最適です。気温低下が見込まれる場合には、万が一のために携行するといいでしょう
~登山の基本アイテム~ 『キャップ』

・ 特徴: 紫外線対策が主目的。春は日差しが強くなるためUVカット機能が重要。秋は風を防ぐタイプがおすすめ。
・ 用途:頭部の日焼け防止や熱中症対策。風で飛ばされにくいデザインを選ぶと便利。保温性能はないため、あたたかいことが確実である時に使用。
~寒さが予想されるなら~ 『防寒キャップ』

・ 特徴: 前方にツバがあり、日差しを遮る効果がある。冬用は耳あて付きや裏地がフリースになっているものもある。
・ 用途:残雪期の日差し対策が必要な晴天時や、春・秋の肌寒い季節に。レインウェアのフードと併用する際に便利。
~気温が低い場合や高山への登山では~ 『ビーニー(ニット帽)』

・特徴: シンプルなデザインで、頭部全体を覆うことで保温性が高い。耳までしっかりとカバーできるものが多く、強風時にも飛ばされにくい。
・用途: 頭部の保温が主な目的。春・秋でも寒くなる高山などの登山に。
2. アイウェア(目)
春や秋に限らず登山では、紫外線対策と目の保護にサングラスは欠かせないアイテムです。
特に、春は日差しが強くなり、秋は低い角度からの光が目に入りやすいため、紫外線カット機能付きのサングラスがあった方がいいでしょう。
また、標高が高いほど紫外線量が増えるため、目を守る重要性が高まります。さらに、風や砂埃から目を保護し、視界をクリアに保つ役割も果たしてくれます。
~登山の必須装備~ 『サングラス』

・ 特徴: 雪面反射も含めて紫外線から目を守る。着脱が容易で、長時間の使用でも負担が少ない。
・ 用途: 晴天から曇りまで幅広く使用。特に、残雪がある場合には必須。
3. トップス(上半身)
トップスの使い分け(レイヤリング)について
春や秋の登山では、トップスをレイヤリングして気温や運動量に応じた調節が重要です。行動中の基本的な考え方は以下の通りです。
ドライレイヤーは、汗を素早く吸収・拡散し、汗冷えを防ぐことに特化したものです。汗をかきやすい方はそのおすすめです。
ベースレイヤーは保温性と吸汗速乾性を備えたもので、体温調節の基盤となります。春秋には中厚手のメリノウール素材が適しているでしょう。
次に着る長袖シャツは、防風性や通気性が高く、紫外線や虫刺されから肌を守る役割を果たします。ベースレイヤーにもう一枚追加したい場合に行動着として着用します。
さらに、ミドルレイヤーは保温性と通気性のバランスが良いものを選び、寒暖差が大きい環境や風が強い稜線で活躍します。
万が一の荒天に備えて雨具や防寒着を携行しましょう
春や秋の登山では、荒天に備えた防寒着と保温着を携行することも重要です。
レインウェアは防水性と透湿性に優れ、雨や風から体を守るだけでなく、寒さ対策としても活躍します。軽量でコンパクトに収納できるものが便利です。
ハードシェルジャケットはさらに高い防風・防水性能を持ち、耐久性にも優れています。特に強風や稜線歩きなど厳しい環境下に行く場合には、レインウェアではなくハードシェルをおすすめします。
また、急な気温低下のために保温着としてダウンジャケットを携行するようにしましょう。軽量かつ高い保温力を持ち、コンパクトに収納できます。ただし、水濡れや湿気に弱いため注意が必要です。
~汗処理特化型ベースレイヤー~ 『ドライレイヤー』

・ 特徴: 汗を素早く吸収・拡散し、肌をドライに保つ。汗冷え防止に効果的。
・ 用途: ベースレイヤーの下に着用し、汗による体温低下を防ぐ。必須ではないが汗をかきやすい方におすすめ
~保温性能と汗処理~ 『ベースレイヤー』

・ 特徴: 汗を素早く肌から遠ざけるための最初の層。撥水性や疎水性が高い素材が使われており、汗冷えを防ぐ。春秋は中厚手のメリノウール素材が最適。
・ 用途:常に肌と接触し着用する。登山中にかいた汗を素早く吸収して蒸発させることで、体温低下を防ぐ。
~中途半端な気温の時にさらっと温度調節を~ 『長袖シャツ』

・ 特徴: 防風性や通気性に優れた素材が多い。紫外線や虫刺されから肌を守る役割も。
・ 用途:ベースレイヤーでは寒いが、ミドルレイヤーを着るほどではないような温度調整の難しい時に。行動中の快適さを保ちながら、肌トラブルを防ぐために着用。
~常に活躍する万能な一着、保温性と吸湿速乾性を~ 『ミドルレイヤー』

・ 特徴: 保温性を担うウェアで、汗処理機能(吸湿・速乾性)や通気性も求められる。フリースやソフトシェルが代表的。ダウンは濡れると保温力が低下するため、行動中には不向き。
・ 用途:寒暖差や運動量に応じて着脱しやすい設計で、快適な体温維持をサポート。稜線歩きなど風が強い場面や寒暖差が大きい環境で活躍。
~もしもの荒天に備えて携行必須~ 『レインウェア』

・ 特徴: 防水透湿性が高く、コンパクトに収納可能なものがおすすめ。
・ 用途: 雨天時だけでなく、防風シェルとしても使用可能。もしくは、ウィンドブレーカーをレインウェアとしても活用可。
~万が一の過酷な環境から身を守る~ 『アウター(ハードシェル)』

・ 特徴: 防風・防水性能が高く、雪や雨から身体を守る役割。ゴアテックスなどの透湿防水素材が一般的で、ハードシェル(雪山用)が安心です。
・ 用途:強風や降雪など厳しい環境下で体温低下を防ぎます。透湿性によって内部の蒸れを軽減しつつ、防水機能で外部からの水分侵入を防ぐため、雪の心配がある場合にはレインウェアの代わりに携行。
~休憩時の体温維持に~ 『保温着(ダウン)』

・ 特徴: ダウンは軽量かつ高い保温性を持ち、コンパクトに収納可能で携行性に優れています。ただし、水に弱く濡れると保温力が著しく低下するため、撥水加工や防水対策が重要です。
・ 用途:主に休憩時やテント泊など、静止状態で体温を維持するために使用します。行動中は汗で濡れるリスクがあるため不向きで、バックパックに携行し必要時に着用するのが基本です。
4. グローブ(手)
手は細かい作業が必要になるため、操作しやすさと保温性の両方が求められます。また、汗処理から手袋でもレイヤリングが重要になり、いくつかの手袋を重ねて着用します。
グローブの使い分けについて
樹林帯や中低山の登高時には、気温や風の強さに応じてインナーグローブ単体、もしくはミドルグローブ単体での使用が一般的です。標高が上がるにつれ、ミドルグローブを重ね保温力が必要になることもあります。
特に、インナーグローブは汗や雨雪で濡れると凍傷リスクが高まるため、予備を携行するといいでしょう。
~冷えやすい末端を保護し、汗を処理する~ 『インナーグローブ』

・ 特徴: 吸湿速乾性のある薄手のグローブで、汗を素早く吸収・拡散し、肌をドライに保つ。吸湿速乾性や撥水性に優れた化学繊維やウールが一般的。
・ 用途:活動中は常に着用、登高中はいインナーグローブだけになることも。スマホやGPSを操作したり、水筒などザック内の荷物を扱う場合の操作性が重要。
~単体でもレイヤリングでも活躍~ 『ミドルグローブ』

・ 特徴: 保温性と操作性を兼ね備えた中厚手グローブ。インナーグローブから出た湿気を逃がす役割も。ウールやフリースなどの保温性と通気性を兼ね備えた素材。
・ 用途: インナーグローブだけでは寒い場合などに使用。樹林帯登高中の単独使用や、寒ければインナーグローブと重ねて使用。
5. パンツ(下半身)
春や秋の登山では、パンツのレイヤリングも快適さと安全性を保つポイントです。
ベースレイヤーは肌に直接触れる層で、吸汗速乾性と保温性を兼ね備えた薄手のものが適しています。特に寒冷地や朝晩の冷え込みが予想される場合に役立ちます。
トレッキングパンツは、ストレッチ性や速乾性、防風性能を備えたものが最適です。春秋は裏起毛タイプや中厚手の素材を選ぶことで、寒暖差にも対応できます。
さらに、停滞時や寒冷地ではダウンパンツが活躍します。軽量で高い保温力を持ち、休憩中の体温低下を防ぎます。
~着脱しにくい下半身の快適性を~ 『ベースレイヤー』

・ 特徴: 肌に直接触れるインナータイツやレギンス。吸汗速乾性と保温性を兼ね備えた素材(メリノウールや化学繊維)が一般的。フィット感が高く、動きやすさを損なわない設計。
・ 用途: 活動中は常に肌と接触して着用。登山中の汗を吸収して蒸発させ、肌をドライで暖かく保つ。
~環境に適した保温性と動きやすさを~ 『トレッキングパンツ』

・ 特徴: ストレッチ性と速乾性があり、防風性能も備えたものがおすすめ。春秋は裏起毛タイプも有効。
・ 用途:動きやすさと快適さを確保しつつ、肌寒さにも対応できるパンツとして活用。
~休憩時の体温低下防止~ 『保温用のダウンパンツ』

・ 特徴: 軽量で高い保温性を持ち、休憩時や静止状態での体温維持に適しています。コンパクトに収納可能で携行性が高い一方、水濡れに弱いため、防水対策が必要です。
- ・ 用途: 主に休憩時やテント泊など、静止状態で寒さを凌ぐために使用します。行動中は汗で濡れるリスクがあるため不向きで、必要時に素早く着脱できる設計が便利です。
~もしもの荒天に備えて携行必須~ 『レインパンツ』

・ 特徴: 防水透湿性に優れた軽量タイプがおすすめ。雨天時だけでなく、防風にも役立つ。
・ 用途:雨天時や草木による足元の濡れ防止として使用可能。
6. 靴下(足元)
~保温性とクッション性を~ 『登山ソックス』

・ 特徴:ウールや化繊素材が主流。吸湿性と速乾性を備え、汗冷えを防ぐ。クッション性もあり、長時間の歩行で足を保護する役割。
・ 用途: 足先の冷えや靴擦れを防ぎ、足元を快適に維持するために使用。登山靴との相性を考慮して選ぶ。
~足元の安全と快適を~ 『ゲイター』

・ 特徴: 防水・防汚性能があり、小石や泥、雪の侵入を防ぐために役立つアイテム。
・ 用途:足元を守りながら、悪天候時でも快適な歩行をサポートするため使用する。
まとめ
春・秋の登山では、適切な服装選びが快適さと安全性を保つ鍵となります。頭部、上半身、手、下半身、足元それぞれに適したアイテムを選び、レイヤリングシステムを活用することで、気温や天候の変化に柔軟に対応できます。
初心者の方は、まず基本的な装備を揃え、無理のないコース選びや経験者との同行を通じて少しずつ経験を積んでいくことをおすすめします。安全第一で、春や秋ならではの自然の美しさを楽しむ登山を満喫してください。