「日帰り登山や山小屋泊登山からステップアップしたい」「憧れのテント泊にチャレンジしたいが、何をどう準備していいかわからない」
本格的な登山シーズンを迎え、今年こそテント泊デビューをしようとお考えの方も多いのではないでしょうか。
しかし、テント泊登山を無計画に実践すると、場合によっては命の危険にさらされるリスクがあります。
そこでこの記事では、初めてのテント泊登山に向けて、必要な心構えや注意点、最低限知っておきたいルールやマナーなどを紹介し、無理なくテント泊登山ができるよう導きます。
テント泊登山をやってみたい方、興味のある方はぜひ参考にしてください。
テント泊登山の魅力
テント泊の魅力はなんといっても、大自然の中にどっぷりと身を浸す感覚にあるのではないでしょうか。外界と自分を遮るのは、わずかな布1枚だけ。大地に身を横たえ、天空を仰ぎ見るようなゾクゾクする感触は、テント泊登山の醍醐味です。
2.自由度の高い登山が楽しめる
テント泊登山は、行程も食事もすべて登山者が自由に決められます。マイペースに登山を楽しみたい方、山の中に深く身を浸したいと思う方におすすめです。
3.プライベートが確保されている
近年は個室のある山小屋が増えてきましたが、基本的に山小屋泊は相部屋のため、知らない人と布団を並べて寝ることになります。
テント泊は狭くともテント内のプライベートは確保されているため、個の空間を重視する若い登山者に好まれるようです。
4.山小屋泊より経済的
テント泊の料金は、500円~4000円くらいとテント場によってまちまちですが、それでも山小屋泊に比べれば安価です。
食事も自由に調整できるので、週末ごとに宿泊を伴う登山を行う方などにとっては費用が掛からず経済的に登山が楽しめます。
テント泊登山と山小屋泊の違いと注意点
テント泊には山小屋泊にはない魅力がありますが、一方で、山小屋泊に比べて注意しなければならないリスクやデメリットがあります。
1.重い装備を担いで歩き通さなければならない
テント泊登山の最も大きな特徴は、テントという「家」とシュラフという「寝具」、食料や水、燃料、カトラリーなど「食事」にまつわるもの、さらに着替えや保温着などの「衣料」をすべて背負って長時間歩き続けなければならないことです。
一方、山小屋は安全な「家」であり、寝具、食事、場合によってはお風呂もあるため、荷物はテント泊よりずっと少なくて済みます。
つまり、テント泊は「衣食住」すべてを自力で用意し、なおかつそれらをすべてコンパクトにまとめて背負い、長時間歩かなくてはなりません。
重い荷物を担いで歩き通す体力と精神力、登山スキルが必要です。
2.コースタイムが通常よりもかかる
テント泊登山では重い荷物を担いで歩くため、通常より歩くペースが遅くなります。そのため、コースタイムが標準の2~3割増しになると考え、余裕を持った行程を組まなくてはなりません。
到着時刻から逆算して出発時刻が大幅に前倒しになったり、コースや山の変更をせざるを得なくなったりすることがあるので、事前にしっかりと計画を練るようにしましょう。
3.すべての作業を自分でやらなくてはならない
当たり前のことですが、テントの設営や食事の準備、水の確保、後片付け、撤収作業など諸々の作業をすべて自分でやらなければなりません。
逆に言うと、これらの作業を自分でできない、誰かにやってもらうつもりでいるうちは、テント泊登山には行けないと思っていた方がいいでしょう(子供を除く)。
初めてテント泊登山にチャレンジする方は、ぶっつけ本番とならないよう、テントの設営と撤収、調理とその後片付け、重い荷物を担いで歩くトレーニングなど、段階を踏んで練習を重ねておくようにします。
4.悪天候への備えが必要
山の中は街と異なり、いろいろと不便ですが、テント泊はその不便さを楽しむものです。しかし、テント泊初心者の方にとって、なかなか楽しむ境地になれないのが天候です。
テント泊は天気の影響をダイレクトに受けてしまうため、雨や風、雪などに対し、不快な思いや、場合によっては恐怖を抱く可能性があります。悪天候に対し、どう対応するか、知識を含め備えが必要です。
5.初期費用がかかる
テント泊は、宿泊料金こそ安いものの、はじめに様々な道具を買いそろえる必要があり、初期費用がかかります。最初は最低限必要なものだけを買い、徐々に買い足していくのがいいでしょう。
知っておきたいテント泊のルールとマナー
山であればどこでも自由に野営ができるわけではありません。テント泊ができない山や、テント泊ができる山でもテントを設営していい場所と、してはいけない場所があります。
実際にテント泊登山をする前に、最低限知っておきたいテント泊のルールとマナーを紹介します。
1.テント泊は登山の一行程にすぎない
登山におけるテント泊は、オートキャンプやファミリーキャンプと異なり、キャンプすること自体が目的ではありません。宿泊の手段の1つであり、登山全体の一行程であることを忘れないようにしましょう。
2.テントはテント場に張る
テントはキャンプ指定地に張り、指定地以外にテントを張ることは原則として違法です。ただし、道に迷ってしまったなど危険な状態にある時は、緊急避難として指定地以外でのテント泊が認められています。
また、雪山登山、バリエーションルートでの登攀など難易度の高いアクティビティでは、近くにキャンプ指定地がない場合も多く、指定地外でのテント泊が黙認されています。
しかし、これからテント泊にチャンレンジしようとする方はまず、キャンプ指定地でテント泊をしましょう。
キャンプ指定地は山小屋が管理していることが多く、場所も山小屋近くにあることが多いです。受付も山小屋で行っているため、テント場に到着したらまず山小屋で受付の手続きを済ませ、料金を支払ってからテントの設営をしましょう。
3.テント場の予約の有無や営業期間などを事前に確認しておく
テント場には、予約が必要なところと予約なしで利用できるところがあります。
また、営業期間が4月~11月で冬季は休業だったり、通年営業だったりと、こちらもテント場により異なります。
料金もテント場により大きく異なりますが、受付時に現金で支払うのが一般的です。
さらに、テント場によっては、管理している山小屋の食事が予約制で食べられたり、お風呂に入れたりするところもあります。
しかし、テント場利用者は、売店、水場、外来用トイレ以外は利用できないのが一般的です。
詳細は、テント場によって異なるため、HPなどで必ず事前に調べておきましょう。
4.テントを張る場所は先着順!14時到着がベスト
山のテント場はオートキャンプ場などと異なり、区画が区切られていることはほとんどありません。
事前予約制のテント場であっても、テントの設営場所は先着順となるため、いい場所を取りたいと思ったら、テント場に早めに到着することが必要です。
テントの設営に最低でも30分はかかることを見越して、テント場には14時頃に到着することを目安に計画を立てるといいでしょう。
5.水を確保する
テント泊にとって水の問題は重要です。テント場によって水場のある所とない所があり、ない所では山小屋で水を購入するか、水を持参しなくてはなりません。
しかも、水場がある場合でも、冬季は凍結により水が使えないことがあります。山小屋で水が購入できる場合でも、売り切れなど何らかの事情で手に入らないこともあります。
テント場到着から翌朝まで、調理を含めて最低でも2リットルの水は必要です。水場が利用できるかなど、山小屋に電話して最新の情報を得るようにしましょう。
また、沢の水は、生で飲むのはNG。煮沸してから、もしくは浄水フィルターを使ってから飲むようにします。
6.水場で食器洗いはNG
テント泊の大きな楽しみである食事。食べ終わった食器は、基本水洗いしません。食器は、汚れをティッシュペーパーなどで拭ってから袋に入れて持ち帰るのが一般的です。
汚れが出ないようパンで拭うなど、普段からきれいに食べきる工夫をしましょう。
7.テント泊にお風呂はない
テント場には基本、お風呂はないと思ってください。管理している山小屋にお風呂がある場合でも、山小屋に泊まっている人専用であることが多いです。汗をタオルで拭ったり、着替えたりしてしのぎましょう。
8.お互いに気をつけたいテント場の騒音
テント場の起床時間、就寝時間にルールはなく、登山者によってまちまちです。しかし、山の時間は下界よりも早く、翌朝日の出前に出発する人もいます。
夜は20時にはテントに入り、休むようにしましょう。
明かりや話し声は、思っている以上に周囲へストレスをかけています。いびきやトイレへの足音なども気になるようなら、耳栓を持参するのがおすすめです。
テント泊は中級者のステップアップにおすすめ
オートキャンプをやりなれた方でも、登山そのものの経験がなければ、テント泊登山はできません。
テント泊登山は、日帰り登山や山小屋泊登山の経験があり、次のような知識やスキルを身に着けた中級者のステップアップとしてとらえるといいでしょう。
1.疲れない歩き方とペース配分ができる
テント泊では重い荷物を背負って長時間歩くため、疲れない歩き方が身についていないとバテてしまいます。
また、鎖場や岩場、梯子、雪渓など難所と呼ばれるところは歩き方にコツがある上、ペース配分や休憩の取り方も、長い距離を歩くには大切なポイントとなります。
重い装備を背負って歩くテント泊では、足と上半身の負担を減らすため、トレッキングポールを使うのもおすすめです。
こちら↓の記事で復習しておきましょう。
2.地図読みとルートファインディングができる
地図が読め、正しいルートファインディングができることは、遭難や道迷いを防ぎ、安全な登山を行う上でなりよりも大切です。
こちら↓の記事で復習しておきましょう。
3.登山適期を知っている
山の上の四季は、街の四季とズレています。街では春たけなわの4~5月は、高山ではまだ冬です。
テント泊デビューは夏がおすすめですが、8~9月は雨が多く、計画の変更を余儀なくされることもあります。
どの山にいつ登るか計画を立てる際、こちら↓の記事で復習しておきましょう。
4.適切なパッキング方法を知っている
重装備となるテント泊ですが、適切なパッキング方法で体への負荷を極力減らすとともに、必要な荷物をすぐに取り出せるようにしておくことが大切です。
最近は装備の軽量化がうたわれ、テント泊登山においてもできるだけ軽量なギアやウェアを持参することが人気を集めています。
装備に関しては、最初は基本的なものを準備し、経験を重ねるに従い徐々に使いやすいもの、軽量なものへとシフトしていくようにするといいでしょう。
こちら↓の記事を参考にしてください。
5.情報を収集して計画を立てられる
テント泊登山では、登山ルートやテント場の選択など山行計画を立てることは非常に重要です。
初めてのテント泊ならなおのこと、自分のスキルにあった山を選ばなくてはなりません。登ろうとしている山の難易度を知り、コースタイム、累積標高、総距離、水場などの情報を集める必要があります。
地図や地図アプリ、ガイドブックやインターネット情報などを駆使してプランを立てましょう。
こちら↓の記事で復習を。
今から持っていて損はない!初心者におすすめのテント泊ギア
まだ、テント泊の具体的な装備は準備していなくても、普段使いや日帰り登山にも利用できて便利な、おすすめのグッズを紹介します。
山旅 ダイニーマ製リバーシブルピロー
テント泊では、その日の疲れを取り、翌日の山行に備えるためにも、しっかりとした質の良い睡眠をとることが大切です。
快適な睡眠のためには、シュラフやテントマットだけでなく、枕も重要なアイテムの1つ。
山旅のダイニーマ製リバーシブルピローは、普段はコンパクトな防水スタッフサックとして使え、ザック内の荷物の収容に大活躍します。
このスタッフサックを裏返しにし、ウェアなどを適宜入れてカサを出せば、就寝時の枕に大変身。
シュラフのフードの中に入れたり、製品と一緒についてくるバンジーコードでマットと固定させたりして使います。
1品で枕にもスタッフサックにもなる一石二鳥アイテムのため、装備の軽量化にも役立つ優れモノです。
山旅 ULテントマット1.5厚
山旅のULマットは軽量&リーズナブルな上、自分の好みのサイズにカットできるのが魅力です。
厚みのバリエーションは1.5㎝厚から0.5㎝厚まで5段階もあり、薄くなるほど軽量になります。
テント泊が初めての方は、最も寝心地が良く、3シーズン使える1.5㎝厚がおすすめです。
山旅のULマットはテントマットして使うほかにも、山ごはんや休憩時に座布団として使ったり、丸めたまま椅子代わりとして使ったりすることができます。
また、ビバーグ時にマットを体に巻いて温めることも可能。
今から持っておけば庭やキャンプ場でテント泊の練習をする時に使える上、日帰り登山の山ごはん時にも使えます。
山旅 ダイニーマ製ペグサック
ペグをまとめて収納できるペグケースです。ペグのほか、スマホやモバイルバッテリー、タオル、小物類など濡らしたくないこまごまとしたものを収納できます。
失くしやすいものをまとめて収納できるので、普段使いにもおすすめです。
まとめ:テント泊登山への第一歩を踏み出そう
テント泊登山を実現するためには、焦らず、少しずつ、準備と練習を重ねていくことが大事です。
本記事でテント泊のイメージがつかめたら、装備の準備と具体的な山行計画へと足を踏み出しましょう。