登山を始めたいけど、どんな服装が必要か知っていますか?登山の服装は、快適さだけでなく、安全性にも直結する重要なポイントです。
標高や風による体感温度の影響は大きく、住んでいる平地の季節と山の季節は全く異なることもしばしばです。暑くて汗をかいても良くない、けれども万が一の天候不良などで寒くなっては危険な状況に陥ってしまいます。登山における服装は「レイヤリング」を基本に、予想されるあらゆる環境に対応できる必要があります。
本記事では、初心者の方にも分かりやすく、標高と体感温度の関係や服装選びの基本を解説します。さらに、季節別のおすすめスタイルや全てのアイテムの役割も網羅!これを読んで、どんな季節・天候でも安心して山を楽しむ準備を整えましょう!
山で快適に過ごすために、標高と風と体感気温の関係

一般的に標高が100メートル上昇するごとに、気温は平均で約0.65°C低下します。ただし、空気が非常に乾燥している場合(高気圧下など)は、1°C/100m程度まで低下率が大きくなることがあります。逆に、湿度が高い場合や特定の条件下では、この低下率が緩やかになることもあります。
また、風速による体感温度への影響は大きく、風速1mごとに体感気温は1℃下がるといわれています。それほど強くなく風を感じる程度の5m/sでも5℃、森林限界を超え強風(10m/s程度)があたれば簡単に体感気温は10℃も下がってしまいます。
登山開始地点から頂上までどれだけの標高差があるか、それに加えて風による影響で最悪の場合体感気温はどこまで下がるかを想定するように心がけ、それに見合ったウインドブレーカーや防寒着、レインジャケットを持ち歩く必要があります。
例えば、東京(標高0m)の平均気温を基準に、1,000m高くなるごとに体感気温を計算してみると以下の表になります。計画する山の標高から、ぜひ参考にしてみてください!
標高と風速 | 1月 | 4月 | 7月 | 10月 | |||||
最高 | 最低 | 最高 | 最低 | 最高 | 最低 | 最高 | 最低 | ||
0m (東京) | 風速0m | 10 | 5 | 18 | 14 | 30 | 26 | 21 | 17 |
風速5m | 5 | 0 | 13 | 9 | 25 | 21 | 16 | 12 | |
1,000m (妙義山) | 風速0m | 4 | -1 | 12 | 8 | 24 | 20 | 15 | 11 |
風速5m | -1 | -6 | 7 | 3 | 19 | 15 | 10 | 6 | |
2,000m (雲取山) | 風速0m | -2 | -7 | 7 | 3 | 19 | 15 | 10 | 6 |
風速5m | -7 | -12 | 2 | -2 | 14 | 10 | 5 | 1 | |
3,000m (槍ヶ岳) | 風速0m | -8 | -13 | 1 | -3 | 13 | 9 | 4 | 0 |
風速5m | -13 | -18 | -4 | -8 | 8 | 4 | -1 | -5 |
登山の服装選びの重要ポイント!

1. レイヤリング(重ね着)の活用
基本構造: ベースレイヤー(汗を吸収・速乾)、ミドルレイヤー(保温)、アウター(防風・防水)の3層構造を基本とし、状況に応じて調整します。
柔軟性: 気温や運動量に応じて脱ぎ着しやすい服装を選ぶことで、体温調節が容易になります。
2. 汗冷え対策と快適性
汗をかいたまま放置すると体温が奪われ、低体温症のリスクが高まります。吸湿性・速乾性の高い素材(ポリエステルやウール)を選び、綿素材は避けるのが基本です。
登山中は運動量が多くなるため、通気性の良い服装で蒸れを防ぐことが重要です。特に夏場は軽量で通気性の高い素材を選び快適な環境を維持しましょう。
3. 防寒・保温
高所や早朝・夕方は気温が急激に下がるため、保温性の高い服装が必要です。特に冬や高山ではダウンやフリースなどの保温着が必須です。
顔や手足など末端部の防寒も忘れずに行いましょう(ニット帽、バラクラバ、手袋など)。
4. 防風・防水性能
雨や風から身体を守るため、防水透湿性素材(例: ゴアテックス)を使用したアウターやパンツを選びます。
急な天候変化にも対応できるよう、レインウェアは必携です。
5.紫外線対策
高山では天候によらず紫外線が強いため、登山キャップやサングラス、長袖シャツなどで肌や目を保護します。雪山ではゴーグルも必要です。
6.動きやすさと耐久性
登山では激しい動きや摩擦が多いため、伸縮性があり耐久性の高い素材の服装を選びます。特にパンツやジャケットはストレッチ素材がおすすめです。
7.軽量かつコンパクト
荷物を減らすために軽量で収納しやすい服装を選びます。特にダウンジャケットなどはコンパクトに収納できるものが便利です。
8. 非常時への備え
予備の保温着や手袋、防寒キャップなどを携行し、不測の事態にも対応できるよう準備しておきます。
登山の服装総まとめ!
アイテム | イメージ | 使用時期 | 求める性能 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|
①ヘッドウェア(頭・顔) | 登山キャップ | ![]() | 春~夏~秋 | 遮光性 | 基本の登山装備 |
防寒キャップ | ![]() | 秋~冬~春 | 保温性 | 冬の低山や春・秋に活躍 | |
ビーニー(ニット帽) | ![]() | 冬 | 保温性 | 冬の基本装備 | |
バラクラバ | ![]() | 冬 | 保温性 防風性 | 極寒暴風時に活用 | |
②アイウェア | サングラス | ![]() | 年間を通して | 紫外線カット | 基本の必携装備 |
ゴーグル | ![]() | 極寒・暴風時 | 紫外線カット 防風 | ヘルメットとの相性○ | |
③トップス | ドライレイヤー | ![]() | 年間を通して | 吸湿速乾性 | 汗をかきやすい方はあると快適 |
ベースレイヤー | ![]() | 年間を通して | 吸湿速乾性 | 最高気温に合わせて、半袖or長袖を選択 | |
ミドルレイヤー | ![]() | 年間を通して | 保温性 透湿性 動きやすさ | フリースやソフトシェルなど。春秋はこれが基本のアウターになる。 | |
アウター | ![]() | 秋~冬~春 | 防風性 撥水性 透湿性 堅牢性 | ゴアテックスなどのハードシェル | |
レインウェア | ![]() | 春~夏~秋 | 撥水性能 | 雨により体を濡らしてしまうことを防ぐ 雨ならレインウェア、雪が予想されるならハードシェルを携行 | |
保温着(ダウン) | ![]() | 秋~冬~春 | 保温性 携行性 | ダウンや化繊ジャケット | |
④グローブ | 登山グローブ | ![]() | 夏 | 通気性 耐久性 | 岩場や鎖場にける手の保護とグリップ強化に |
インナーグローブ | ![]() | 秋~冬~春 | 吸湿速乾性 操作性 | 手のベースレイヤー、スマホ操作などできるものを。予備グローブも必携。 | |
ミドルグローブ | ![]() | 秋~冬~春 | 保温性 透湿性 操作性 | 樹林帯や中低山などでは単独使用も | |
アウターグローブ | ![]() | 冬 | 保温性 防風性 撥水性 透湿性 | レイヤリング時のサイズ注意。ゴアテックス素材など。 | |
⑤パンツ (下半身) | ドライレイヤー | ![]() | 年間を通して | 吸湿速乾性 | 汗をかきやすい方はあると快適 |
タイツ | ![]() | 春~夏~秋 | 保温性 吸湿速乾性 | トレッキングパンツだけでは寒い場合に着用 | |
ベースレイヤー | ![]() | 冬 | 保温性 吸湿速乾性 | 汗処理のドライレイヤー+保温性のベースレイヤーでも○ | |
ショーツ (ハーフパンツ) | ![]() | 夏 | 通気性 速乾性 | タイツや長めの靴下と合わせて | |
トレッキングパンツ | ![]() | 春~夏~秋 | 吸湿速乾性 動きやすさ | 気温に合わせた厚さのものを | |
アウターパンツ | ![]() | 冬 | 防風性 撥水性 透湿性 堅牢性 | 熱がこもった際に排出しやすい換気システムがあると○ | |
レインパンツ | ![]() | 春~夏~秋 | 撥水性能 | 急な荒天に備えて携行 | |
保温パンツ | ![]() | 冬 | 保温性 携行性 | ダウンや化繊入り | |
⑥靴下 (足) | 登山ソックス | ![]() | 年間を通して | クッション性 | 靴との相性を考慮 |
ゲイター | ![]() | 年間を通して | 防水性 | ぬかるみが予想されるなら着用 |
夏の服装について

夏の登山では、暑さや汗、急な天候変化に対応できる服装が重要です。基本は「レイヤリング(重ね着)」で、以下のポイントを押さえましょう。
- : 日差しや紫外線対策として必須。
: 汗を吸収・速乾するTシャツや肌着を選びましょう。ポリエステルやウール素材がおすすめで、綿素材は汗冷えの原因になるため避けます。
: 休憩時や高所での寒さ対策に薄手のフリースや長袖シャツを携行。
: 防風・防水性能のある軽量なレインウェアを持参し、急な雨や風に備えます。
: 動きやすく速乾性のあるトレッキングパンツやショートパンツ+タイツの組み合わせが便利。
【ヘッドウェア】登山キャップ
【アイウェア】サングラス
強い紫外線から目を保護するために使用。UVカット機能があるものを選びましょう。
【トップス】ドライレイヤー
汗を素早く吸収・拡散し、肌をドライに保つためのインナー。ポリエステルなどの速乾素材を用いたメッシュ素材が最適。
【トップス】ベースレイヤー
通気性と速乾性に優れた薄手のシャツを選ぶと快適。
【トップス】ミドルレイヤー
高所や早朝・夕方など涼しい時間帯には薄手のフリースや軽量なウインドブレーカーが便利。
【トップス】レインジャケット
急な天候変化に備えて、防風・防水性能のある軽量なジャケットを携帯。
【グローブ・手袋】登山グローブ
夏場は手袋が必須ではありませんが、岩場やストック使用時には軽量なグローブ(登山グローブ)が役立ちます。
【パンツ】サポートタイツ
動きやすさと速乾性を考慮した薄手のタイツが適しています。
【パンツ】ショーツ (ハーフパンツ)
夏場には通気性が良く動きやすいショーツが便利。ただし、虫刺されや日焼け対策として、環境に応じて長ズボンも選択肢に入れるべき。
【パンツ】トレッキングパンツ
軽量で速乾性のあるパンツがおすすめ。
【パンツ】レインパンツ
雨天時や風よけとして携帯することを推奨。
【靴下・足回り】登山ソックス
吸湿性・速乾性に優れたものを選び、靴擦れ防止や快適な歩行をサポート。
【靴下・足回り】ゲイター
泥や小石の侵入を防ぐために使用。必要に応じて携帯。
春・秋の服装について

春や秋の登山は、寒暖差が大きく天候も変わりやすいため、体温調節がしやすい服装が重要です。基本は「レイヤリング(重ね着)」で対応します。
: 汗を吸収・速乾する長袖Tシャツを選び、肌をドライに保ちます。メリノウールやポリエステル素材がおすすめです。
: 保温性のある薄手のフリースや山シャツを着用し、寒さに備えます。
: 防風・防水性能のあるジャケットを携行し、風や雨に対応します。
下半身には、速乾性のあるトレッキングパンツやタイツを組み合わせましょう。また、休憩時に冷えないよう薄手のダウンやレインウェアも準備してください。春や秋は特に寒暖差が激しいため、こまめな脱ぎ着で快適に過ごせるよう工夫することが大切です。
【ヘッドウェア】ビーニー(ニット帽)
寒さが厳しい場合に頭部を保温するために使用、軽量なものを携行すると安心。
【アイウェア】サングラス
紫外線対策として必須。特に秋は日差しが低くなるため、目の保護が重要。
【トップス】ドライレイヤー
汗冷えを防ぐために速乾性の高いインナーを着用してもよい。
【トップス】ベースレイヤー
通気性と吸湿性に優れた長袖シャツがおすすめ。気温に応じて保温性も考慮して選ぶ。
【トップス】ミドルレイヤー
フリースなど、保温性のあるアイテムをベースレイヤーの上に重ね着。脱ぎ着しやすく、透湿速乾性があり軽量なモデルを。
【トップス】アウター
防風・防水性能のあるジャケットを携行。特に春・秋は風が強くなることが多いため、防風性能が重要。雪の心配があるかないかで、ハードシェルかソフトシェルか。
【トップス】レインウェア
急な雨や風よけとして、ハードシェルジャケットかレインウェアのどちらかを必ず持参。
【トップス】保温着
高所や朝晩の冷え込み時に役立つ。コンパクトに収納できるものがおすすめ。
【グローブ】ミドルグローブ
防寒用としてフリース素材などの手袋を選ぶ。
【パンツ】ベースレイヤー
気温に応じた保温性と動きやすさを兼ね備えたものを選ぶ。寒さが厳しい場合は厚手のものを使用。
【パンツ】トレッキングパンツ
速乾性と耐久性に優れた長ズボンを。下半身は脱ぎ着が面倒なため、ベースレイヤーと組み合わせて気温に適応する。ストレッチ素材だと動きやすい。
【パンツ】レインパンツ
アウターパンツもしくはレインウェアを必ず携行。
【靴下】登山ソックス
保温性と吸湿性に優れた厚手のソックスがおすすめ。
注意点
春・秋は朝晩と日中で大きく気温差が生じるため、こまめな脱ぎ着で体温調節を行うことが重要です。
高所では冬並みの寒さになることもあるため、防寒対策は万全にしましょう。
天候が急変する可能性もあるため、防水アイテム(レインウェアや防水グローブ)は必ず携行してください。
冬の服装について

冬の登山では、厳しい寒さや天候の変化に対応できる服装が必要です。基本は「レイヤリング(重ね着)」で、以下のポイントを押さえましょう。
: 汗を吸収・速乾する肌着を選び、汗冷えを防ぎます。ポリエステルやメリノウール素材がおすすめです。
: 保温性の高いフリースやダウンジャケットを着用し、体温を維持します。行動中と休憩時で使い分けられるものが便利です。
: 防風・防水性能に優れたハードシェルジャケットを用意し、風や雪から身体を守ります。
下半身も同様にタイツやトレッキングパンツ、オーバーパンツでレイヤリングします。また、ニット帽やバラクラバ、厚手の手袋、保温性のある靴下などの小物も必須です。寒さや汗冷え対策を万全にし、安全で快適な冬山登山を楽しみましょう。
【ヘッドウェア】ビーニー(ニット帽)
保温性が高く耳まで覆えるものを選ぶ。
【ヘッドウェア】バラクラバ
顔全体を覆い、防寒対策として有効。荒天時に備えて必ず携行。
【アイウェア】サングラス
雪面からの反射も含めて紫外線から目を守るため必須装備
【アイウェア】ゴーグル
荒天時や強風時にはサングラスではなく顔表面を守れるゴーグルを着用。偏光レンズやUVカット機能があるものがおすすめ。
【トップス】ベースレイヤー
汗冷えを防ぐため、吸汗速乾性や保温性に優れた素材を選びます。ポリエステルやウール素材がおすすめ。気温に応じて保温性も必要。
【トップス】アウター
防風・防水性能が高く、透湿性も備えたハードシェルジャケットを選びます。雪山では特に防寒性が重要で、ゴアテックス素材推奨。
【トップス】保温着
ダウンジャケットや化繊インサレーションジャケットは、休憩時や非常時用として携行します。軽量でコンパクトに収納できるものが便利。
【グローブ】ミドルグローブ
防寒用としてフリース素材などを使用。手袋でもレイヤリングを考える。
【パンツ】ベースレイヤー(タイツ)
保温性と速乾性に優れたものを着用。寒さが厳しい場合は厚手のタイツがおすすめ。
【靴下】登山ソックス
厚手で保温性の高いウールや化繊素材のソックスを着用。必要に応じて2枚重ねで履くとさらに暖かいが、グリップ力や履き心地にかかわるため慎重に。
注意点
冬山では低体温症や凍傷のリスクがあるため、防寒・防水対策は万全に。
汗冷えを防ぐため、こまめな脱ぎ着で体温調節を行いましょう。
雪山では紫外線が強いため、サングラスやゴーグルによる目の保護も重要です