日帰り登山や山小屋泊からステップアップして、次はいよいよテント泊登山にチャレンジしたいとお考えの方。
「テントとシュラフのほかに何を揃えればいい?」「費用はどれくらいかかる?」「荷物の重さは?」などお悩みではありませんか。
この記事では、テント泊登山初心者の方に向けて「必要な持ち物」と「あると便利なもの」を取り上げ、わかりやすく解説しています。
装備全体の重さや費用、上手なパッキングのコツ、テント泊デビューする女性登山者の持ち物など、ビギナーの気になるポイントも解説していますので、最後まで読めばテント泊登山の装備に関する悩みが解決するはずです。
また、記事冒頭には装備の一覧表を掲載しましたので、荷物の確認に役立ちます。これからテント泊登山をしようと考えている方や興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
テント泊登山装備一覧表
荷物のチェックにお役立てください。
必要な装備
【住】関連 | テント一式 |
ペグ | |
シュラフ | |
テントマット | |
ヘッドライト |
【食】関連 | 食料 |
行動食 | |
燃料 | |
バーナー | |
ライター | |
クッカー | |
カトラリー | |
ウォーターボトル(水分) | |
ウォーターバッグ |
【衣】関連 | レインウェア |
防寒着 | |
着替え | |
グローブ | |
帽子 |
【その他】 | ビニール袋・ジッパー付きビニール袋 |
衛生用品類 | |
タオル/手ぬぐい | |
トイレットペーパー | |
日焼け止め | |
ザックカバー | |
エマージェンシーシート | |
ファーストエイドキット | |
モバイルバッテリー |
あると便利なもの
【住】関連 | LEDランタン |
シュラフカバー | |
枕 | |
グランドシート | |
テント内シート | |
サンダル | |
細引き | |
リペアテープ | |
吸水クロス | |
耳栓 |
【行動用】 | トレッキングポール |
アタックザック | |
サコッシュ | |
登山用腕時計 |
【食】関連 | 登山用コップ |
【衣】関連 | 温泉セット |
忘れてはならないもの
【その他】 | 登山計画書 |
健康保険証 | |
地図・コンパス | |
スマートフォン | |
お金 |
テント泊登山は【衣・食・住】の装備が必要
テント泊登山は、マイホームを丸ごと背負って歩くようなものです。装備は衣・食・住にわたって必要な上、季節によりアイテムが変化します。
この記事では、次のような方を対象にテント泊登山の装備を解説します。
- 初めてテント泊登山をする
- 2000m級の山に登る
- 無雪期の3シーズン(春・夏・秋)に行う
- 山で調理をする
- 一般的な登山道を使う
日帰り登山の装備にプラスオン
テント泊登山の装備は、「いつもの日帰り登山の装備に、山で夜を過ごすのに必要なものを追加する」と考えるとわかりやすいです。
- 【日帰り登山の装備】
+ - 【衣】:防寒着、着替え
- 【食】:燃料、ストーブ(バーナー)、クッカー、食料など
- 【住】:テント本体、ペグなどテント周辺ギア、シュラフ(寝袋)、マット、ランタンなど
【衣】に関しては、新たに買い足すものはほとんどありません。レイヤリングに基づいた衣類を着用し、レインウェア、グローブ、帽子、防寒着などを準備します。
【食】に関しては、山ごはんの経験の有無によって大きく変わります。これまで山ごはんを作ったことがない方は、新たに道具を購入する必要があります。
調理に必要な道具は次の通りです。
- 燃料(ガス、アルコール、固形燃料など
- ストーブ(=バーナー。ガスやアルコールを燃料とする場合に必要)
- ライター
- クッカー(=コッヘル。調理器具)
- カトラリー(箸、先割れスプーンなど)
- 食器
- 食料
- 水&水を入れる容器
【食】は際限なく荷物が増える領域でもあるため、不要なギアを削ったり、食料をフリーズドライ製品にして軽量化するなど工夫が必要です。
【住】に関しては、ほとんどの方がテントやシュラフなどを新たに購入しなくてはなりません。これらは個々の値段が高いため、ある程度の予算を見積もっておく必要があります。
そして、これらすべてのものを収納できる大型のザック(バックパック)と、重さに耐えられるだけの登山靴が必要です。
テント泊装備を収納するザックの容量
テント泊に使うザックの容量は40L以上必要で、50~60Lが目安とされています。
実物を山岳用品専門店で確かめ、必ず試着してから購入するようにしましょう(試着を嫌がるお店はNGと思ってください)。ショルダーベルトの位置や角度、ヒップベルトのホールド感など、ザックを見ただけではわかりませんので、実際に10㎏以上のあんこを入れてフィット感を確認してみることをおすすめします。
装備の重さを支える登山靴
荷物が重くなるため、軽くて柔らかい靴では疲れてしまい、足元が安定しません。剛性があり、足首まで保護するハイカットタイプがおすすめです。必ず試着し、自分の足に合ったものを選びましょう。
初めてのテント泊登山に必要な持ち物
テント泊登山ビギナーに必要な装備を解説します。
テント
テントは、軽量コンパクトで対候性のある山岳用テントを選びます。山岳用テントの種類には、自立式と非自立式、シングルウォールとダブルウォールとがあり、初心者は「自立式×ダブルウォール」を選ぶのがおすすめです。
自立式 | ポールを本体に組み込めばテントの形が立ち上がるタイプ。設営が簡単。 |
非自立式 | ポールを本体に組み込み、本体に設けられたガイライン(細いロープ)をペグで地面に固定してテントが立ち上がるタイプ。設営にテクニックが必要だが軽量 |
シングルウォール | 生地1枚のテント。軽量で設営が簡単だが、結露しやすい。登山靴もテント内に入れる必要あり。 |
ダブルウォール | インナーテントとフライシートの2層構造。結露しても直接触れにくい。前室を登山靴を置いたり、お湯を沸かしたりするスペースとして活用できる。 |
重量は1㎏前後を目安にし、信頼できるメーカーのものを選んでください。
サイズは、2人用または1人用が人気です。重さはどちらもそれほど変わらないので、2人用なら1人でも2人でも使え、1人でなら広々使えて荷物も置けるので、おすすめです。
ただし最近は、仲間同士の登山であっても「1人1テント」が増え、テントを張るスペースが足りなくなる問題が起きています。ハイシーズン中は2人用テントを2人で使うようにしましょう。
ペグ
テントが風で飛ばされないよう地面に固定する道具です。テント購入時に付いてきますが、破損や紛失に備えて予備をいくつか持っていくといいでしょう。
おすすめペグケース『山旅 X-PAC製登山用ペグケース』
ペグは失くしやすいので、まとめて収納するのがおすすめです。山旅のペグケースはカトラリーケースや小物入れとしても利用できるので重宝します。X-PAC製で防水性があり、汚れても簡単に洗えます。
シュラフ(寝袋)
シュラフの素材はダウンと化繊がありますが、初心者は3シーズン用のダウンをおすすめします。羽毛量は春・秋にも使うなら400~500gを目安にするといいでしょう。形状は人型に包み込むマミー型が一般的です。
テントマット
シュラフの下に敷くマットです。地面からの冷気を防ぎ、睡眠時の快適性を高めます。また、就寝時以外はテント内でのクッションや座布団の代わりになります。
テントマットには、手動で空気を入れて使うエアマット、栓を開けると自動膨張するインフレータブルマット、発泡させたウレタンなどのクローズドセルマットの3種類あり、それぞれメリット、デメリットがあります。
タイプ | エアマット | クローズドセルマット | インフレータブルマット |
メリット | ・保温性が高い ・携行時はコンパクト | ・山行途中の休憩時に座布団代わりになる ・すぐに使える | ・手早く膨らませられる ・保温性が高い |
デメリット | ・デリケートで破けやすい ・膨らませるのに時間がかかる | ・収納性が低く、かさばる ・厚みや素材により保温性に差がある | ・デリケートで破けやすい ・撤収時に空気を抜く手間がかかる |
ヘッドライト
夜間に必須のアイテムです。テント内での作業時やトイレに行く時、明け方に出発する時などに使います。予備のバッテリーがあった方が安心です。
食料・行動食
山ごはんはテント泊登山の最大の楽しみといっても過言ではありません。しかし、あれもこれもと食材を詰め込むと、荷物は際限なく膨らみます。
慣れないうちは軽量で調理も楽なフリーズドライの食品がおすすめです。ごはんは、お湯を注ぐだけで食べられるアルファ米を利用すればメスティン(飯盒)を持参せずに済みます。
また、行動中のおやつにも非常食にもなる「行動食」も忘れずに持っていきましょう。
燃料・バーナー・ライター
テント泊初心者は、OutDoor用のガス缶であるOD缶直結型のバーナーがおすすめです。お湯を沸かす程度の使用であれば、出力は2000kcal/hもあれば十分です。
また火をつけるライターは、耐風性能のあるものを選びます。火が付きにくいことがあるため、予備に防水マッチを持っていると安心です。
クッカー
クッカーはアルミ製かチタン製がほとんどです。お湯を沸かす程度の利用なら、軽量なチタン製がおすすめです。
クッカーの中でもメスティンと呼ばれる炊飯に適したクッカーは、さまざまなレシピが楽しめるのが魅力です。出来上がった料理に箸やスプーンを入れて直に食べれば食器を持参する必要がなく、軽量化に役立ちます。
また、深型のクッカーは、中にガス缶やストーブを縦に積んで収納できるため、コンパクトに持ち運べます。
カトラリー
山ごはんに忘れてはならないのが箸やスプーンなどのカトラリーです。使いやすく軽量コンパクトなものがおすすめです。
水筒・ボトル・プラティパス
テント泊登山では給水用の水だけでなく調理用の水も必要なため、水場で補給したり事前に大量の水を持ち歩いたりしなくてはなりません。
給水用の水筒(プラスチック製ハード/ソフトボトル、ソフトボトルに吸引チューブのついたハイドレーション)のほかに、水を運ぶウォーターバッグが必要です。
おすすめは、軽量で未使用時にはコンパクトに折りたためるプラティパスのソフトボトル。水を運ぶ道具として非常に優れた機能を持っており、多くの登山者に愛用されています。
防寒着
夏山であっても夜は想像以上に冷えるため、防寒着の用意が必要です。おすすめは保温力が高く、軽量でコンパクトに収納できるダウンウエア。秋や春ならダウンジャケットとダウンパンツ、上下両方を用意した方がいいでしょう。
着替え
登山では荷物をできるだけ少なくするためにも、行動着は毎日着替えません。かといって汗をかいたものをそのまま着て寝ると汗冷えしてしまうため、テント場では寝る前にパジャマ用のウェアに着替え、昼間着ていたものはテント内に干して翌日着用します。
汗がどうしても気になる方は、直接肌に触れるアンダーウェアやベースレイヤーだけ着替えを用意しておいてもいいでしょう。
ビニール袋・ジッパー付きビニール袋
ゴミはすべて持ち帰るのが山のルールです。ビニール袋はゴミ袋として利用するほか濡れた衣類などをしまう際にも重宝するため、複数枚用意します。
また、トイレや食事のゴミなどニオイの気になるものは、ジッパー付きの袋に入れるといいでしょう。
衛生用品(歯磨き、スキンケアなど)
歯磨きは山の環境保全のため、すすぎの要らないタイプを用意します。そのほかボディーシートなど必要なスキンケアケアグッズを。
お風呂に入れなくてもサッパリ『山旅サッパリタオル』
『山旅サッパリタオル』は、お風呂のない環境に適した清拭タオル。水にぬらして拭くだけで古い角質や体の脂分が驚くほどスッキリ落ちます。綿100%なのでお肌に優しく、乾燥肌や女性の方も安心して使えます。
タオル・手ぬぐい
汗拭き、日焼け防止など様々な用途に使えます。
トイレットペーパー
山のトイレにはトイレットペーパーがないことが多いです。トイレでの使用のほか、調理用具の汚れをふき取るなどティッシュとしても使えます。
日焼け止め
山は紫外線が強いので日焼け止めは必須。汗で流れやすいので、行動中でも塗り直しができるよう、すぐに取り出せるサコッシュなどに入れておくのがおすすめです。
ザックカバー
雨が降ることも想定し、ザックカバーを忘れないようにしましょう。シートゥサミットのウルトラシルパックカバーは軽量で人気があります。
エマージェンシーシート
雨や体温の低下を防止する緊急用シートです。緊急時だけでなく、テントで寒いとき体に巻いたり、シュラフの上からかけたりして保温力を上げることができます。
ファーストエイドキット
ファーストエイドキットの中身は人により異なります。下記を参考に、自分なりのカスタマイズを。
モバイルバッテリー
スマートフォンなどの充電用に必要です。
初めてのテント泊登山にあると便利なもの
テント泊登山にもっていくと便利なものについて解説します。
LEDランタン
ヘッドライトと異なり、LEDランタンは空間全体を明るくするため、山ごはんの調理時や夜間のテント内で探し物をする時などに便利です。また、ヘッドライトの消耗も防いでくれます。
おすすめのLEDランタン『HEXAR UL3』
HEXAR UL3は最大300ルーメン、最小光束で120時間以上の点灯時間を誇る、高性能な充電式LEDランタン。63gと軽量コンパクトなのも魅力です。
ヘッドライトと組み合わせるランタンシェード『山旅 ダイニーマ製クッカーケース』
天井につるしたヘッドライトに『山旅ダイニーマ製クッカーケース』をかぶせれば柔らかなランタンシェードになり、別途ランタンを必要としません。もともとは軽量クッカー用スタッフバッグのため、1つ持っていればクッカーや小物類を収納したり、汗をかいた下着を入れたりなどさまざまな使い方ができます。
シュラフカバー
シュラフを外側からくるんで覆うカバーです。シュラフを結露の濡れから守り、保温性を高めます。
枕
睡眠の質を高めるアイテムです。膨らませて使うエア式タイプなら軽量で持ち運びもラク。枕がなくても衣類などを詰め込んだスタッフバッグ等で代用可能です。
枕になるスタッフバッグ『山旅 ダイニーマ製リバーシブルピロー』
『山旅ダイニーマ製リバーシブルピロー』は、枕兼用の便利なスタッフバッグ。この袋にパジャマ用ウェアを収納しておき、テント場で着替えたら袋を裏返し、昼間着ていた行動着やレインウェアなどを詰め込むと枕に早変わりします。少しでも荷物を減らしたいテント泊登山におすすめの一品です。
グランドシート
テントの下に敷く防水シートで、地面からの冷気と湿気を防ぎます。また、木の根や石からテントの底面を守るので、テントを長持ちさせるのにも役立ちます。メーカーのテントの規格に合う純正品がありますが、安価なブルーシートやタイベックシートなどで代用可能です。冷えが気になる秋や春には、持参をおすすめします。
テント内シート
テント内に敷き詰めるシートです。地面からの冷気と湿気を防いで保温性を高め、地面のごつごつした感じが軽減されるので居住性もアップ。ホームセンターなどで売られている銀マットで代用可能ですが、テント内全体に敷き詰められるサイズで、防水性のあるタイプがいいでしょう。
吸水クロス
テントは雨天でなくても結露や夜露で濡れるため、吸収するクロスがあると便利です。キッチン用の吸収クロスなどで十分です。
耳栓
いびきや話し声などが気になって眠れない時におすすめです。
サンダル
山ごはんやトイレに行く時など、テント場での移動にいちいち登山靴を履くのは億劫。サンダルならラクに動け、疲れた足を解放させることができます。
トレッキングポール
テント泊登山では荷物が重いため、体に負担がかかります。トレッキングポールは歩行をサポートし、負担を軽くします。
アタックザック
テント場にメインの大型ザックをデポして(置いて)山頂を目指したり、周辺を歩いたりする時に使う軽量コンパクトなザック。山行計画に合わせて用意します。
手提げにもアタックザックにもなる『山旅 小さいサイズトートバッグ』
携行時はコンパクトな『山旅小さいサイズトートバッグ』 は、登山時のアタックザックとして使用するほか、下山後のお土産品を入れるお買い物袋としても利用できる便利な一品です。
登山用腕時計
登山時計には高度計、コンパス、気圧計など様々な機能が備わっているため、先のことも考え、1つ持っておくといいでしょう。
登山用コップ
登山用コップは、コーヒーやお酒を飲むだけでなく、クッカーやお皿、計量カップとしても使えるので、1つあると重宝します。
細引き
細引きとは、2~7㎜程度の太さのナイロン製の紐のこと。テント内の物干し紐として使ったり、テント撤収時にペグがすぐ引き抜けるようペグの上部の穴に通しておいたりなど、多目的に利用できます。
おすすめの細引き『山旅ダイニーマ製コード10m』
『山旅ダイニーマ製コード10m』は、テント内の衣類物干し用として使うだけでなく、ガイライン(テントロープ)としてテントの補強に使ったり、破れたアイテムの補修や靴紐として使ったりなどさまざまな利用ができます。
リペアテープ
テントやシュラフ、ザックなどが破けたり穴が開いたりしたとき、サッと補修できる便利なテープです。
温泉セット(着替え、タオル)
下山後の温泉に必要な着替えとタオル。山では着替えをしない、もしくは最小限にし、温泉に入ってからさっぱりと着替えます。
初めてのテント泊登山!装備の重量は?
テント泊登山の装備の重量は、大体10~15㎏です。
バックパックの適切な重量は、体重の10~15%程度といわれていますから、10~15㎏の荷物が適切なのは体重が100㎏の人になってしまい、大多数が該当しません。
重い荷物を背負って長時間歩けば体に負荷がかかって疲労がたまり、安全性が低下する可能性があります。
装備の軽量化は、登山中の負担を軽減するだけでなく、安全性を確保するためにも大切なポイントといえます。
初めてのテント泊登山!装備の軽量化
テント泊登山の装備を軽くするには、2つの方法があります。
- 必要ないものを省く
- 軽量なモデルに変える
「必要ないものを省く」といっても、テント泊初心者の方は必要なものと必要でないものの区別がなかなかつきません。そこで、同じ機能のものが複数リストアップされている場合に着目。どれか1つにすることで荷物を絞り込むことができます。
例えば、防寒着としてフリースとダウンがリストアップされているとします。どちらも防寒性がありますが、フリースはかさばり持ち運びしづらいことから、フリースを削ってダウンを選択すれば荷物の軽量化が図れます。
ザック、テント、シュラフ、マットといったテント泊のマストアイテムは、軽量モデルが豊富に展開されています。軽量モデルを選択すれば装備全体の軽量化につながります。
【衣・食・住】それぞれの軽量化のコツ
衣食住の各アイテムをどう軽量化するかコツを紹介します。
【住】軽量化されたモデルを使う
テントやシュラフ、マットといった【住】のメインアイテムは、軽量モデルがありますので、装備の重さが気になるようなら軽量モデルを選択します。
ただし、軽量モデルは初心者にとってデメリットと感じられる点があることにご注意ください。
例えば、テントの軽量モデルはシングルウォールが多く、前室がありません。また、ダブルウォールに比べて結露しやすいです。
シュラフの軽量モデルは、保温性や快適性がやや下がります。
こうした点は、テント泊の経験を重ねていくにつれ解決方法がわかってくるため、長く使うにはおすすめですが、経験のないうちは不安に思うかもしれません。
お店の人と相談しながら選ぶといいでしょう。
【衣】数を減らす
ウェアの軽量化は、「量を削る」、「数を減らす」ことがポイントです。
例えば雨を防ぐレインウェアと、風を防ぐウィンドシェルがリストアップされているとします。ウィンドシェルはレインウェアで代用できますが、レインウェアは蒸れたり着心地があまり良くなかったりするので雨が降っていない時には着たくない、という方も多いのではないでしょうか。
しかし、レインウェアに汗蒸れを放出するベンチレーションがあったり、適度なストレッチ性を備えて快適性が高かったりすれば、雨天時でなくても着続けていられます。
こうした場合、レインウェアを選択してウィンドシェルを省けば、衣類の数を減らすことができます。
また、テント泊では、できるだけ着替えを少なくすることもポイントです。そのためには汗をかかない、または汗をかいても肌がさらっとしてることが大事です。
アンダーウェアに撥水性があれば肌がドライに保たれるため着替えの必要性を感じなくなり、下山後の温泉帰りの着替えだけでOKになります。
【食】道具の収納性×食材の軽量化
【食】の軽量化は、道具と食材の2方面で考えます。
道具は、例えばクッカーの素材をアルミ製ではなくチタン製にしたり、燃料を固形燃料にしたりすることで重量が減らせます。
また、調理した料理をクッカーから直に食べればお皿を持参する必要がなく、荷物の数が減らせます。
さらに、クッカーの中にガス缶やバーナーを収納できればコンパクトにまとまり、持ち運びしやすくなるので、スタッキングできるクッカーなどを選択するといいでしょう。
【食】の道具は固い上に形状がまちまちなため、軽量でなおかつコンパクトにまとまる収納性の高さがポイントです。
食材は、事前にジップロックに移し替えたりすることで持ち運びしやすく、かさばる包装が削られて軽くなります。またジップロックのまま調理ができるので後片付けもラクです。
山ごはんに慣れてない方は、お湯を沸かして注ぐだけで食べられるフリーズドライやアルファ米だけの食事にするとかなり軽量化できます。
しかし、食事はテント泊登山でいちばん大きな楽しみです。
夕食だけ山小屋の食事をいただくとか、食事は簡素でも朝のコーヒーだけは贅沢を楽しむとか、どこかにお楽しみの要素を入れると心が癒され、モチベーションアップにつながります。
初めてのテント泊登山!装備にかかる費用
テント泊の装備を揃えたい方にとって、最も頭を悩ますのが費用の高さではないでしょうか。
テント泊用に買い足すものの中で、特に値段が高いのがテントとシュラフです。モンベルを例にとって、テント、シュラフ、テントマットの値段を見てみます。
まず、山岳用テントです。
ステラリッジ テント1 本体 | 35,200円 |
ステラリッジ テント1 レインフライ | 16,500円 |
合計 | 51,700円 |
次に、シュラフです。
シームレス ダウンハガー800 #3 | 34,100円 |
そして、テントマット(インフレータブルタイプ)です。
ULコンフォートシステム アルパインパッド25 | 13,200円 |
テント+シュラフ+マットの合計を計算します。
テント | 51,700円 |
シュラフ | 34,100円 |
テントマット | 13,200円 |
合計 | 99,000円 |
グランドシートやシュラフカバー、シュラフシーツ、枕などを入れれば10万円を超えます。さらに、LEDランタン、サンダルなど、あると便利なものを買い足せば、どんどん費用が膨らみます。
どこまで買い足すかは、現在持っている装備によって変わりますが、テント泊に必要な装備の費用は最低でも10万円は見積もっておきましょう。
ずっと使うと思えば高くない?
テントは、メンテナンスをきちんとすれば長く使えるので、評判の良い商品を選ぶのがおすすめです。
一方、シュラフとマットは、費用を削ろうと思えば大きく削ることができます。
保温性と快適性が高い商品は値段が高くなる傾向があるので、費用を削りたいなら快適性に目をつぶり、保温性はウェアを着込んでしのぐといった対応が求められます。
どういったテント泊にしたいか、好みの分かれるところです。
装備のレンタル、ツアーや講習会の検討も
最初からすべての装備を買いそろえず、まずはレンタルで試してしてみる、という選択肢もあります。専門のスタッフがレンタル品のクリーニングやメンテナンスを行っているため、オークションなどで中古品を買い求めるより安心感があります。
また、初心者向けのツアーや講習会でテント泊デビューを体験してみるのもおすすめです。プロの山岳ガイドがツアーを率いているため、特にソロでテント泊デビューを考えている方にとっては、テントの設営に不安があったりする時などに心強いといえます。
初めてのテント泊登山!装備のパッキングのコツ
テント泊登山では、荷物のパッキング次第で重さの体感が変わります。荷物が軽く感じられるような、パッキングのコツを紹介します。
パッキングの基本
荷物を「使用頻度」と「重さ」の、2つの観点から分類します。
使用頻度の高いもの、行動中によく使うものは、すぐに取り出せるようザックの上部、雨蓋に入れ、使用頻度の低いもの、行動中は使わずテントでしか使わないものは、ザックの下部、底面に入れます。
また、重いものは体から離れると重さに引っ張られて体のバランスがとりにくくなるため背中側に入れ、軽いものは背中から遠い位置に入れます。
ザックの上部 【使用頻度が高いもの】 | ザックの背面側 【重いもの】 | ザックの背面から離れた位置【軽いもの】 | ザックの底面 【使用頻度が低いもの】 |
・タオル ・行動食 ・ヘッドライト ・日焼け止め など | ・予備の水 ・燃料 ・クッカー ・食料 など | ・防寒着 ・予備の行動食 ・ティッシュ ・ビニール など | ・シュラフ ・テント ・ランタン ・着替え など |
テント内でしか使わない軽くてかさばる着替えやシュラフなどはザックの下部に、行動中に使う可能性が低いクッカーや燃料、カトラリーなどはザックの中央部に、重い予備の水はザック背面の上部に入れるといったように、使用頻度が低く、軽いものを下に、使用頻度が高く、重量の重いものを上に入れるのが基本です。
テント泊装備の基本のパッキングは下図のようになります。
パッキングのコツ
装備のパッキングのコツを紹介します。
1.カテゴリー別に小分けする
荷物を全部床に並べて不足や重複がないか確認し、カテゴリー別に分けてみましょう。
例えば「テントで使うもの」、「山ごはんで使うもの」、「行動中に使うもの」といったように使うシーンで分け、そこからさらに細分化していきます。
いつ、どういった場面で使うのかを想像しながら分けていくことで用意した荷物を見直し、不要なら削ることができます。
2.スタッフバッグに収納する
小分けにしたアイテムを、大中小さまざまな大きさのスタッフバッグに収納してザックに入れます。こうすることでこまごまとしたアイテムがザックの中で迷子にならず、必要なものを素早く見つけて取り出すことができます。
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3.濡れて困るものはドライバッグに収納する
雨天時は、登山道具を出し入れする際や、ザックカバーが届かない背面側からザックの中が濡れてしまうことがあります。濡らしたくないダウンジャケットやダウンシュラフ、モバイルバッテリーなどは、あらかじめドライバッグに収納しておいた方が安心です。
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4.小分けせずにパックライナーで濡れから守る方法も
雨が強いとザックカバーをかけていても、カバーが届かないショルダーハーネスやヒップハーネスから水が伝わってザックの中のダウンシュラフなどが濡れてしまうことがあります。
そんな事態を防いでくれるのが、防水性のある大きなパックライナー(インナーバッグ)と呼ばれる袋です。
パックライナーをザックの内側に入れて、ダウンウェア、シュラフ、マット、着替えなど濡れては困るものを一切合切、小分けせずに押し込んでいくだけ。
パッキングにかかる時間も大幅に短縮できる裏ワザ的手法です。
5.使用頻度が高いものはサコッシュやウエストポーチに
行動中に使用する頻度の高いコンパス、紙地図、行動食、ペンやノートといった小物類は、ウエストポーチやサコッシュに入れることで、ザックをわざわざ下ろさずに素早く取り出せます。
使い勝手抜群でおすすめのサコッシュはこちら↓
6.ショルダーハーネスの前面に水や地図を取り付ける
すぐに取り出したい紙地図や行動食、リップクリームや水筒などは、ザックの中に収納するのではなく、ショルダーハーネスの前面に取り付けると、いちいちザックを下ろさなくても立ったままで取り出すことができて便利です。
ショルダーハーネスの前面にペットボトルホルダーを取り付け、水筒やペットボトルを入れれば必要な時にすぐ水分補給ができます。
反対側のショルダーハーネスの前面にスマホポーチを取り付け、スマホや財布、貴重品、リップクリーム、サングラスなどこまごまとしたものを入れておくと、必要な時にザックを下ろさずにすぐに取り出せます。
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7.隙間なくパッキングして歩行を安定させる
小分けしたスタッフバッグをザックに入れる時、隙間がないように詰めると歩行が安定します。
しかし、スタッフバッグをたくさん使うと、どうしても隙間が生じやすいため、ダウン類はパックライナーに詰め込んでザックの底面に押し込むと隙間が生じにくくなります。
こまごまとしたものはスタッフバッグに収納し、ダウン類を詰め込むパックライナーと併用するといいでしょう。
8.コンプレッションベルトでザック内の荷物の揺れを解消
ザック内に隙間が多いと、ザックの中の荷物が揺れて歩行が安定しません。
できるだけ隙間を埋めるようにパッキングした後、ザックの左右についているコンプレッションベルトを引くと、ザックの中の荷物がバランスよく収まり、揺れが生じません。
さらにザックの重さを背中側に寄せることができるので、歩行が安定します。
初めてのテント泊登山!女性登山者の装備は?
女性登山者にとって、テント泊装備で気になるのが「重さ」です。少しでも負担を減らそうと軽量化を徹底すればいいかというと、一概にそうとも言えません。
軽量化VS保温性
シュラフやマットの軽量化を徹底した結果、「寒くて寝られなかった」という声が上がっています。
個人差はありますが、男性に比べて女性は「冷え」を感じやすい方が多く、軽量化で保温性が多少軽減されてしまうことがネックになりがちです。
おすすめ冷え対策
1.【アルミシートを敷く】
ホームセンターや100均で売られているアルミのシート(銀シート)をテント内マットの代わりにテントの中に敷いたり、シュラフマットの下に敷くと冷えが和らぎます。
2.【ナルゲンボトルで湯たんぽ】
夕食時に多めにお湯を沸かし、ナルゲンボトルなどに入れておけば寝る時の湯たんぽになります。ボトルの耐熱温度は事前に確認しておいてください。
着替えを減らして軽量化
女性はどうしても着替えを多く持っていきがち。必要以上の着替えをもっていかず、汗をかいたとき用の最低限にとどめます。
アンダーウェアをメッシュタイプにすると汗が体に付着せず、着替えなくても汗冷えしません。
テント内のリラックスウェアは、保温性のあるメリノウールの長袖Tシャツとタイツがおすすめです。
スキンケア、デオドラント重視
暗いうちに出発することも多いテント泊登山では、スマホの自撮り機能を使ってメイクする方もいますが、完ぺきなフルメイクはなかなか難しいもの。
むしろ、メイクよりスキンケアの方が大切です。山は紫外線が強く、乾燥しているため、行動中は日焼け止めやリップクリームがすぐに取り出せるようにし、テントでは化粧水や乳液で肌を保湿します。
スキンケアグッズは使い捨てできるシートタイプがおすすめです。オールインワンタイプなら洗顔から保湿までシート1枚でできて便利です。
登山女子の中にはシートマスクで集中保湿する方も。時間がたっぷりあるテント泊では、あえて普段できないスキンケアでリラックスするのもおすすめの過ごし方です。
登山中は入浴できないため、体はボディシートでさっぱりと、においはデオドラント剤で対応します。
シート類はパッケージ丸ごとではなく、使う分をジップロックなどに移して持っていけば荷物が減ります。
生理日でなくても生理用品を
生理予定日でなくても、念のため生理用品は用意していきましょう。ナプキンよりかさばらないタンポンがいいのですが、使い慣れていないと、ただでさえ不自由な山トイレで交換するのが難しくなります。
おすすめはスポーツ用ナプキン。激しい行動でもずれにくく、漏れの心配がありません。
使用済みのものは、においが漏れにくいジッパー付きビニール袋などに入れて持ち帰ります。
また、生理の始まりが予測しづらく、登山日と重なるかもしれないと不安な方は、吸水型サニタリーショーツを履いて備えるという手も。生理用品不要なので、トイレのない山の中で始まっても安心です。
ポーチで小物類の収納を
登山に必要な持ち物には、ファーストエイドキットや山ごはんギアなど小物類が多くあります。こうした小物類に加え、女性登山者の持ち物にはコスメグッズやスキンケア、生理用品といった更なる小物類が加わります。
こまごまとした小物類はカテゴリー別にポーチに収納するのがおすすめです。例えばメイク用品、スキンケア用品、歯磨きやコンタクトをそれぞれ別のポーチに収納し、「テント内で使うケア用品」としてそれらのポーチを1つのスタッフバッグにまとめて入れておけば、取り出したいものが見つけやすくなります。
おすすめのポーチ『山旅 ダイニーマ製キューブポーチ(Sサイズ)』
『山旅 ダイニーマ製キューブポーチ(Sサイズ)』は、濡らしたくないものを入れるのに最適な耐久性のある超軽量小型ポーチです。口が大きいので中が見やすく、欲しいものがすぐに取り出せます。
まとめ:経験を積んで装備のカスタマイズを
この記事で紹介した装備のほかに必要なアイテムがあるかもしれませんし、紹介した装備の中に不要なアイテムがあるかもしれません。完璧な装備を整えたとしても、実際の山行で思わぬアイテムがなくて困ったり、逆に使わないものばかりだったりと、はじめのうちは過不足があるものです。
しかし、その経験が次に生かされ、だんだんとあなただけの「マイスタイル」が完成されていきますので、焦らず、一歩一歩を楽しんでいきましょう。